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18、迫られて……
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厨房はバーカウンタと繋がっていて、腰を低くしてグラスにかもフラーズするように目の高さのところまで覗かせて、ソファーに座る二人の様子が良く分かった。
営業時間はまだなので、中には僕と真一郎さんとすずさん3人だけだった。
すずさんと、真一郎さんの会話が聞こえる。
真一郎さんは僕に気付くと、ウインクをした。
すずさんは、ぐぐっと両手を組んで背伸びをして下ろしてから、
「あ~あ~なんかお腹すいちゃった。どっかに食べにいかない?真一郎さん」
「ここで食べればいいよ。」
「え~?でも言っちゃナンだけど、ここのご飯まずいし…」
「大丈夫大丈夫、とっても腕の良い調理人やとったんだ」
「へ~じゃあ、食べてみたい。でも食欲あんまりないから軽いものがいいな~」
「カイコちゃん、サンドイッチでも作ってくれ」
「あ、はい!」
カイコちゃんというのは昨日、付けられた僕のオカマバーでの源氏名だ。
「カイコちゃん?」
「うん。まだ未成年だから、表には出さないんだけどね。とっても可愛い子なんだよ。」
「ふ~ん…、なんか…聞き覚えのある声だったわ…?」
僕はギクッとした。声を作るのを忘れてしまった。
ドキドキしながら作業に取り掛かる。
材料は揃っていたので、直ぐに出きるだろう。
その間に二人の話が聞こえてくる。
「藍ちゃんと蓮君もうすぐ誕生日よね?」
「ああ。クリスマスの日だよ。誕生日会するから、ぜひ来てくれよ。同棲している男の子…名前なんていったけ?」
わざと、真一郎さんは上手く僕の話題に持っていった。
「同棲じゃなくって同居!」
すかさず、すずさんは訂正をいれた。
「……それにカイト…帰ってくるかどうか……分からないし……」
すずさんの声は低く小さかった。
一昨日のことを思い出したのだろうか?
「どうかしたの?」
真一郎さんは悩みでも愚痴でも何でも聞いてくれそうな寛大な優しさを醸し出す声で理由を聞く。
この優しい感じは生まれ持ってのモノだろうと僕は思う。
だから、僕は真一郎さんを信頼してすべてを話してしまった。
すずさんも心に溜まったことを聞いて欲しくて理由を言ってしまうかもしれない。
すずさんは、なんと言おうか迷ってるのか、それとも言わないつもりなのか、黙ったままだった。
「もしかして、襲われたとか?」
真一郎さんは核心的なところをついた。
「……」
「顔赤いってことは、そうなんだね」
しばらく沈黙があったけど、すずさんの様子を僕に伝えるため、真一郎さんが解説する。
「でもっ!何もされてないわ。あの子のこと引っ叩いて止めさせたから…」
何もされてないと言っておいて、止めさせたと言うのは、かなり動揺してるんだろうと思った。
「なんか、このお店に関係あるみたい。
私のこと尾行して、この店にいたのが気にくわなかったんじゃないの?」
確かにそうだ……
あの時はすずさんが悪いって思ってた。
ヒカルさんが恋人だと思ってたから……
今はそんな関係じゃないって分かって、僕が一方的に悪いんだって反省している。
「私、カイトのこと、ないがしろにした覚えないんだけどなぁ…まあ…奴隷みたいに扱使っていたけど」
奴隷と未だ言う。
やっぱり奴隷程度なのだろうか?
僕は……なんだか泣けてきた……
「奴隷?それはひどい例えだな、ヒモじゃないの?」
「ヒモは恋人同士でしょう?私達まだそんな関係じゃなかったもん」
「まだ?…すずちゃんがその気になればヒモにできたんじゃないの?」
「だって…恥ずかしいじゃない……相手の気持ちも分からないのに……?
そ、それに、犯罪者になりたくないしっ」
「ああ、それは確かにね。でも数年たてばさ、そんなの関係なくなるよ?」
犯罪がどうのという現実な問題っていったのは、前の言葉の本音を知られたくなくてわざと否定する為に言ったように感じた。
『相手の気持ちも分からないのに……』
とすずさんは言った。
それって、すずさんも僕のこと好きって事なんだろうか……
そこのところをもっとよく知りたいと聞きたいと思ったけれど……
「カイコちゃんっサンドイッチまだ?出来たら持ってきて」
と真一郎さんが僕を呼ぶ。
「あ、はい、ただいま持っていきます」
サンドイッチはもう出来上がっていた。
けれど、サンドイッチをもって行くのを躊躇う。
いくら女装してるからって、バレたりしないだろうか?
僕は出来上がったサンドイッチを持ちながら落ち尽きなく不安でウロウロしていた。
そんな僕を真一郎さんはチラっとみて、グラスに入ったお酒をグビッと飲みカクッと頭を俯かせたと思うと、そっとすずさんの頬を両手で触れた。
そして、男性独特の艶っぽい雰囲気ですずさんに微笑みかけた。
そして、更に顔を近づく。
「すずちゃんて…恥ずかしがり屋さんだね。そう言うところ妻に似てる……」
すずさんは、体を引いて戸惑っている。
「そ、そうかな?わたしも、ねーちゃんに似てきてるって思う時もあるけど……」
ジッと見つめたまま真一郎さんは何も言わなくなった。
すずさんも見つめられてそのまま固まっている。
初恋の人でまだ、すずさんは真一郎さんのことが好きなんだろうか?
ほのかに顔が赤い。
真一郎さんはジッと憂い気にすずさんを見つめて、だんだん顔を近づけている。
「真一郎さん酔ってる……の?」
「よってないよ?里利子…」
真一郎さんはお酒一杯で酔っていた。
すずさんはそのまま動かない。
いや、体を引いている分ソファーに寄り掛かっているが、倒れて、そのままじゃキス以上な事をしそうな雰囲気だった。
「い…いやだ…ちょっと、真一郎さんっ!」
そのままソファにすずさんと倒れ込もうとする……
営業時間はまだなので、中には僕と真一郎さんとすずさん3人だけだった。
すずさんと、真一郎さんの会話が聞こえる。
真一郎さんは僕に気付くと、ウインクをした。
すずさんは、ぐぐっと両手を組んで背伸びをして下ろしてから、
「あ~あ~なんかお腹すいちゃった。どっかに食べにいかない?真一郎さん」
「ここで食べればいいよ。」
「え~?でも言っちゃナンだけど、ここのご飯まずいし…」
「大丈夫大丈夫、とっても腕の良い調理人やとったんだ」
「へ~じゃあ、食べてみたい。でも食欲あんまりないから軽いものがいいな~」
「カイコちゃん、サンドイッチでも作ってくれ」
「あ、はい!」
カイコちゃんというのは昨日、付けられた僕のオカマバーでの源氏名だ。
「カイコちゃん?」
「うん。まだ未成年だから、表には出さないんだけどね。とっても可愛い子なんだよ。」
「ふ~ん…、なんか…聞き覚えのある声だったわ…?」
僕はギクッとした。声を作るのを忘れてしまった。
ドキドキしながら作業に取り掛かる。
材料は揃っていたので、直ぐに出きるだろう。
その間に二人の話が聞こえてくる。
「藍ちゃんと蓮君もうすぐ誕生日よね?」
「ああ。クリスマスの日だよ。誕生日会するから、ぜひ来てくれよ。同棲している男の子…名前なんていったけ?」
わざと、真一郎さんは上手く僕の話題に持っていった。
「同棲じゃなくって同居!」
すかさず、すずさんは訂正をいれた。
「……それにカイト…帰ってくるかどうか……分からないし……」
すずさんの声は低く小さかった。
一昨日のことを思い出したのだろうか?
「どうかしたの?」
真一郎さんは悩みでも愚痴でも何でも聞いてくれそうな寛大な優しさを醸し出す声で理由を聞く。
この優しい感じは生まれ持ってのモノだろうと僕は思う。
だから、僕は真一郎さんを信頼してすべてを話してしまった。
すずさんも心に溜まったことを聞いて欲しくて理由を言ってしまうかもしれない。
すずさんは、なんと言おうか迷ってるのか、それとも言わないつもりなのか、黙ったままだった。
「もしかして、襲われたとか?」
真一郎さんは核心的なところをついた。
「……」
「顔赤いってことは、そうなんだね」
しばらく沈黙があったけど、すずさんの様子を僕に伝えるため、真一郎さんが解説する。
「でもっ!何もされてないわ。あの子のこと引っ叩いて止めさせたから…」
何もされてないと言っておいて、止めさせたと言うのは、かなり動揺してるんだろうと思った。
「なんか、このお店に関係あるみたい。
私のこと尾行して、この店にいたのが気にくわなかったんじゃないの?」
確かにそうだ……
あの時はすずさんが悪いって思ってた。
ヒカルさんが恋人だと思ってたから……
今はそんな関係じゃないって分かって、僕が一方的に悪いんだって反省している。
「私、カイトのこと、ないがしろにした覚えないんだけどなぁ…まあ…奴隷みたいに扱使っていたけど」
奴隷と未だ言う。
やっぱり奴隷程度なのだろうか?
僕は……なんだか泣けてきた……
「奴隷?それはひどい例えだな、ヒモじゃないの?」
「ヒモは恋人同士でしょう?私達まだそんな関係じゃなかったもん」
「まだ?…すずちゃんがその気になればヒモにできたんじゃないの?」
「だって…恥ずかしいじゃない……相手の気持ちも分からないのに……?
そ、それに、犯罪者になりたくないしっ」
「ああ、それは確かにね。でも数年たてばさ、そんなの関係なくなるよ?」
犯罪がどうのという現実な問題っていったのは、前の言葉の本音を知られたくなくてわざと否定する為に言ったように感じた。
『相手の気持ちも分からないのに……』
とすずさんは言った。
それって、すずさんも僕のこと好きって事なんだろうか……
そこのところをもっとよく知りたいと聞きたいと思ったけれど……
「カイコちゃんっサンドイッチまだ?出来たら持ってきて」
と真一郎さんが僕を呼ぶ。
「あ、はい、ただいま持っていきます」
サンドイッチはもう出来上がっていた。
けれど、サンドイッチをもって行くのを躊躇う。
いくら女装してるからって、バレたりしないだろうか?
僕は出来上がったサンドイッチを持ちながら落ち尽きなく不安でウロウロしていた。
そんな僕を真一郎さんはチラっとみて、グラスに入ったお酒をグビッと飲みカクッと頭を俯かせたと思うと、そっとすずさんの頬を両手で触れた。
そして、男性独特の艶っぽい雰囲気ですずさんに微笑みかけた。
そして、更に顔を近づく。
「すずちゃんて…恥ずかしがり屋さんだね。そう言うところ妻に似てる……」
すずさんは、体を引いて戸惑っている。
「そ、そうかな?わたしも、ねーちゃんに似てきてるって思う時もあるけど……」
ジッと見つめたまま真一郎さんは何も言わなくなった。
すずさんも見つめられてそのまま固まっている。
初恋の人でまだ、すずさんは真一郎さんのことが好きなんだろうか?
ほのかに顔が赤い。
真一郎さんはジッと憂い気にすずさんを見つめて、だんだん顔を近づけている。
「真一郎さん酔ってる……の?」
「よってないよ?里利子…」
真一郎さんはお酒一杯で酔っていた。
すずさんはそのまま動かない。
いや、体を引いている分ソファーに寄り掛かっているが、倒れて、そのままじゃキス以上な事をしそうな雰囲気だった。
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