祈り姫

花咲マイコ

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運命と宿命の縁

9★ハルの神

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「おーい李流!」
 法子が大きな神棚のような立派な門の前で手を振っている。
「法子様!」
 李流は法子のもとに急いで駆け寄る。
「まさか、本当に法子様と夢が繋がるなんて…」
「李流を案内せよと神に言われたのでな。」
 瑠香は神の化身なのだと納得する。

「李流は宿命と運命の違いを知っているか?」
「例えば祝皇に生まれたらその存在を生まれた時から……決まっていること、変えられない人生を宿命。
 運命は人生の生き方で変わるもの……
でしょうか?」
 それは祈り姫である法子様もそうだけれど、いずれは降嫁して……

「李流の花嫁になるのじゃ!」

 どうして心の中でおもった邪なことを読み取られたと思って、李流の顔は真っ赤になる。
 法子は嬉しそうに頬を赤くしててれている。
 そして上目遣いで、恥ずかしげに李流を見て、

「ここは神の世界じゃ。心の声など筒抜けじゃ。」

 変な事は考えてはいけないということか。

「今は、ハルのことを真剣に考えておればよい。」
「そうですね……」

 ここに来たのはハル様を現世に呼び戻すためだ。
 母の幸せのため、陰陽寮のみんなのため、晴房は重要なのだ。

 法子は李流の手を握って、大きな扉の前に案内する。

「この先は神々の世界じゃ。
 李流に会いたがっているのはハルの神じゃ。」

「ハルの神?」
「天照君をお守りする神じゃ。そそをしてはしてはならぬぞ 」

 大きな扉が開くと七色の淡い光が広がる。

 気がつけば、目の前には巨大なハルがいた。
 ハル様と言っても本当に神々しくて恐れ多くて重圧を感じる。

 李流は雲の崖のような所で問いかける。

「ハル様……ですか?」

『ハルの魂の源泉の神だ。我の化身は万といる。』

 化身とは神の御使い、若しくは神が自ら分離して人間界に生まれたモノのことだ。
 仏教の世界での神はよく化身が現れる……

 神の化身と神の子孫では立場は違う。

 我が国の主、祝皇は神の子孫。
 国を統治し神の血を継続して万世続くのと、突然現れた神の化身では、祝皇が格上で、日和国、生まれたからには祝皇を慕うのは当然で皇室の祖神の天照様守る神ならなおさらだ。

「晴房様を返していただけないでしょうか?」
 何も考えず単刀直入にそう問う。

『晴房は我自身、返すもなにも、われの元に還るのが宿命だ……』

 どこか悲しげな声。
 それは晴房そのものの、答えのような気がした。


『晴房は人としての目線でものを見ない、見てはいけない、徹底的に神の子孫である祝皇に使える事が宿命。
 その掟を破ってまで李流の母、雪を愛してしまった。
 祝皇以外の子供を助けた…
 神に定められた宿命を違えたのだから、われの元に戻る定めは変えられぬ』


「人を愛する事は罪なのでしょうか……?」

 李流は怒りに感じる、母が宿命を狂わしたという言い方に。

『神に罪を問うのか?』

 ビリビリと体に重圧と電気が走る。
 くるしい。不敬なことを言ったからか?

 それとも、本当のことをいったから……

 そう考えついたことが神にも伝わって更に重圧を与えられる。

『それが、李流が思う晴房が神上がる理由だと思うのか……』

『もし、お前の母が、敬愛する陛下の命を狙っていたら見逃すのか?』

「見逃しません。
むしろ身を呈してまで止めるか、互いに不敬を犯した罪を償い償いさせます」
それは命を持ってでも……

 はっと気づく。

 晴房もその考えを持っていて、更に厳しく己を律し苦しんでいた……

『ハルは祝皇を裏切った様なものだ。
 そんな化身は皇の守りの役には立たぬ。』

 それは晴房という存在が神力を使い、陛下を守れたと言うな言い方だ。

 それは違う…ハル様一人で陛下を守ってきた訳では無い……

 ハッと李流は悟る。

 頭に浮かんだ言葉を、ハルの神には伝わっただろうが、改めて李流はハルの神を真摯な強い意思を瞳に宿してハルの神に向き合う。


「ハル様は『人』として生まれたこと自体が宿命だ!
『唯一無二の祝皇陛下』とは違う!
 長らくつづく日和の『皇』ではない!

『皇』であるかけがえない存在は我ら皇の『民』がお守りするものだ!
 その民の子どもを守った事、母を愛したことも罪じゃない!
 罪だと思うのは人としての己の自責と感じるからじゃないのですか!?」

 李流は心の底から叫び伝える。

 そして、怒りに似た熱の後に残ったのは李流の願い……

「母のためにも、これから生まれる子供ためにも、ハル様には帰ってきて欲しいのです……

 オレにしても中途半端じゃないですか、弟子にするなら、ちゃんと修行させてください………」


 突然消えないで、責任をもって愛してあげて欲しい……
 オレの父のように無責任に母を捨てる真似はしないで……

 いつのまにか、李流は涙をこぼしていた。

 ビリビリと感じていた怒りは消えていた。
 むしろ優しい風に涙を拭われる。

 何も考えず呆然と神を見る。
 神の心は分からない。

 けれど、その優しい風が李流の心が伝わったことを感じる。

 長く感じる沈黙のあと、新たな光が雲の崖に現れる。

『良いではないか、良いではないか。
 真っ直ぐな心は気持ちがいい。』


 ハルの神の他に神々しい光を放った神が現れた。
よく見るとクリスマスカラーの色に光っていた。
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