祈り姫

花咲マイコ

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伝統の縁(でんとうのえにし)

18☆青海波

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 雅楽の音色が和音奏でて鳴り響く。
 観客から見た左の篝火から背筋を伸ばした李流が無表情で現れる。
 金に縁取られた鳳凰の形をイメージされたという鳥甲が炎に煌めき怪しく輝いている。
 踏懸という足甲は赤い紐でくぐられていてセットのように感じ、さらに左に佩く太刀が篝火に輝き美しく曲線を描きバランスがよく平安時代の武官を思わせる。
 静かな音色に合わせて左に立つ。
 舞台に上がると薫も同じようにゆっくり堂々と現れ隣に並ぶ。
 右側に立つ。

 空に届くような龍笛の音色から始まり、音色にあわせ腕を大きくゆっくり回しながら前に出し

ドンっ!
 と太鼓の音が響くリズムに合わせて同時に足を

タンっ!
 と地に踏み鳴らす。
 そして足を踏み出した方にゆっくりと体重を乗せるように腕を回しながら傾いていく。
 足の重心の動きは波のゆらめきを感じさせる。

 篳篥の主旋律に重なるように広がる笙の音色が合わさり空間に広がる。
 篳篥の音色にあわせてゆっくりな動きかと思えば太鼓の音色で足を踏み出し腕を回す。
 袖掴み舞うので衣装の艶やかさきわだつ。

 西域渡来の青海波模様の下襲に千鳥模様の袍を着る。
 これはこの舞だけの特別衣装。
 図柄は穏やかな治世がいつまでも続くことを象徴する。
 赤を基調とする左舞であるが、青海波は緑を基調とした清々しく美しい衣装だった。

 最初、ただ腕を振り上げ足を踏み出し同じ動きをしているようにも見えるが衣装の優雅さ艶やかさと、ピッタリの動きに魅了されていく。

 円を描くように左の萌黄色の袖と、片肩袒かたかたぬぎぎされ右の袖は大きく朱色の縁取られた袖に余計なシワもなく折り重ねられた片袖が優雅に見え、その袖に連なるように長い裾が翻る。
 腕を動かす様子は波の大きさを表しているように感じる。

 大きく円を天に伸ばすように描き、足を踏み鳴らしピタリと止まるポーズは男らしさを感じる。
 それに、二人ともタイプの違う美男子で若々しさが伝わる。
 雅楽の楽しみ方を知っているものなら青海波の意味も舞の良さも雅楽の音色の良さも分かっていて聞き魅入られるが、雅楽をあまり聞きなれない見慣れない観客が今回は多い。

 李流と、薫は雅楽の音色に合わせてしゃがむと太鼓の音に合わせ頭だけを左右に振り見事に合わせる。
 赤い艶やかな冠が美しく感じる。
 そして、いつの間にか、太鼓の音が最初の頃より多くなるとかんきゃくもいつの間にか舞と同じようなリズムを感じて舞楽に魅了れて目が離せなくなる。
 腕の動きよりも太鼓の音で足の動きのほうが多く鳴り、管弦の息つきのときにピタリと右膝を立てて袍の左腕を上げて膝に、片肩袒の手を添えて止める姿はやはり若々しく凛々しい。
 後ろの長い裾が絡まずに翻り折り紙のようにうち裾の白さが美しく翻り浅葱色の緑と相まってすがすがしく感じる。
 そして動きが大きくなり、さらに、若々しい男らしさに魅了される。
 ドンという音と、ピタリと止まり右の膝辺りに手をそえて止まり、一拍おいて鐘鼓の音で少し袖をクっと引っ張り腕を左右にひろげて舞う。
 細かな動きも美しく見える。
 雅楽と舞楽が一体になり呼吸も鼓動も更に観客もあわせている。
 ラストに向けてゆったりとした舞は動きを早め、優雅さと雅楽の音色と一体感になり、枹袖を前にだす。
 音色は静かになり、舞の終わりを知らせる。
 二人は一歩左足を引き腰を下ろし緑の袍を前にだし片肩袒している右手を腰において音がやんでいく。
 何時の間にか賑やかな音色になっていたことが寂しさを覚える頃、また龍笛からはじまる。
 そして右の裾を握りしめて膝立ちになり座り雅楽の音色が静かに鳴り響く、李流と薫は立ち上がる。

 雅楽の音色に合わせて二人は同時に一回りをして舞台から今度は薫から舞台を堂々と降り、李流が舞台から出ていく。

 そして青海波の舞楽の余韻を味わうかのように雅楽が清々しく奏でられる。
 篳篥の旋律で美しくなり終えたと同時に大きな拍手が鳴り響いたのだった。
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