祈り姫

花咲マイコ

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伝統の縁(でんとうのえにし)

20☆乱入者

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 龍笛の流れるような音色と羯鼓と太鼓の音に合わせて、足を踏み鳴らしながら、右手に桴を持ち、左手は人差し指と中指をくっつけてほかの指は握り込む剣指という形をとる。
 蘭陵王は走り舞という動きの激しい舞台を飛び、走るように機敏な一人舞である。
 音色に合わせて機敏に舞、金の桴が煌めく。
 しかも、雅親王の舞は迫力が違う。
 まさに蘭陵王が敵陣の中で舞っている緊張感がある。

 テントから舞台を見ていた李流と薫も何度見ても魅了されてしまう見事の舞だった。

 雅親王の蘭陵王に魅了されていると、赤い衣装を着た者が二人の横を通り過ぎて舞台に向かう。
それは舞台で舞う雅親王と同じ蘭陵王の服装をしたものだった。

 李流と薫は突然のことに驚く。

「…あれはいったい…?」

 太鼓と鐘鼓と龍笛だけの静かで緊張感の音色が終わり、再び舞が始まるときに、突然と左方向からもうひとり同じ蘭陵王があらわれる。
 そいつは太刀を脇にさしていた。
 蘭陵王の衣装には太刀はない。
 脅すような仕草よりも、雅楽の音色に合わせて、雅親王と対になって鏡の様に舞う。

 まさか、レッドスパイか!?
 
 と、李流と薫は青くなる。



 雅親王の蘭陵王の動きにあわせて近づいて、太刀を美しく抜き、うまく音に合わせながら一触即発だった。
 そして、偽物蘭陵王の舞は雅親王よりもキレがいい。
 太刀を構えているからではなく本物の覇気を感じる。

 正直雅楽奏者も驚く。
 予定にないことしらされていない。
 リハーサルをきっちりやる雅親王らしからぬことをする。
 だけど、楽士として音楽を乱すことも舞台を汚すことをするなと戒められている。
 取り敢えずリハーサル通りに雅楽を奏でるが音の旋律を司る羯鼓奏者は二人の様子を注視する。
 そして知らぬ間に偽蘭陵王がいることの不思議が消えていた。

 晴房は、しまった!と思う。
 雅楽寮は、奥の仕事ではない。
 正式の宮内省職員であり国家公務員であり人間国宝だ。
 きちっとチェックはしているが蘭陵王の姿では何者が犯人かわからない。
 宮内省が時たま送り込むレッドスパイの類もいる。
 晴房は今すぐ霊的に生まれ変わらせてやろうと手をかざすが、晴房の体にハルの神が降りてきて体を乗っ取られる。

「……ハルの神どうして止めた?」
 神を見定める力を持つ審神者でもある瑠香は瞳を青に煌めかせ睨み合う。
 正直、瑠香も焦る。
 瑠香には霊的に生まれ変わらせる力はない。
 晴房の体に宿ったハルの神は不敵に笑い。

《面白いものが見られそうなのでな…
 それに、目の前で人を消してはせっかくの舞が台無しだ。
 まあ、あやつは消えはしないがな》
 そのまま舞台を楽しむつもりらしい。

《ハルの神よ…とっさな運命を定めるのは悪い癖だよ…》
 瑠香にもルカの神が降りてきて宿り注意をするが内心楽しんでいると瑠香は思う。

《瑠香よ、観客が不審に思わないように香の力を使い舞を成功させなさい…》
 瑠香の体から離れて、そう伝える。

《あの子達が上手く舞えるように舞台を穢さないようにね…》
「言われなくてもわかってる…」
 瑠香は神の言葉を不審に思い、偽物蘭陵王を審神者の瞳で見ればあれは人ではない…

 神になった御霊のようだった…

 取り敢えず瑠香は記憶を変える香の能力で香を観客席に巡らし、不安思う心や思いを一時的に麻痺させた。
 ただ純粋に舞台を楽しむように…

 雰囲気の異常さに気づき雅親王殿下の危機だと感じた李流と薫はとっさに、舞台に静々と上がり音色に合わせて太刀を抜く。

 偽物蘭陵王は不敵に笑った感じ化する。
 一人舞のハズの蘭陵王の舞台は四人舞になってしまったが、楽士、舞人達は太平楽の音色に変えると、偽物も太平楽の舞に変えた。
 雅楽の音色に楽士たちの息呼吸に合わせ舞いながら、太平楽の舞のように、じっくりと立ちを閃かせ舞いながら合わせ太刀を抜き、三人で乱入してきたものを剣指で指しながらまい、一度雅楽の音色が龍笛だけになり静々と、同時に座り静々と出ていって、仕切り直しのごとくに、雅親王は見事な蘭陵王を舞い直す。

 李流と薫は偽物蘭陵王の背中に太刀を密かに背中にあててテント裏の誰もいないところに誘導した。

「お前!何者だっ!」
 二人は同時に誰何すいかする。

《私は蘭陵王…いや、雅楽の神とでも言おうか…》
 フフッと笑て仮面を外すとこの世ものとは思えないほど美しい。
 まさに美形と称された蘭陵王だ。

《お前たちの舞が素晴らしかったのでな…ちと遊んでやったまでよ…》
 雅楽の神は、ふふっと笑う。

《それにしても、これほどの客席はない…皆、誰もが雅楽に魅入られている。》
 雅親王の雅楽を知らせたい催しは成功したということか。

《お前たちの舞楽も素晴らしきものだった…》

 思い出して雅楽の神は感嘆の溜息を吐いた。

《祝皇陛下のお力は我らめに見えぬ神にすら寿がれ、このように現し世にあらわすことになった…》

 皇弥栄すめらぎいやさか

 栄あれ永久に雅楽がともにある限り…

 李流と薫はただただ不思議なこと過ぎて、雅楽の神が星空に登っていくのを見ていた。

 コトン…
 と音が鳴る地面を見ると残ったのは蘭陵王の仮面がその場に落ちていた。



 初の一般宮廷雅楽公開のイベントは大成功した。

 その後、李流と薫は雅親王にお褒めの言葉を頂き、偽物蘭陵王…雅楽の神の事を雅親王に経緯を話し、雅楽の神が落としていった仮面を渡す。
 その仮面を受け取り感嘆のため息をなされ、二人に向き合う。

「たまに、降りてくるのだよ。そして前に降りてきた時はバチをさずけて下さった。」

 御褒美みたいなものだよと雅親王は微笑まれた。
 雅親王は慣れた不思議な出来事らしい。

「だけど、このことは東親王にはナイショだよ。
 不思議な物をコレクションしていて狙われてしまうからね?」

 雅親王はレッドスパイよりも弟宮であられ、陰陽寮の上司で中務の宮の東親王の方を警戒している様だった。
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