祈り姫

花咲マイコ

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伝統の縁(でんとうのえにし)

21☆伝統の縁

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 翌日、李流と薫は王谷に体育館裏に呼ばれて連れていかれた。

「皇室は無駄に税金使ってないんだな。」
 と、言った。
 失礼な言い方だが、それは昨日の雅楽を初めて見て素晴らしくてまだ思い出せば心がウキウキドキドキしてしまう事が止まらないのだと薫はテレパシーで覗いて知った。

「俺のお祖父さんの大陸の国の昔の伝統まで受け継いで守ってるなんて…皇室がなかったら、ほんとに消えてたんだな…!」
 と、そこも王谷のツボらしい。
「日和国の象徴だけじゃなくて、他の国が失くしたモノもずっと大切にしてるなんてすごい国だと思ったよ…」

 仲間たちに隠れて李流と薫にそう告げた。
 自分が率先して日和国の悪口を流布していた事を後悔しているように言う。
 自分が思い込んで皇室を要らないと言った事を反省している。
 そして、この想いを聞いてくれるのは李流と薫しかいないと思ったみたいだ。

 だが、王谷は、

「地球市民は日和国民の事でその頂点に立つのが祝皇なんだなっ!」
 と、最後には穿った敬意に変わっていた。

 まぁ、陛下を尊敬してくれる国民(市民?)になったならいいかと李流と薫は苦笑した。
 その後、王谷は日和国の歴史を知って左翼思想からバリバリの右翼思想になってしまったらしいのは後のこと…



「伝統を守るのが皇室の役目、日和国人としての誇りをさらに千年後も伝えていくのも皇族の役目なんだ。」
 と雅親王は仰った。
 ただ遊んでいるわけではない。
 遊んでいいのなら伝統に乗っ取らない。
 それほど伝統をなくすことは国の歴史も民族意識もなくすことだ。

「そんなもったいない事を日和はしないから今まで雅楽が残っている繋げなくちゃいけないものなんです。」
 李流は雅親王にそう恐れ多くも思ったことを声に出して言った。

「そうだね。私の使命は皇室と日和国の伝統を更に千年後も繋げる事だと思ってるよ。
 その思いを分かってくれる国民に答えるためにもね」
 雅親王は李流の素直な言葉が嬉しくて頭を優しく撫でてくださった。

 すべてが煌びやかに見える雅楽や舞や伝統を陛下が贅沢するもののためだと勘違いをするものが多いが、全ては日和国民みなの象徴を心を守るために繋がることが宮中の仕事なのだ…その宮中で伝統衛士として働けることを改めて誇りに思う李流と薫だった。



「伝統と縁も似てるよな。」
 薫は突然李流にそう言った。
「ん?」
 李流は意味がわからなくて首を傾げる。
「俺のバーちゃんとお前んちのバーちゃんは親友だったって知ってる?」
「知らなかった…ホント?」
 李流の祖母も薫の祖母も、もうこの世にいないので交流があったことすら知らなかった。

「オレも知らなかったけど、母さん側のばーさんとだったらしいよ。二人をよく知るじーさんが話してくれた。」
 薫の祖父は、瑠香の父だ。
 そして、かなり長く宮中に務めていた前任の陰陽寮長だ。

 李流の祖父の季節も宮中に務めていたので知り合いなのかも思った。
「じーさんが桜庭によろしくって言ってた。」
「じゃぁ、伝えておくよ。」
 その後再び祖父たちは交流したらしい。
「それに、かーさんが言ってた。」
「お前の母さんは…」
 いや、神様として降りてくるというので言葉を噤む。
 薫は話を続けて
「《興味ない》というのが何でも縁を遠ざけるんだって、言ってた」
「うん…」
 李流はそれには覚えがある…
「興味湧かないと知ろうとしないじゃん!お前のこともさ」
「うん…知られたくないこともあるけど…」
 無意識に知られたくなくて、人を避けていたところもあった…
 それは、
「あやかしだってこととか?」
「ニダの血が入ってることとか?」
 二人はクスッと笑う。
 自分たちの秘密を互いに知り、卑下することない。気負うこともない。
 気心知れた本物の親友になっていた。

「でも、わかりあえればどおってことないだろ?」
「ほんとだな…」
 心に引っかかっていたものがいつのまにか解けていたことを李流は実感した。

「友達も伝統と同じくらいだいじだってことだよな。
 そーゆ縁があったのうれしいなっ!」

バンっ!と
「うっ!」
 馬鹿力の薫は遠慮なく李流背中を叩いて、流石に背中をいたがる李流に謝り通した。
 だけど、体の痛みよりも心の痛みが安らいだことに李流は喜びを感じていた。
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