祈り姫

花咲マイコ

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12☆おばあ様は皇后陛下

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「まあまあ、法子ったらお祈りの修行するから一人にさせてもらっている隙に、宮を抜け出して少年と逢引をしていたのですって?」

 いつもニコニコ笑顔で品があって温かく優しいだけではなく芯のある祝皇の皇后であり法子のおばあ様はベットにつっぷしていじけている法子の頭を撫でながら訊ねる。


 法子は突然はっと思い出したように、すくっとベットの上で正座になって、いすまいを正しておばあ様に顔を見せる。

 両親がいないあいだは最も近しい方は恐れ多くも帝の祖父と皇后の祖母だ。

 国の父母といえる尊い象徴である。

 李流にそう改めて諭されて、改めて尊い方だと思う。

 おばあ様の優しく見つめるお顔を拝見して、いろいろ溢れるモノが涙となって出てきた。

「いまだけは、私のおばあ様でいてくれる?」

 法子が突然泣き出して皇后は困った表情だったけれど、

「もちろんよ。可愛い私の法子。なにがあったの?」
「これ、李流がもっていたの」

 菊桜のペンダントをみせる。

「かなり古びたペンダントね。桜庭李流と言ったわよね?旧、桜庭の宮の子息かしらね」

 さすが、おばあ様は皇后であられる。
 宮家はすべて把握しているらしく、一国民であり今や容疑者で捕まってしまっている李流の情報は既に掴んでいるのかもしれない。
 
「でも桜庭家に斎宮は出ていないはずよ。」


「じゃあどうして李流はこれを持っていたのだろう?」

 謎が謎を呼ぶ。

「そうねぇ……李流くんの事を法子はどれほど知っているの?」
「え……衛士係のお兄さん、我が国のことや歴史をいろいろ知ってるお兄さん……」
「それだけ?」
 コクンと頭を縦に振る。
 あらあらと口元に手を当てて困ったふうだ。

「それだけじゃ……」

 私は李流のことを何も知らない……

「何も知らなくて信頼していたの?逢引をしていたの?」
「信頼出来ると、思ったから。私を変えさせてくれたのは李流だから。それと……」

 法子は赤く頬をそめて、

「李流の笑顔や法子を優しく抱きとめてくれる腕や優しさが私が知る李流のすべて……なのじゃ!」

「あらあらあらあら。まあまあまあまあま。」

 おばあ様は驚きと嬉しさと孫の可愛さに興奮してそのような言葉しか出てこないようだ。


「李流はどうなるのじゃ?刑罰があたえられるのか?何も李流は悪くない。悪いのは無断で宮を抜け出した私なのに」

 こんどは不安の涙か溢れてくる。顔も青ざめる。

「誰も悪くないわ。危険なことをしたのは確かだけど……法子は変わったわね。」

「え?」

「どことなく雰囲気が、大人になったわ。
 李流くんがちゃんと日和の国のことを正しく理解して法子はよく学んだのね」

 そうだ、李流に出会う少し前の私は、おばあ様にあっても、おじい様にあってもモヤモヤと話すことすら嫌だった。

 学校で教わった偽りが頭の中に入っていて、嫌な態度をとっていた。
 きっとご心配され嫌な気持ちにさせたに違いない。

 今は李流の影響で私の世界は変わった。
 全てが未来もがが輝いて見える。

 けれど、李流が監禁されてどんな罰が与えられ罪人にされると思うと目の前が暗くなる。

「李流はどうなるのじゃ……おばあ様」

 おばあ様の服をギュッと握り皇后に法子の不安が伝わった。

「このことは陛下のお耳に入ってます。直接内密に沙汰が下されることでしょう」

「おじい様が直々に……それは世の中に知らされるのか?李流の未来に影響が及ぶことは……」

 李流が私のせいで罪人になるのがとても恐ろしい。

「法子、陛下は国民の幸せを祈る。祝皇陛下ですよ。李流くんに教わったことを信じなさい」

 その凛としたお言葉は皇后としてだ。

「は、はい。」

 法子は無意識にしゃんと背筋を正しくだす。
 その態度にふふっとまた優しげのおばあ様に戻って、


「このペンダントは陛下にご覧頂きましょう。きっと良いお導きをして下さるわ」
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