あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
93 / 181
あやかしと神様の恋縁(こいえにし)

14☆父との再開

しおりを挟む
「おばさんたち、どこに連れて行くんだ?」
 途中まで楽しく他愛のない話をしてたのに気配の怪しい廊下を歩き始めると会話がなくなり、不安が葛葉子を襲う。

「直接、お父様に聞いた方が宜しいでしょう。」

「えッ…」
 叔母たちが振り向くと、カラスの頭になっていた。


 案内された部屋の襖が開くと、西洋風の広い部屋で、ダークブラウンの家具が上品良く配置されているが、闇を思わせる。
 その部屋の真ん中に、待っていたように、灰色を基調したスーツ姿の父が椅子に座っていた。
 髪は白髪混じりだが、背は高く端正な顔立ちで娘の葛葉子も自慢だった。
 そんな父、威津那は微笑み、葛葉子に歩み寄る。

「葛葉子、久しぶりだ、会いたかったよ…」

 愛しい娘の頭を優しく撫でる。
頬にも優しく両手で触れて顔を確認する。

「と、父様…」
 葛葉子は怖さのあまりギュッと瞳を瞑る。
 ぞくりと、怖がるのは魂に入っている白狐が嫌がる、怖がる。
 昔に尻尾を八本も取られた恐ろしさを思い出したのか。
 葛葉子に警告するように鼓動が激しくなる。

 抱きしめられると、優しい父様を思い出す。
 ホントは優しくて大好きだった。
 葛葉子も思わず父の背に手を回し包容する。
 狐と同化してこの温もりを忘れていた。
 けれど父は娘の耳元に口を近づけ、

「晴房を…どうして連れて来なかった?
 ……あの子は新たな皇にふさわしい神の化身なのに」

 葛葉子は、父の胸を突き飛ばし距離を取る。
 恐怖ではなく、怒りだ。
 陛下を侮辱する、謀反する言葉は許せない。

「晴房は皇にならない!
 神誓いをした皇守る神なんだから!私だってそうだよ!陛下を悪くいうことは父様でも許さないよ……!」
 声を荒げて指を指し宣言する。

『それは今言ってはいけなかったのに…』
 白狐が心で悲しげに呟く。

(えっ…)

 突然、父は悲しい辛い表情をする。
 絶望の黒い霧のようなオーラが部屋を占める。
 その感覚が地震のように足元を揺らす。
 ここはジジ様の異界ではなく、威津那の異界だ。
 阿倍野家全体がそうなのだ。
 全ては父様の心次第の空間。

「なら、ほんとに、死んでしまったのだね…
 また宮中の掟に苦しめられ娘は葛葉子は死んだんだね……」
 父の瞳から涙があふれだす。
 それを見ると心が痛い。

「でも、生きてる!死んでない…お願いだから、皇室を陛下を嫌わないで!」

「娘二人も殺されて、憎しみが湧かないわけ無いだろう!
 陛下には直接関係なくても、陛下を敬愛して皇室を支える巫女になり死んだことには変わりない!」
「それは、私が望んだこと!皇室を陛下を敬愛してるから…」
「そんなのはお前の本心で愛してるわけではない!
 阿倍野の九尾の狐の血筋定めた呪いだ!」
 総断言して頭を抱え、膝を折

アアァァァァ!!

 と泣け叫ぶと更に屋敷が揺れる。
 本気で悲しそうに泣く、その心が葛葉子にも心を裂くように痛い。
 自分を思っての悲しみだからなおさらだ。
 けれど、心とは逆に頭は冷静に、父は完全に狂ってると思う…

「守ってやれなかった!愛しい娘を!死した直前、悲しかっただろ?辛かっただろう?」
 よろよろと、葛葉子に近づき手を伸ばす。
 その手を葛葉子は、無意識に避けるため一歩さがる。

たしかに、辛く苦しかった…

「でも、蘇った私は幸せだよ!
 いろんな人に出会えた!
 とても好きな人、結婚したい人にも逢えたんだよ!」

 その言葉に、威津那はピクリと眉の端が上がった。
 いつの間にか赤い瞳で葛葉子を見る。

「…その男は心からお前に愛の言霊を言えるような男か?」

「それは言えない…私も言えない」
 たがいに陛下を愛すると神誓したから…

「でも同じものを愛しく思うことは同じ思いと同じだよ…」
 威津那は苦笑する。

「母さんと同じことを言う…
 私は言えなかった、最後まで、橘を愛していたのに…」

無念だけが魂を痛める…

「いつも、いつも、私は後悔を抱く…先が見えるのに。
 未来が見えるのにどうして、後悔しか残らない?」

 未来は明るいなんて嘘だ…信じられなくなった…
 目の前に映る葛葉子の未来も妻と同じだ…命短し宿命…
 しかも、『先見』の目には葛葉子が愛しく思う男が命を奪う…
 その男は鵺を放った時に葛葉子を眷属にした神の化身……

「それは今を見てないからだよ。
私を、見てよ…
 父様…私、幸せなんだよ。」

 葛葉子を、じっと見つめる赤い瞳は今を見ていない。
 先を見ている。
 未来を映している。

「葛葉子は母さんに本当に似ているね…狐を宿してから更に…
 好きになる男も、運命も、宿命も、何もかも…」

 瞳の色は黒に戻る。
 今までの殺伐としたオーラも消える。
 優しく微笑み葛葉子に近づき、抱きしめる。
 父様の瞳を見てから体が金縛りにあって動かない。

「呪いの輪廻からはずさせてあげる。
 いとしい娘のために…」

 いきなり父様に唇にキスされる
「んっ!んっ!つっ!」
 息を喉に吹き込まれ、舌をからまされる。

 息ができない、意識が遠のく。

 いやっ!やめて!
 なにか黒いものが流れ込んてくる!
 なにか嫌なものが!魂まで絡もうもとするように。

瑠香!助けて!

「うっ!ぐつ!」
 キラキラとした煙が威津那の喉を縛り葛葉子の口を離させる。

「このまま、霊的に生まれかわらせてもいいのですよ……」
 光る煙を引いて、仰向けに威津那を引き倒す。

「瑠香っ!」
「葛葉子!」
 瑠香は葛葉子をぎゅっと抱きしめる前に、浄化するようにキスをする。
 狐になって構わない。
 深いキスを繰り返す。
 だけど、狐に戻ることはなかった…最初に吹きかけられた息が狐の力を封じたのかもしれない。
 ぎゅっと抱きしめれば、やっと瑠香は落ち着く。

「と、父様なんかダイッキライ!!ジジ様と一緒で変態だ!馬鹿ァァァ!」
 あまりのことされて、罵倒せずにはいられなかった。

「ふっ、おまえのファーストキスは生まれた時から奪ってある。
 いまさらだよ…」
 よろめきながら苦笑して二人を見る。
 威津那は喉をわざとらしくさすりながら瑠香を睨む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...