あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
106 / 181
あやかしと神様の夏休み(番外編)

10☆瑠香の弱点

しおりを挟む
 人混みのない屋台の裏の木で出来たベンチに、瑠香を座らせる。

 口元を抑えて本当に辛そうだ。

 さっき、暗がりで吐いて葛葉子は心配する。

 目の前が暗くなるくらくらする。
 暗がりで葛葉子に苦しそうな表情をみられないですむとおもったが、狐の瞳で見ればすごく青ざめているのがわかる。
 苦悶の表情をしている……

 人混み激しすぎる…吐き気がする…高をくくっていた…
 熱気もひどかった…
 ふだんこんな人混みに行かないからわからなかった…
 
 葛葉子は、瑠香の額に手を当てたりオロオロする。
 近くの屋台に売っていた冷たいラムネを買ってきて額に当てたりする。

「大丈夫?あと何がほしい?」
 葛葉子は心配して落ち着かない。
 心配混じりの優しい声音で聞いてくる。

「だいぶ、楽になったよ。オレ鼻がいいから…人酔いしやすいんだ…」

 あと屋台とかの匂いとは、葛葉子が悲しむから言わないけど察せられるのも困る。
 瑠香はデートしたい。
 思い出の残るデートしたい。
 なのにこんな自分を見せることになるなんて…不甲斐ない…
 泣きたくなる…男だから泣き顔見せたくない。
 尚更情けなくなってしまうから…

「瑠香の弱いところというか、弱点はじめ知った……」
 ベンチに座る瑠香の、膝に手をおいてしゃがみ顔をじっと見つめる。
 上目遣いはわざとではないとおもうけど、女の子がもっとも可愛く見える角度だ。

「…幻滅した?」
「なんで?」
「弱いところ見られてはずかしいし…」
 しゅんと眉毛が下がる。
「ぷ。かわいい。」
「わらうな。」
 ぽんと軽くグーで葛葉子の頭を叩く。
 しゃがんでいたのを立ち上がり、瑠香の両肩に手をおいて葛葉子は今度は見下ろす形になる。
 瑠香はそんな葛葉子の腰に手を添える。
 見つめ合う。
 葛葉子はニコニコしてる。

「弱いところも見れてしれて嬉しい」
「オレは恥ずかしいし…」
 瞳をそらす。

 いつも、私に恥ずかしい思いさせてるんだから、もっと恥ずかしがってほしい!

 と思ってしまい、ニコニコからニヤニヤ意地悪く笑う。
 瑠香の意地悪が伝染ったと思う。
だけど、人のために動くのが好きな葛葉子は、

「私が瑠香のために頑張らなきゃ!って思えるのが嬉しい!」
 と言ってるかの頬を抑えて軽くキスをする。

「人混み嫌いなのに連れて来てくれて嬉しい…」
「デートしたかったから…
 宮中帰ったらデートできないし…そばにいることはできても…」
「瑠香…ありがとう。私のために無理してくれて…」
「無理じゃなくて、慣れてないだけ。慣れればなんとか…」

 考えるが無理かもと思う…
 ほんと、人混み苦手だから…
 でも、葛葉子のためなら克服できる…と思う…
 まだ、しゅんとしてるように見える瑠香の額をやさしく撫でる。
 愛しさを込めた瞳で見つめる。

「瑠香の役に立てることないかな?って思ってたから…うれしい…どうしてほしい?」

「おでこにキスして…」
 言われたとおりにまたキスをする。
 前のめりになるから柔らかな胸が目の前に迫るのが嬉しい。
 それに葛葉子の体は柑橘系のすっきりとした清々しい香りがする。

 葛葉子そのままの香り…
 かすかに菊の香りがするのは自分があげた匂袋。
 いつも肌身はなさず持っているらしい事に嬉しさが増す。
 
 胸に顔を埋めて嗅いでいたい。
 気持ちがすっきりするし…
 柔らかくて気持ちがいい…

 そんな瑠香に葛葉子は愛しい気持ちが増す。

「甘えてる?」
「甘えて悪いか?」
「わるくないよ…」
 言葉を紡ぎながら唇に何度も軽いキスをする。

「あーっ!キスしてる!」

 突然子供に指さされて恥ずかしくなる。
 つい、恥ずかしさのあまり瑠香を突き飛ばし瑠香は後頭部を地面にぶつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ワイルド・プロポーズ

藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。 総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。 生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。 私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ―― 見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。 ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...