あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

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あやかしと神様の過去のこと

14☆狐の葛葉子と陛下☆後編

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 あやかしの葛葉子は、体が軽いのか、ぴょんぴょん跳ねて先にいく。
 その後ろ姿も大きな狐のしっぽにきつね耳の巫女装束。 
 空には下弦の月。
 あやかしであって神に、ふさわしい月だ…

 葛葉子を照らしていい明かりは月のみ…
 日に輝く葛葉子も女神のように思えたことを思い出した。

「そういえば、朝日に浴びて狐から戻れなかったことってあるのか?」

 出会った時、

「朝日にあやかしは溶けて消えるのかな?」
 と意地悪な言葉に可愛く泣いた姿も思い出して、また泣かせてやりたいとも思って一人苦笑してしまい、瑠香は口元を指で隠す。

 葛葉子は瑠香にふり向くと、少し困ったような表情で、

「ある…よ」
「あるのか?!」
 ほんとにあったとは思いもしなくて瑠香はびっくりする。
 葛葉子は耳をひしゃげ。

「私がどうして『朝日を浴びると狐からもどらなくなっちゃうっ!』て、焦っていたこと覚えてる?」
「そういえば。必死だったな…」
 笑いをこらえる。
 同じことを思い出していたこともうれしいが…
 朝日を怖がるのはあやかしの本能かと思った。

「狐になって陛下にお初にお目にかかったんだよ…」

 ……正直今まで忘れていた。
大切な心が暖かくなる思い出で自分一人の宝物のように大切にしていたのに…

「オレと会った時がはじめてじゃなかったのか?」

「うん。いま、思い出した……」
 陛下とお会いしたことを思い出して頬を染める。
 ほんとに惚れていて尊敬しているんだと瑠香は感じる。
 なぜか。陛下にヤキモチではなく、葛葉子にヤキモチの感情が湧いた。

 あやかしになった当初の事は今はあまり思い出せない。

「瑠香の仮の眷属になる前は白狐の意思の方が強かったし体を乗っ取られていた気がする。」
 それゆえ、四神とも交流しそれなりに楽しんでもいた。

 そのぶん、人と話すことは出来なくて、巫女達からは嫌煙されていた。
 あやかしと言っても神だから扱いに困っていたのも事実だ。

「でも、ご飯は運んでくれたよ」
「もしかして、おいなりさんか?」
「うん。美味しかったことは嬉しかった。」
「まさか、それだけで命繋いでた?」
「うん。あやかしって何食べていいのかわからないし。食べられるものなら何でも良かった…」
 瑠香は哀れに思ってしまう。
 思い出せば、今より少し小柄で痩せてた気もする。
 裸を初めてみた時だって、貧弱だと思ってた。
その時よりは…
「陰陽寮に来てふくよかになったな」
「太ったってこと?ダイエットしたほうがいい?」
 耳がしゅんと、ひしゃげる。
「ふくよかの方がオレは好みだよ」
 抱いた時に柔らかいほうが良い。
「へへっ。なら今のままでいいや」
 むしろ好かれるためにもっと太るかな?とも思った。

「まぁ、あやかしの本能では朝日に浴びてはいけないと分っていたけれど…
 ホントかどうか試したくなって、思い切って朝日を浴びたんだ。
 そしたら本当の狐になっちゃって焦った…」
「…葛葉子らしいな」
 少し試すとか考えないところがらしい。

「そういう性格だと知っていたから、この間、吐血までさせられたのかも」
「だな…あの時は心配した……」
 今も思い出すと胸が痛い。
 葛葉子はそんな苦しげ瑠香の腕に絡み頭を寄せる。

 どうしたらいいのか、わからなくて、皇居をうろうろしていたら陛下がいつも散歩しているお庭まで入ってしまった。
 朝日が登りはじめた頃、陛下がお庭でお散歩なされていて、狐が皇居にいるのを珍しく思われたらしく、腰を低くなされ、

「おいで、おいで。」
 と、微笑まれてお優しく恐れ多くもおそばにお近づかせてもらって、頭を優しく撫でられた。

「とても、幸せで泣きたくなるほど嬉しくてあまりのことに逃げ出しちゃった。」

 白狐の葛葉子はとてもドキドキしてた。
 とても嬉しくてまま幸せで、いつの間にか安心して寝てしまった。
「そしたら、今みたいなあやかしに戻ってたの」
 頑なに陛下に恋をしていた菊と心が一緒になって、今の葛葉子になった。

 そのあと、鵺の事件で瑠香に出会えた…

「今思えば…あの時キスをもらっていれば人に戻れたかも…」
「不敬罪で、審神者として処罰していたかもな……」
 陛下に対してヤキモチなのか葛葉子に対してヤキモチか複雑な思いで、つい意地悪をいってしまった。

 そんな意地悪を言う瑠香にふふっと笑い、

「だから、陛下が一番好きなの。」
 と言った。
 瑠香をもう心配させたくないのもある。

「ごめんね。瑠香。一番に好きになれなくて。」
 そう言う割に、更に腕を抱きしめる。その言葉の裏を察して、

「オレだって陛下を一番好きだよ」
 神誓しているのだから当然てなくてはいけないことだ。

「先帝陛下も威厳があって尊敬申し上げていたが、
 今上陛下も、優しくて温かくて好きだよ。
 誰よりも神の化身だから誰よりも陛下を愛してる。」
 改めて神に誓うように言う。
 だけど、ニッと笑って、

「お前を一番じゃないが、体は一番愛してやるから覚悟しておいて。」
「う、うん。」
 そう言われてドキドキと胸がなる。

「私も心一番陛下だけど…
 瑠香にしか…許さないょ…んっ…」
 瑠香は、葛葉子の頬優しく触れて唇にキスをする。

 お互いが陛下を一番愛する共通の思いと、互いを本当は男女として愛おしいということを伝えるように…

 そんな、熱い二人にあやかしたちはあてられて、近づいてイタズラしすることはできなかった。
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