あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
136 / 181
あやかしと神様と祈り姫

6☆好きなものがいる自分という存在

しおりを挟む
「ところで、葛葉子姉様はどうして瑠香さまを好きになったのですの?」
 極意を聞きたかったのに、春子は思いが止まらなくて一人で告白するように話してしまって肝心の葛葉子の話を聞き忘れるところだった。
 葛葉子は困ったように頬をかき照れる。
「はじめは瑠香の事が嫌いだったんだよ。出会った時から最悪だったし…」
 あの時のことを苦々しげに思い出したのを表情に出してしまう。

「まぁ!あんなにラブラブですのに?」
 ほんと、人生(?)分からない。
 こんなに瑠香を好きになるなんて思っても見なかった。

「瑠香は強引だし、意地悪だし、上から目線だし!スケベだし、ほんっつとムカつく男だったんだけど…」
 葛葉子は力を込めて瑠香の嫌なところを吐き出すように言うけれど、表情は柔らかく微笑み、

「優しいキスを毎日してくれて意地悪だけど優しくて…
 いつも私を強く思ってくれているんだよ」
 へへっ!と幸せそうに笑って、

「だけど私は意地張って好きにならないようにしてたんだよ。
 陛下の側室に本気でしてもらおうと思って意地張って瑠香の事を好きにならないようにしてたんだよ」
「まぁ、側室にと?恐れ多いし、絶対無理なことですわね!」
「だよね」 
 葛葉子は頭を掻いて照れる。
「そんな意地っ張りな私は瑠香の強い想いに…瑠香の押しの強さに負けたんだよ…」
 あの時のことを思い出して涙が溢れる。
 それほど嬉しく幸せなことだった…

「…想いを素直に受け入れて、今は瑠香がいない事が考えられないほど好きなんだ。」

 祈り姫であられる春子は葛葉子の想いを感じ取り涙が溢れていた。
 涙をぬぐった春子は悟ったように頷き、

「私も押し勝てばよいのですね。
瑠香さまのように!」
 親指を立ててGood Jobのしぐさを春子はした。
 その仕草はまったくもって気品がない。
 東が注意するのはこういうところかもしれない…元気でお強い春子様らしくて葛葉子は大好きだけど。

 しかし、恋愛の極意は、勝ち負けじゃないんだけどとは思いつつ…
 それもいつか分かる事だと思うことにした。

「あ、だけど一番愛してるのは瑠香じゃなくて陛下だよ。」

「瑠香さまが一番じゃないのですか?それでいいのですか?」
 春子は好きな男を一番愛したい。それが普通だと思うけれど…

「神誓している以前に、陛下を愛してるし、敬愛申し上げているの。
 それは瑠香も一緒で、ともに愛せる事も嬉しいんだよ」
 へへっ!とまた嬉しそうに笑って

「それに、春子殿下は私に品がなくなったっておっしゃったけれど、あの時の私は張り詰めていたんだよ。余裕がなかった…」
 その当時のことをふと思い出して告白する。

「あの時は張り詰めてた…毎日緊張してたの。
 房菊姉様のように立派な巫女になりたいと思ってた。
 けど、その姉様が亡くなって不安で…今思えば…自分を見失っていた…」
 巫女の世界しか知らない葛葉子は必死になっていた。
 姉様のような巫女であらねばと思って、自分を押し隠してたところもあった。

「私が柔らかくなったのは瑠香がいるから、瑠香のおかげで私になれて幸せなんだよ。」
 そんな告白を聞いた春子は、ほうっと満足気なため息を吐いた。
 春子も葛葉子のように幸せな恋愛を、東としたいとさらに強く思う。
 けれど、そのためには自分一人だけでは力不足な気もして…

「狐の神様は恋愛成就もできますわよね?
 婚約が決まっても、心を振り向かせたいのです…」
 と聞いてしまった。
「うーん…私はどうだろう。
 狐の神といっても西の守護の白狐だし…」
 そういうことを考えたこともなかった。
 春子と話したり、そばにいると、いろいろと希望や思いが広がるのは、春子が祈り姫であられるからだろうか?
 それとも、春子の独特な雰囲気だろうか?

「もし、私に恋愛成就を叶えることができたら叶えて…ううん!
手助けしてあげるよ!」
 皇族の春子に恐れ多くも遠慮無いことを言う。
「葛葉子姉さまのそいうところは変わってなくて好きなのですわ!」
 心強い味方が出来た春子は葛葉子の手をまた握り二人同時に微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ワイルド・プロポーズ

藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。 総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。 生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。 私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ―― 見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。 ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...