あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

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あやかしと神様の黄泉がえり

10☆稀代の祈り姫の日記

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「巫女寮で殺人事件か……」
 東親王は中務の宮で考える。

 事件と言っても、表(世間)に絶対に出してはいけない事件。
 もう、闇に葬られて出しようがないが……
 机に肘をつき、顔を支えて直立不動の瑠香を見る。

「瑠香はどう思う?葛葉子がやったと思ってる?」
「いえ……」
 決定的な証拠は無い。
 葛葉子は自分がやったとはいったけれど…
 記憶を覗いた瑠香はそのことも東に報告した。

「なら。やってない事に…しちゃおうか?」
 仕方なしにため息を吐いて決定した。

 不謹慎だが東も葛葉子が部下として学友として可愛い。
 苦しんでいるなら救ってやりたい。
 結局は公には出来ないのだから……

 むしろ警察も立ち入ってはいけない事件で捕まることはけしてないが葛葉子の処分は陰陽寮を管理する中務の宮である東の決断にかかっている。
 粗相をしたなら二度と宮中に近づくなとはいったけれど…

「記憶を覗けば、桔梗という姉巫女の名前は黒御足家だということです」
 瑠香は黒御足家の事ももちろん知っている。
 黒御足家と知っていたら止めていた。
 父はさらによく知っていて苦々しい表情をしていた。
 春陽の父が阿倍野を嫌悪していたのは黒御足を受け入れたせいだと知った。
 まさか、あの穢れた一族が巫女をやっていたとは思っても見なかったらしい。
 結局履歴書もなかった。
 どこかの職員が裏で入れたのだと察しがつく…

「履歴もなかったんでしょ?怪しい者に近づけた瑠香の責任でもあるかな?」
 にっこり笑って責める。
「も、申し訳ありません…」
 ほんっと自分は甘かった……
 疑っていたなら近づけなければよかった事なのに…

「黒御足ねぇ…九尾の狐を封印したイズナ一族でもあるんだよね…封印を説いちゃったってところかな?」
 眉間にシワを寄せて困って考え悩んでいる表情をしているが、
 東は内心楽しんでいる。
 と瑠香は感じる。

「それで、葛葉子は九尾の狐になってあの事件という事かな?」
 と的中させた。

「そこまで知ることができるとはさすがシラスの……」
 
「いいえ!私のおかげですわ!」
 春子女王は扉をバンッ!と勢い良く開けて手にもった古く分厚いノートを瑠香に突き出す。

「稀代の祈り姫宝子様の日記に今日のことが起こると、書いてありましてよ!」
「そうなのですか!?」
 瑠香は驚く。
 東は春子の態度にやれやれというしぐさをする。

「大体なことは書いてあってね、瑠香の報告とてらし推測しただけでシラスの能力なんてつかってないよ」
 東の力はの瑠香と似ている。
 真言や陀羅尼にあわせて皇室に流れる、現れることのある皇祖神の力にのせて竜神をよび隠し、隠れるものを顕にする力だ。
 シラスの力はいずれは使うことになるとは思う。

「宝子様も先見の能力をもっていたらしいのです。」
 春子は神妙な表情をする。
「黒御足家は古代皇族の導きの神で混じったこともあるかもね。
 だから稀代の祈り姫でもあるのかな?」
 と、推測してみる。

「その日記にはなんて書かれているのですか?」
 今のことが先見されているなんて興味があるし良いことが書いていてほしい…

「白き獣が封印解かれ瑞兆となす…」

 それだけですわ。
 日記というよりか予言書に近い。
 瑞兆とは新しい帝が立たれたときに神が寿ぐ兆しの事だ。

 雲の形が龍で現れたり、人の神の姿をしていたり、白き生き物が生まれたり、奇跡なことが起こるそれが瑞兆。

「残念ながら、父に…陛下に…瑞兆はまだ現れていないんだよ……」

 東は瑞兆の出現をなに者かに邪魔されたのもあるが、先帝が亡くなるのに瑞兆も不謹慎だと思うと複雑でもある。
 だが、もう九ヶ月だし、今回の事件はそういう宿命も持っているかもと思うとワクワクする。
 それに、葛葉子は白狐で神だ。

「ですから、葛葉子姉様は瑞兆とになられるのです!」
 春子は力強く宣言する。
「もうすぐ、重陽……九の数陽の吉数」
 瑠香は、つぶやく。陰陽師の瑠香はハッ!と閃いた。

 陰陽では吉数字だ。

 陽の気が最大限に強くなる重陽の節句。

 九尾の狐といわれる大妖怪も九つ。
 九尾とかいて『つづらお』とも読み、葛葉子の葛は『つづら』と読む。
 九に繋がる名前だ。
 そして、時の帝につけられた九尾の狐の名前はココ
 九つ…ここのつ…と繋がる。
 そして重陽の宴は菊の酒を振る舞われ長寿、この世が長く幸せに続くことを願う。
 こうも、九が連なると運命的なものを感じるが、吉凶混ざるがこの世の宿命。

 運命をあらぬ方向に動かせば予言も変わる…

「九月九日の重陽の節句までに葛葉子が見つかるといいね。」
 葛葉子の存在は凶兆ではなく、吉兆だとわかると暗い雰囲気も和らいだ。

「いや、絶対に見つけ出してね?そうしたら、今回の不祥事はお咎め無しにするよ。」
 東はニコニコ笑顔でそう言い、瑠香も微笑む。

「はい、かしこまりました!」

 もういても立ってもいられない。
 阿倍野に一人で乗り込もうと決意する。

「僕も臣もついて行くからね!」
 東は目をキラキラさせてそう言った。
 ほんっと困ったお方だと思うものの心強かった。

 翌日。
 東と臣とともに阿倍野屋敷に訪れたがサラ地になっていた…
 阿倍野の従兄弟に問いただしてもわからないということだった…

 葛葉子の、手がかりはなくなってしまった…
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