あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
158 / 181
あやかしと神様の黄泉がえり

20☆八尾比丘尼の血

しおりを挟む
「東さまぁぁ!」
 春子女王は青ざめ泣き叫びながら息絶えた東のもとに駆け寄り抱き上げる。
 春子の服も血に染まることも構わない。

「死んではなりません!東様っ!東様っ!」
「東殿下はもう……」
 陰陽寮長は青ざめ無念を顔に出す。
 瑠香もいたたまれない…
 自らの不祥事で尊い方を死なせてしまったなんて……!
 悲しみと罪悪感が胸を占める。

「起きないと!目覚めの一発くらわせますわよ!」
 春子は涙を流しながら明るい声で、死んだことを信じようとはしてない。
 それが痛々しくもあったが、

「それはいやだなぁ」

 東親王は春子の頬を濡らす涙を優しく拭いて苦笑して言った。

「東殿下!?ご無事なのですか!?」
「なんで?生きていらっしゃるの?」
 心臓あたりから大量の血を流して即死のようだったのに…

 春子は恐れもなく確かめるように自分のスカートの布を血を吹き出していた所を拭くと綺麗に塞がって何も無い。

「どんな、手品をなさっていらっしゃるの?」
 あまりのことにきょとんとする。
「うーん…僕も死んだと思ったんだけどね」
 東も不思議に思う。
 一瞬眠りに落ちた感覚しかない。

「私の血を飲みましたでしょ…?」

 すくっと、いつの間にか八尾比丘尼が春子の隣に立って見下ろしていた。
「そうだね。
 君に肉を押し付けられた時、血を少し舐めちゃった程度なんだけど…」
「それで甦ったのですわ。」
 口元に袖を当てて微笑む。
 その仕草は品があった。
 東も微笑んで、

「偶然な事だけど、ありがとう助かったよ。」
 ふふっと二人微笑み合う。
 それは前世の記憶でもよくあった事だと思った。
 春子はなんだか親しげに微笑み合う、二人にムカムカする。
 心に黒い感情的を初めて抱く。
 
「わ、私の婚約者ですのよ!
 親しくなさらないで!」
 春子の感情はヤキモチというものだった。
 敵意むき出しの春子に余裕に微笑み、

「お初目にかかりますわ。
 祈り姫宮春子女王殿下……」
 優雅に丁寧にお辞儀された。

 八尾比丘尼の尼装束に美しい容姿に、優雅で気品のある振る舞いに怒りが消える。
 春子はぽーっと、見とれてしまった。
 自分には持ってない気品。
 正直憧れるが、八尾比丘尼に、人差し指を向けて宣言する。

「前世の恋人かもしれませんが!今世は私の、フィアンセですのよ!」
 東から八尾比丘尼が前世の恋人だと聞いていたので警戒する。
 こんな素敵な女性は東の好みだと直感が働く。

「存じております。春子女王殿下のような素晴らしく可愛いお方が妃になりましたら、東さまの前世からの浮気症を克服させることができますでしょうね。」
 世辞混じりで前世からの悪癖をバラす。

「前世から浮気症でしたのね!」
「今もだけどね。女の子たちはみんな好きだよ」
 東は悪びれもせずに事も無げに微笑み言う。
 だから、余裕で九尾の狐の葛葉子に近づき首筋にまでキスもしてしまう。
 それは封印のためと瑠香の反応を見たかったのもあるが……それで、心臓を貫かれた。
 自業自得とはこの事だなと思った。
 春子はジトッと東を睨み、
「東様…私がきちっと指導申し上げますから覚悟なさいませ…」
 東は苦笑した。

「それにしても、どこか私達似てますわね?」
「そうですね。」
 言葉遣いなのではと思うが、
「私、尊敬申し上げている親しい方には『お姉さま』と申し上げておりますの。
 八尾お姉さまと呼んでよろしいですか?」
「よろしくてよ、春子さま」
 姉ならば畏まった言い方をしない八尾比丘尼だった。
 二人は同時に微笑み合った。
 何故か二人は惹かれるものがありすんなり仲良くなってしまったらしい… 
「それにしても、どうして宮中に入ってこれたの?あやかしは入れない結界貼ってあったはず…」
「内側からなら入れましてよ。陰陽寮に葛葉子たちをお送りしました時に襖に私の異界と繋げてありましたので……」
 なるほどと納得がいった。
「あなた達の熱い人生を見届ける義務がありますしね…」
 八尾比丘尼は瑠香を見つめて微笑んだ。


びーびーっ

 と、無線の振動がしてズボンのポケットにいれていた小型の無線機をとる。

「東!聞こえるか!宮中にあやかしの天守閣ができあがってしまったぞ!」
 兄の景皇太子が焦り怒鳴るように言った。

「えっ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...