あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

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あやかしと神様の黄泉がえり

21☆審神者としての落とし前

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 急いで外に出ると、広大な皇居の半分を禍々しい赤と黒に不気味に輝く城がそびえ立つ。

「まぼろし?」
 禍々しい城は赤と黒に蜃気楼の様に揺らめくいて紙のようにも、みえなくはない不気味さがあった。

「九尾の狐殿の作り出した異界ですわ…幸いなことに霊感のないものには見せませんが…」
 八尾比丘尼はそう言い顔を曇らせる。
「少しでも触れれば魂を吸い取られて死に至るか……」
 続きを陰陽寮長が紡ぐ。

 空は禍々しい雲が夜空の僅かな星の光をかくし、青白い光が飛び交っていた。
 昔の恵土えど城と言われたものに似ている。
 それは皇居宮中を覆いかぶさるように、ビルよりも高くそびえ立つ禍々しい色
をした城ができあがる。

 しかも、門からは黒い瘴気が吹き出してゾクリと寒気が体の体温を奪おうと絡みつく。

「「もう限界だ。これ以上騒ぎを大きくしてはならない。」」
「兄上、もう命令を出すの?」
「当たり前だろうがっ!」
といって切られた。
 景皇太子は責任感が強く気が短い。

 景皇太子はよりすぐりの太刀の者達にいよいよ討伐を整列させてた。
 規律正しく片膝をつき景皇太子に頭を下げる。
 退魔の太刀の者は年齢は様々で突然呼びだされたものもいて制服姿の学生もいる。
 だが皆皇室を敬愛する者達だった。
 あの天守閣は陛下を見下し、更には陛下の大御宝である国民を私物化して支配しようと貶めようとするあやしのものだ。

 景皇太子は太刀の者たちを信頼し命じる。
 
「宮中に我が国民を見下すような天守閣を出現させた九尾の狐、瘴気を殲滅せよ!」

 退魔の太刀を持つものはあやかしを恐れない。
 霊感はそれぞれだが、太刀が主を守り力を与える神の化身そのものでもある。

 その中にひときわ若いセーラー服を着た少女は討伐に向かう途中、木に引っかかっている狩衣を着た少年…晴房を助けた。
 晴房は瞳を擦ると、

「我が、めがみ……?」
 とつぶやいた。
 そこで、晴房の意識は途切れて、子供のくせに大人のように苦笑いし、

「……ソナタがいると我が計画した宿命が頓挫されかねんからな。眠れ…」
 晴房が女神と読んだ少女はその場に眠りについてしまった。
 少女の事は刀が守るだろうと思うとハルの神を宿した晴房は空を飛び陛下が祈られている宮殿の方角に向かった。

「兄上の精鋭部隊は九尾の狐をも退治してしまうかも……」
 東は顎に手を当てて難しい顔をする。
 それでは瑞兆を出現させるどこではない。

「……まぁ…こんだけ騒ぎを起こしたんだから九尾の狐は退治されてしまうのは仕方ないのかな…残念だけど……」
 東は落胆して言う…
 これはもう国の一大事だ。
 もしかして霊感の強い者がいるテレビ関係者もこの騒ぎを聞きつけてカメラに残そうとするかもしれない。
 レッドスパイの中にも桔梗のような宗教家のような部署があるなら凶兆だといって騒ぎを大きくするチャンスを与えてしまった可能性もある。
 景皇太子が最初に提案したように討伐を速やかにすることが良策だったことになってしまった……
 もう遅いが……

 東は過信していた。
 そのことに後悔する。
 なんとか、自分の中にある阿闍梨の魂の知識を力を使って事を収めたかった。
 やはり、力不足だなと苦しいほど反省した。

「貴方様はまだ十七才になられた未熟な身精進なさいませ」
「そうだね…ありがとう八尾比丘尼…」
 慰めに感謝する。
 前世は百近くまで生きたのだから……
 当時の力に追いつくまで時間はかかるか…と思う。

「せめて、瑞兆となさなくても葛葉子を取り戻したかったね…」
 東は諦めモードに入っていると思うと春子は東の背中を思いっきり、バンッ!と叩き、

「葛葉子姉様は、絶対に瑞兆に成られます!
 無事に戻ってきます!ですから…諦めてはいけません!」
 涙をためて東の態度を諌める。
 春子は八尾比丘尼と違い甘くない、諦めず未来に希望を持っている。

「そうだね、弱気はだめだね。
 なんか勇気が湧いてきた…」
「ふふ、春子さまはお強い方ですわね。それにさすが祈り姫…」
 春子の言霊は諦めや絶望の中でも希望を与える力があることをこの場にいる者たちは感じた。

「オレがやります…葛葉子を取り戻して瑞兆にします!」

 葛葉子がいるだろう天守閣を黙って東と同じことを考えて反省と後悔に胸が潰されそうになっていた。
 前世の記憶なんかない、今を生きる若者にとって戸惑どうしたらと悩むばかりだった。
 審神者なのに…
 葛葉子の事を分かっていて宮中にいれてしまった事…
 力不足だったこと…
 九尾の狐になってしまっても葛葉子を切り捨てられないほど愛している心を止められない葛藤…
 
 けれど春子の絶対の葛葉子を思う言霊が瑠香の心に迷いを消した。

「それが出来なかったら?」
意地悪ではなく、素で東は尋ねる。
「誰にも…葛葉子を触れさせません……」
「それは葛葉子を霊的に生まれ変わらせるという事?」
 辛い決断になることを聞く。
 瑠香は何も言わず微笑み、

「……陛下の庭を清め神を見定める審神者として落とし前をつけます。」

 それは、命に変えてでも愛しいものの体を使い尊い皇の国を穢したものを消すと決意した。

 葛葉子は穢を恐れて自分に触れることを嫌がった……
 そんな葛葉子が戻った時葛葉子自身壊れてしまう…
 ならば、審神者として愛しい恋人の清めは自分がやるしかない…

 だけど、そんな暗い未来は威津那が見る未来。
 瑠香の望む未来は明るい未来だ!
「いえ、絶対に葛葉子を白狐に戻して瑞兆としてみせます!」
 自信たっぷりに宣言してみせた。
「その粋だよ。頑張ってね。葛葉子を救えるのは瑠香しかいないんだからね」
 東もやっと暗い顔をやめてにっこり微笑んだ。
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