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第四章
親友 其の一
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それは一瞬の出来事だった。
道路に飛び出す一匹の猫が視界に入り、俺は咄嗟にハンドルを切ってしまった。
目の前はガードレール。
俺の身体はバイクから投げ出され宙を舞う。
死ぬ直前、人は走馬灯を見ると言うが、今がまさにそれなんだろう。
子供の頃からの思い出が、脳裏を駆け巡っては消えていく。
これまでの人生、俺は真面目に生きただろうか。
真剣に何かをしようとしたことはあっただろうか。
遠くから俺を呼ぶような猫の鳴き声が聞こえた。
ああ……無事だったのか。
その声を聞きながら……俺は意識を手放した。
◇◇◇◇
「室世君、これを斎堂寺に持って行ってくれないかな」
仕事が一段落するタイミングを見計らったように、編集長はそう言って私に紙袋を差し出してきた。
いつもより大きめの紙袋。
中には人形や古いお皿が入っているようだった。
「分かりました。それじゃあこれから斎堂寺へ行って、除霊してもらってきますね」
私はそう返事し、ニコニコと笑顔を向ける彼から紙袋を受け取った。
「癒見やん、時間も時間やから直帰してかまへんで~」
向かいの席に座る間柴さんが、編集長と同じように笑みを向けながら私に声を掛けてくる。
「そうだね、時間がかかると思うから帰ってこなくていいからね。事故らないよう、気を付けて行ってくるんだよ?」
二人は互いに目配せしたかと思うと、うんうんと頷いた。
「……? 分かりました」
二人の表情に違和感を感じつつ、お疲れ様ですと声を掛けながら、私は編集部を後にした。
道路に飛び出す一匹の猫が視界に入り、俺は咄嗟にハンドルを切ってしまった。
目の前はガードレール。
俺の身体はバイクから投げ出され宙を舞う。
死ぬ直前、人は走馬灯を見ると言うが、今がまさにそれなんだろう。
子供の頃からの思い出が、脳裏を駆け巡っては消えていく。
これまでの人生、俺は真面目に生きただろうか。
真剣に何かをしようとしたことはあっただろうか。
遠くから俺を呼ぶような猫の鳴き声が聞こえた。
ああ……無事だったのか。
その声を聞きながら……俺は意識を手放した。
◇◇◇◇
「室世君、これを斎堂寺に持って行ってくれないかな」
仕事が一段落するタイミングを見計らったように、編集長はそう言って私に紙袋を差し出してきた。
いつもより大きめの紙袋。
中には人形や古いお皿が入っているようだった。
「分かりました。それじゃあこれから斎堂寺へ行って、除霊してもらってきますね」
私はそう返事し、ニコニコと笑顔を向ける彼から紙袋を受け取った。
「癒見やん、時間も時間やから直帰してかまへんで~」
向かいの席に座る間柴さんが、編集長と同じように笑みを向けながら私に声を掛けてくる。
「そうだね、時間がかかると思うから帰ってこなくていいからね。事故らないよう、気を付けて行ってくるんだよ?」
二人は互いに目配せしたかと思うと、うんうんと頷いた。
「……? 分かりました」
二人の表情に違和感を感じつつ、お疲れ様ですと声を掛けながら、私は編集部を後にした。
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