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第四章
親友 其の二
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住宅街に差し掛かると、五時を知らせるアナウンスと共に、懐かしい音楽が流れてくる。
子供たちは楽しそうに笑い合いながら、私の横をすり抜け家路へと急ぐ。
透明なビニールバックを持って走る、その後ろ姿を目で追う。
プール帰りなのか、髪が少し濡れているようだった。
(子供は夏休みがあっていいよねぇ……)
毎年そんな事を考えながら、あっという間に夏は過ぎ去っていく。
「………」
だけど……今年は違う。
久しぶりに海に行って……
旅館に泊まって……
そして……
「――っ」
私はそっと首元に手を当てる。
栄慶さんに付けられたキスマーク……
まだ跡が微かに残ってる。
「栄慶さんの馬鹿」
私はボソリと呟いた。
周囲に気づかれないよう今はコンシーラーで隠してはいるが、編集長と間柴さんにはもう見られてしまっている。
そして二人は毎日のように私に気づくと首元に視線を移し、面白そうに目配せしながらニヤニヤと笑みを向けてくるのだ。
もう、噂好きの女子か! って思うくらい!!
二人とも増刊号の編集で忙しいんだから、私の事なんて放っておけばいいのにっ
そしてさすがに四日もそんな事が続くと、私の我慢も限界にきてしまって……
「栄慶さんの馬鹿――っ!! 綺麗に跡が消えるまで斎堂寺には行きませんから――っっ」
と、呑気に電話をしてきた発端の彼に怒りをぶつけてしまった。
(だって……電話がかかってきたと思ったら、開口一番「旨い茶菓子はないのか?」なんだものっ!)
べ、別に付けられたのが嫌だとかそんな事は思ってないけど、あまりに栄慶さんの態度が普段通りすぎたせいもあってか、つい鬱憤を晴らすかのように叫んでしまったわけで……。
それに、どうせ三、四日もすれば消えてなくなるだろうと安易に考えていた部分もある。
だけどまさか……
「10日経っても消えないなんて」
子供たちは楽しそうに笑い合いながら、私の横をすり抜け家路へと急ぐ。
透明なビニールバックを持って走る、その後ろ姿を目で追う。
プール帰りなのか、髪が少し濡れているようだった。
(子供は夏休みがあっていいよねぇ……)
毎年そんな事を考えながら、あっという間に夏は過ぎ去っていく。
「………」
だけど……今年は違う。
久しぶりに海に行って……
旅館に泊まって……
そして……
「――っ」
私はそっと首元に手を当てる。
栄慶さんに付けられたキスマーク……
まだ跡が微かに残ってる。
「栄慶さんの馬鹿」
私はボソリと呟いた。
周囲に気づかれないよう今はコンシーラーで隠してはいるが、編集長と間柴さんにはもう見られてしまっている。
そして二人は毎日のように私に気づくと首元に視線を移し、面白そうに目配せしながらニヤニヤと笑みを向けてくるのだ。
もう、噂好きの女子か! って思うくらい!!
二人とも増刊号の編集で忙しいんだから、私の事なんて放っておけばいいのにっ
そしてさすがに四日もそんな事が続くと、私の我慢も限界にきてしまって……
「栄慶さんの馬鹿――っ!! 綺麗に跡が消えるまで斎堂寺には行きませんから――っっ」
と、呑気に電話をしてきた発端の彼に怒りをぶつけてしまった。
(だって……電話がかかってきたと思ったら、開口一番「旨い茶菓子はないのか?」なんだものっ!)
べ、別に付けられたのが嫌だとかそんな事は思ってないけど、あまりに栄慶さんの態度が普段通りすぎたせいもあってか、つい鬱憤を晴らすかのように叫んでしまったわけで……。
それに、どうせ三、四日もすれば消えてなくなるだろうと安易に考えていた部分もある。
だけどまさか……
「10日経っても消えないなんて」
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