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第三章「騎士と姫と魔法使い」
第3話「王宮への招待」
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「場所。移した方が良いですか?」
唐突に切り出してきたヴェルノにアーネストはそう返し、一度アルミメイアの方へ目を向ける。ヴェルノはそれに対して首を振って答えを返した。
「聞かれて困るような事じゃねえから、ここで構わない」
「そう、ですか」
「お前、夏季休暇はどう過ごすかって、もう決まっているか?」
「いえ、特には……」
予定を尋ねられ、折角の長期休暇だと言うのに予定が何もないという事が少し恥ずかしく思え、アーネストはヴェルノから視線を外し、はぐらかすように答える。その事が少しおかしかったのか、ヴェルノは小さく笑う。
「まあ、なら、ちょうどいいや。予定が空いているなら、お前に頼みたいことがある」
「頼みたいことですか……」
「ああ。今、王宮なんかで貴族たちの晩餐会なんかが行われているのは、お前でも知っているよな」
「晩餐会……社交界ですか?」
「ああ、そうだ。それの警備の人員が不足しているみたいでな、知り合いの衛兵団長からどうにかできないかって頼まれたんだ」
「衛兵団。王宮の警備ですか?」
「たぶんそうだろうな。この時期は、竜騎士達が王宮の晩餐会や武闘大会に出る様になるからな。人が集中するんだと」
「王宮……」
アーネストはその言葉を小さく呟き、静かに考え込む。
王宮へは何らかの形で赴かなければならないと思っていた。どのような成果があるか分からない。けれど、国の政治の中枢という形式上、この国で何かを変えたいと思うなら、どうしたってそこに集まる人との関係が必要となってくるように思えた。
「期間は明後日から、社交界が終わりを見せるまで、夏季休暇の半分以上がこれに取られることに成る。だから、気が進まない様なら、断ってくれて構わない」
口を閉ざし、考え込んだアーネストから、否定的な意を読み取ったのか、ヴェルノがそう補足する。
「いえ、大丈夫です。その仕事受けたいと思います」
「そうか。助かる」
アーネストの返事にヴェルノはそっと胸を撫で下ろす。
「ただ、ちょっとお願いがあるのですが……」
アーネストは一度アルミメイアに目を向けてから、切り出す。目を向けられたアルミメイアは、話の意図が分からなかったのか、首を傾げる。
ヴェルノはアーネストに話してみろと言う様に、先を促す。
「アルミメイアを……この子を傍に置く様な事って出来ませんか?」
アーネストの頼みに、ヴェルノは渋い顔をする。
王宮は特別な場であり、国の要人が集まる場所。竜騎学舎も同様なところが有るが、王宮はそれ以上に一般人なんかは容易に立ち入っていい場所では無い。出自不明のアルミメイアの立ち入りが簡単に許可されるなどという事はまずない。
アーネスト一人が王宮へ赴く形でもよかったが、アーネストの知らない事、立場の違いからくる見方の違いなどで、アルミメイアが傍に居た方が良い様に思えた。
「さすがにそれは、俺だけでどうこうは出来ないな……どうしてもって言うのなら、衛兵団長に相談してみた方が良いな」
「そうですね。そうしてみます」
「まあ、お前の関係者って事である程度融通はしてくれるだろう。じゃあ、よろしく頼むぞ」
ヴェルノは大きな手をアーネストの頭の上に乗せ、少し乱暴に撫でる。アーネストはそれを嫌そうに振り払う。
「要件は、以上ですか?」
「ああ、それじゃあ、飯でも食いに行くか」
ヴェルノはそう答え、手を差し出してくる。アーネストはその手を取り、立ち上がる。
そして、適当な話を挟みながら、昼食のためその場を後にして行った。
「さっきの話。私の名前が出ていたみたいだけど、何の話だ?」
昼食を取るために、適当に向かうべき店を見繕い、そこへ向かう道すがらアルミメイアが尋ねてくる。
「ああ、悪い。勝手に話を決めてしまって」
「それは別にいい。いや、良くないけど。で、何の話だったんだ?」
「王宮の警備を頼まれた。で、しばらく王宮にいる事になるから、お前を一緒に連れていけないかって、聞いていたんだ」
「王宮に? なんでだ?」
アルミメイアは首を傾げる。王宮に行く意味が、あまり深く理解できていないのだろう。
「王宮は、この国の王が住み、この国の動かす有力貴族が集う場所だ。直接会って話をすることは出来ないだろうけど、彼らの考えや、この国の現状をもっとよく知れると思う。
聞いた話だけど、多くには出回っている歴史書には書かれていない内容の歴史資料なんかが有るって話だ。
お前の抱える疑問への答えが、何かしら得られるかもしれない」
「なるほど。そう言う事か」
アーネストの返答を聞き、ようやく理解に至ったのか、アルミメイアはうなずき、目を閉じ少しの間考え込む。
そして、アルミメイアは顔を上げ、アーネスト達が歩く街の大通りから見上げる事の出来る、王宮――ハーティス宮殿へと目を向け、彼女の首に下げられたネックレスを握りしめた。
唐突に切り出してきたヴェルノにアーネストはそう返し、一度アルミメイアの方へ目を向ける。ヴェルノはそれに対して首を振って答えを返した。
「聞かれて困るような事じゃねえから、ここで構わない」
「そう、ですか」
「お前、夏季休暇はどう過ごすかって、もう決まっているか?」
「いえ、特には……」
予定を尋ねられ、折角の長期休暇だと言うのに予定が何もないという事が少し恥ずかしく思え、アーネストはヴェルノから視線を外し、はぐらかすように答える。その事が少しおかしかったのか、ヴェルノは小さく笑う。
「まあ、なら、ちょうどいいや。予定が空いているなら、お前に頼みたいことがある」
「頼みたいことですか……」
「ああ。今、王宮なんかで貴族たちの晩餐会なんかが行われているのは、お前でも知っているよな」
「晩餐会……社交界ですか?」
「ああ、そうだ。それの警備の人員が不足しているみたいでな、知り合いの衛兵団長からどうにかできないかって頼まれたんだ」
「衛兵団。王宮の警備ですか?」
「たぶんそうだろうな。この時期は、竜騎士達が王宮の晩餐会や武闘大会に出る様になるからな。人が集中するんだと」
「王宮……」
アーネストはその言葉を小さく呟き、静かに考え込む。
王宮へは何らかの形で赴かなければならないと思っていた。どのような成果があるか分からない。けれど、国の政治の中枢という形式上、この国で何かを変えたいと思うなら、どうしたってそこに集まる人との関係が必要となってくるように思えた。
「期間は明後日から、社交界が終わりを見せるまで、夏季休暇の半分以上がこれに取られることに成る。だから、気が進まない様なら、断ってくれて構わない」
口を閉ざし、考え込んだアーネストから、否定的な意を読み取ったのか、ヴェルノがそう補足する。
「いえ、大丈夫です。その仕事受けたいと思います」
「そうか。助かる」
アーネストの返事にヴェルノはそっと胸を撫で下ろす。
「ただ、ちょっとお願いがあるのですが……」
アーネストは一度アルミメイアに目を向けてから、切り出す。目を向けられたアルミメイアは、話の意図が分からなかったのか、首を傾げる。
ヴェルノはアーネストに話してみろと言う様に、先を促す。
「アルミメイアを……この子を傍に置く様な事って出来ませんか?」
アーネストの頼みに、ヴェルノは渋い顔をする。
王宮は特別な場であり、国の要人が集まる場所。竜騎学舎も同様なところが有るが、王宮はそれ以上に一般人なんかは容易に立ち入っていい場所では無い。出自不明のアルミメイアの立ち入りが簡単に許可されるなどという事はまずない。
アーネスト一人が王宮へ赴く形でもよかったが、アーネストの知らない事、立場の違いからくる見方の違いなどで、アルミメイアが傍に居た方が良い様に思えた。
「さすがにそれは、俺だけでどうこうは出来ないな……どうしてもって言うのなら、衛兵団長に相談してみた方が良いな」
「そうですね。そうしてみます」
「まあ、お前の関係者って事である程度融通はしてくれるだろう。じゃあ、よろしく頼むぞ」
ヴェルノは大きな手をアーネストの頭の上に乗せ、少し乱暴に撫でる。アーネストはそれを嫌そうに振り払う。
「要件は、以上ですか?」
「ああ、それじゃあ、飯でも食いに行くか」
ヴェルノはそう答え、手を差し出してくる。アーネストはその手を取り、立ち上がる。
そして、適当な話を挟みながら、昼食のためその場を後にして行った。
「さっきの話。私の名前が出ていたみたいだけど、何の話だ?」
昼食を取るために、適当に向かうべき店を見繕い、そこへ向かう道すがらアルミメイアが尋ねてくる。
「ああ、悪い。勝手に話を決めてしまって」
「それは別にいい。いや、良くないけど。で、何の話だったんだ?」
「王宮の警備を頼まれた。で、しばらく王宮にいる事になるから、お前を一緒に連れていけないかって、聞いていたんだ」
「王宮に? なんでだ?」
アルミメイアは首を傾げる。王宮に行く意味が、あまり深く理解できていないのだろう。
「王宮は、この国の王が住み、この国の動かす有力貴族が集う場所だ。直接会って話をすることは出来ないだろうけど、彼らの考えや、この国の現状をもっとよく知れると思う。
聞いた話だけど、多くには出回っている歴史書には書かれていない内容の歴史資料なんかが有るって話だ。
お前の抱える疑問への答えが、何かしら得られるかもしれない」
「なるほど。そう言う事か」
アーネストの返答を聞き、ようやく理解に至ったのか、アルミメイアはうなずき、目を閉じ少しの間考え込む。
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