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15.探索者交流会
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15.探索者交流会
あぁ………ついにこの日がやってきてしまった。そう、探索者交流会の日だ。
この間【骨骨の洞窟】最下層20階のスケルトン将軍を倒した後、何かいい物が宝箱から出ないかなと周回してみたがたいしたものは出なかった。
鉄の鎧に鉄の丸盾に鉄の剣に、今の自分には使えない装備ばっかりでた。まぁお陰でGPはかなり潤ったけれども、今では8000GPちょっとある。
鉄の装備シリーズがそこそこのGPになった、それに比べてスケルトン将軍の骨と魔石は合わせて120GPにしかならなかった。
一応全部GPに変えずに一部の装備品はダンジョン協会へ売却したんだけれど、これがいいお小遣いになった。
どうやらスケルトン将軍の鉄装備シリーズは普通の鉄とは違い不思議鉱石で出来ているらしい。見た目は完全に鉄っぽいのにね。
鎧で2万、剣で8万、兜で1万、手甲で5千円、下半身全部で2万と微妙にだがいいお金になった。なぜ鎧などは安くて剣だけが高いのかって所だけれど、どうやら鎧などはサイズの問題から一度溶かして作り直す必要があるが、剣はそのまま使えるので少し高めで買い取ってくれるらしい。
溶かして作り直す手間がかかる分安く買い取られてしまうってわけだな。
後は宝箱から出た装備のうち、いくつかは特殊効果付きだった。防御力が上がったり、剣なら切れ味増加などの比較的わかりやすい性能ばかりだ。
特殊効果付きの場合買い取り額が一気に上がり、鎧など兜手甲などの部位はだいたい10万以上で買い取って貰えた、剣に至っては30万で売れたほどだ。
サイズの問題で一度溶かさないといけないはずの鎧がなぜ高く買い取って貰えるかというと、溶かしてインゴットにしてもその特殊効果は消えないかららしい。なので溶かす前に効果を調べて、同じ効果のインゴットを集めて作り直すとかもするみたい。
因みに特殊効果付きの装備をGPに変えると売却額が高くなったのでお得みたいだ、そのせいで?余計にGPに変えるべきかお金にするべきか悩む事になった。GPへ変える際に特殊効果付きかどうかの判断ができてちょっとした鑑定の真似事が出来る事が分かったのは嬉しいが。
ぽーん『間もなく目的地です、お忘れ物の無いようお気を付けください』
自動運転タクシーが目的地への到着を知らせてくる。どうやらもうすぐ着くようだ、いつもは持ち物を全て【空間庫】へ入れているが、今回は人前では【空間庫】を使わないつもりなので銃などはケースにいれて持って来ている。
防具も入っているので結構な大荷物になってしまった。
タクシーの『目的地に到着しました』の音声を聞いてから指輪型ライセンスでお金を支払い荷物を持って降りる。
今日やって来たのはDランクダンジョンの【週末の夜】だ、終末じゃないぞ週末だ。なぜ【週末の夜】という名前のダンジョンかというと、ここは土日にものすごく混む人気ダンジョンだからだ。平日はその他のダンジョンと大差ないのだが週末の夜だけ物凄く混む。
理由としてはここがDランクダンジョンで世界的に探索者として活動している人数が多いランク帯のダンジョンというのと、ここで出る魔物が素材としての価値が高いのと採取物の素材も高く買い取られているってこと。
さらに一番の理由はここのダンジョンが週末の夜になるとその魔物と採取物の出現率が大幅にあがることだ。
具体的には倒した傍から新しい魔物が出るし、採取物は採って数分すればまた出現する。
そんなにいっぱい採れるなら供給が多すぎて買い取り額が下がるんじゃないかと思われそうだが、実際には需要がそれ以上にあるのでどれだけ採っても買い取り額が下がらない。
「えーっと確か待ち合わせは会議室3だったよな?」
携帯を開いてダンジョン協会から来ているメールを開く、内容は探索者交流会の日時と場所が書いてある。
【週末の夜】ダンジョン横の協会支部へと入りそのまま建物内を歩き会議室が集められている2階へと上がっていく。階段を上りきると『探索者交流会の集合場所はこちら』の案内板と矢印があったのでそれに従って歩いていくと無事会議室3を見つけれた。
会議室は大きめの支部なら必ずついているもので主に探索者のPTが打ち合わせにつかったりなどが多いが今回みたいにダンジョン協会が主催するイベントなどでもよく使われる。
会議室3の扉を開き中へ入る、15畳ほどの部屋に大きな机が中央にひとつ、椅子もそれなりの数があり入口すぐの壁にはホワイトボードが取り付けられている。
会議室内には人影があり、どうやら先に来ている人がいるようだ。
「おや?神薙君じゃないか。久しぶりだね」
「おはようございます、新井さん久しぶりですね」
新井さんだった、どうやら交流会のPTのうち一人は新井さんのようだ。知らない仲じゃないしこれは嬉しい。
「きゅ!」
「ムンちゃんも久しぶり、元気にしてた?」
新井さんの召喚獣である狐のムンちゃんが近寄ってきてくれたのでしゃがんで撫でる、相変わらずふわふわでいい撫で心地だ。
新井さんと【骨骨の洞窟】で何回も会う内にムンちゃんとも撫でさせてもらえるぐらいには仲良くなった。
「いやぁ知り合いがいてほっとしたよ、この歳になって恥ずかしい話だけれど何度経験しても知らない人と会うのは緊張しちゃってね」
「俺もですよ、新井さんがいてよかった。それにしても早いですね、集合時間まで時間があるのに」
まだ集合時間まで15分ぐらいある。
「会社員時代の癖が抜けなくてね、どうしても早め早めに行動しちゃうんだよ。もうしなくていいって分かってるんだけれどね」
「なるほど、職業病って事ですか」
「まぁ、そうとも言うね。そうだ!この機会に連絡先を交換しないかい?」
「もちろん、いいですよ」
「ありがとう。この歳になってから友達が出来るとは思っていなかったよ」
少し照れくさいが俺も探索者になってから友達が出来るとは思っていなかった。
携帯を取り出し、連絡先交換モードにしてからお互いの携帯を近づける、すると自動で連絡先が交換できる。遥か昔に赤外線通信で連絡先が交換出来たそうだがそれに近いかもしれない。今まで携帯は技術の進歩で進化していって連絡先の交換の仕方も様々だが結局はこういったシンプルなのが一番やりやすい。
「ん? おはようございます」
「お、おはようございます」
新井さんと連絡先を交換し終わるとタイミングよく会議室の扉が開き女性が二人入ってきた。一人は赤髪のきりっとした顔立ちの女性、身長は170センチぐらいだろうか?モデルみたいだ。
もう一人は桃色の髪に少し幼い顔つき、こちらは身長が150センチほどで可愛らしい。
この部屋に入って来たって事は恐らく交流会でPTを組む事になる人なんだろう。
「おはようございます」
「おはようございます」
新井さんの横に並び挨拶を返す、それにしてもこの二人………どこかで見たような気がするんだけれど、どこだったっけ?う~ん、街で見かけたとかな?少なくとも知り合いにはいない。
少し微妙な空気と間が広がりシーンと静かになる、だけれど気にしているのはこちらだけなのか女性二人は挨拶を終えるとさっさと椅子へと座ってしまった。
それを見て新井さんと二人、こっちも座る事にする。
「あ、可愛い。狐?」
「えぇ、私の召喚獣のムンちゃんです。ほら、ムンちゃん挨拶して?」
「きゅ!」
桃色の髪の方の女の子がムンちゃんの存在に気づき、思わずっといった具合に声をあげた。
「わぁ…!召喚獣って事は【召喚】スキルですか?いいなぁ」
「えぇ、そうです。私は【召喚】スキル持ちですよ」
「ちょっと、香奈」
「あ、ごめんなさい!ぶしつけにスキルを聞いてしまって」
「ははは、構わないですよ。後でわかる事ですから。私は新井修二と言います、皆さんに比べると年上になるとは思いますがよろしくお願いしますね?」
「は、はい!私は雪白 香奈です今年高校生になったばかりですがよろしくお願いします!」
「私は雪白 玲奈よ、よろしく」
「あ、神薙 響です。よろしくお願いします」
何となく自己紹介の流れになったのでお互いに挨拶していった。女性二人は雪白と同じ苗字を名乗ったので多分姉妹だと思う。しかも今年新人って事は双子なのかな?
「後は教官役の人が来るんでしたか?」
「メールにはそう書いてましたね」
探索者交流会は新人探索者が4人に教官として高ランクの人が来て計5人で行くことになる。
まだ集合時間まで10分以上はあるのでまだ待つことになりそうだ。
「お二人は雪白─────」
◇ ◇ ◇ ◇
「お待たせしました」
雑談をしていると恐らく教官役であろう人がやってきた。入ってきたのは女性で年齢は20代なかばぐらいだろうか?俺から見れば大人の女性だ。
雑談は終始新井さんが話題をふってくれて話が尽きる事なく気が付けば集合時間になっていた。こういうところで経験の差がでるのか、新井さんはちゃんと大人なんだなって思う。
「教官役をすることになりました佐々野 楓です、よろしくお願いしますね。それであなたが新井さんで神薙君に雪白姉妹ね。それじゃぁ早速だけどダンジョンへ行きましょうか、詳しい話は中へ入ってからにするわ」
せっかく会議室を集合場所にしたのにここで話し合いしないのか………佐々野さんはそれだけ言うとさっさと出て行ってしまった。
「行きましょうか」
「はい」
席を立ち荷物を持ってから後を追う様にそれぞれ会議室を出る、部屋から出るのを確認すると佐々野さんは歩いていくので遅れないようについていく。
一階へ下りて、ダンジョン協会から外へ出て【週末の夜】ダンジョンがある方向へ進んでいく。
「ここで待っているから着替えてきなさい」
そう言うと佐々野さんは更衣室近くで立ち止まる。ダンジョンへ入る前に装備をしっかりして来いって事だと思う。
言われた通りにそれぞれ更衣室に入っていく。
「何だが急展開ですね」
「そうだね……もしかしたら無駄な事が嫌いな性格なのかもしれない」
男子更衣室で思わず新井さんにこぼしてしまう。佐々野さんが来てから一気に動き始めたので少し戸惑っていたのかもしれない。
新井さんと話しながらも防具であるプロテクターを付けていき、銃もケースから取り出していく。今回は〝ハンドガン〟と〝アサルトライフル〟だけ持つことにして〝ショットガン〟は【空間庫】へとしまっている。
予備のマガジンをベルトなどに入れていき、さらにリュックにも入れておく。今回は【空間庫】を使わないつもりなので事前に買い足しておいたのだ。
着替え終わり外へ出ると雪白姉妹も同じタイミングだったのか丁度出てきたところみたいだ。
「行くわよ」
佐々野さんは俺達が着替え終わったのを確認するとさっさと歩き出してそのまま止まる事なくダンジョン内へと入っていく。
ダンジョン内はフィールド型になっており草原に遠くに森が見える、上には青空が広がっており風も吹いているので外とほぼ変わらない。以前に行ったFランクダンジョンの【静寂の森】みたいな感じだ。
「ここでいいわ、それじゃぁ今回の探索者交流会の概要を話します。楽な姿勢で聞いていいわよ」
【週末の夜】ダンジョン内へ入って少し歩いた平原で立ち止まったので同じように立ち止まる。
「さっきも言ったけど改めて、私の名前は佐々野 楓、【朧月】クランのBランク探索者よ。今回貴方たちの教官役をすることになったわよろしくね」
【朧月】クラン!有名な所だ、大きなクランでよく国からの仕事なども受けていてニュースになっているのを見たことがある。そんな有名クランの中でもさらにBランクか…………
探索者として一番多いのがCとDランクの人達だ。Dランクだと普通に探索者として食べていけるぐらい、たまに旅行にでかけるぐらいにはお金が稼げる。
Cランクになるとちょっとした小金持ちになれて都心のいい所に住めるようになる。
Bランクになると10年働けば生涯資金を稼げるようになりすぐにでも探索者を引退できる。まぁBランクまで行った人が引退なんて選ぶことの方がすくないけれど。それぐらい稼げるって事だ。
ちなみに今の俺は実績が溜まってちょうどEランクになったところだ【骨骨の洞窟】ダンジョンを攻略したのが効いたっぽい。
「探索者交流会は最近の技術進歩のせいで出会いの場が無くなった探索者に、これをいい機会にしてPTの良さを知ってもらおうっていうイベントよ。まぁぶっちゃけ合コンみたいなものね」
合コン………ぶっちゃけ過ぎではないだろうか。
「これから5日間このPTで毎日行動してもらうわ、そしてさらに5日間今度はPTを変えてまたダンジョンへと行ってもらう。これを1ヵ月繰り返してもらうことになるわ。変えるのはPTだけで入るダンジョンは同じ【週末の夜】になるわ、ここまでて何か質問はある?」
1ヵ月もこれするのか………大丈夫なのか?
「はい、1ヵ月するって言ってたけれど学校はどうするの?休む事になるんだけれど今回の事にせっかくの休む機会を潰したくないんだけれど?」
雪白玲奈さんが俺も気になってた事を先んじて聞いてくれた。そうだよ、1ヵ月もするって事は今年の学校を休むチャンスが無くなるって事なんじゃ?
「安心しなさい、今回のは学校が認めている1ヵ月の休みとは別よ」
「それならいいわ」
別になるのか………ラッキー。
「それじゃぁ次はそれぞれの得意武器と戦い方を教えてもらうわ、それを聞いて編成を考えるから。それじゃぁ新井さんから」
「はい、私の戦い方は召喚獣であるムンちゃん─────」
あぁ………ついにこの日がやってきてしまった。そう、探索者交流会の日だ。
この間【骨骨の洞窟】最下層20階のスケルトン将軍を倒した後、何かいい物が宝箱から出ないかなと周回してみたがたいしたものは出なかった。
鉄の鎧に鉄の丸盾に鉄の剣に、今の自分には使えない装備ばっかりでた。まぁお陰でGPはかなり潤ったけれども、今では8000GPちょっとある。
鉄の装備シリーズがそこそこのGPになった、それに比べてスケルトン将軍の骨と魔石は合わせて120GPにしかならなかった。
一応全部GPに変えずに一部の装備品はダンジョン協会へ売却したんだけれど、これがいいお小遣いになった。
どうやらスケルトン将軍の鉄装備シリーズは普通の鉄とは違い不思議鉱石で出来ているらしい。見た目は完全に鉄っぽいのにね。
鎧で2万、剣で8万、兜で1万、手甲で5千円、下半身全部で2万と微妙にだがいいお金になった。なぜ鎧などは安くて剣だけが高いのかって所だけれど、どうやら鎧などはサイズの問題から一度溶かして作り直す必要があるが、剣はそのまま使えるので少し高めで買い取ってくれるらしい。
溶かして作り直す手間がかかる分安く買い取られてしまうってわけだな。
後は宝箱から出た装備のうち、いくつかは特殊効果付きだった。防御力が上がったり、剣なら切れ味増加などの比較的わかりやすい性能ばかりだ。
特殊効果付きの場合買い取り額が一気に上がり、鎧など兜手甲などの部位はだいたい10万以上で買い取って貰えた、剣に至っては30万で売れたほどだ。
サイズの問題で一度溶かさないといけないはずの鎧がなぜ高く買い取って貰えるかというと、溶かしてインゴットにしてもその特殊効果は消えないかららしい。なので溶かす前に効果を調べて、同じ効果のインゴットを集めて作り直すとかもするみたい。
因みに特殊効果付きの装備をGPに変えると売却額が高くなったのでお得みたいだ、そのせいで?余計にGPに変えるべきかお金にするべきか悩む事になった。GPへ変える際に特殊効果付きかどうかの判断ができてちょっとした鑑定の真似事が出来る事が分かったのは嬉しいが。
ぽーん『間もなく目的地です、お忘れ物の無いようお気を付けください』
自動運転タクシーが目的地への到着を知らせてくる。どうやらもうすぐ着くようだ、いつもは持ち物を全て【空間庫】へ入れているが、今回は人前では【空間庫】を使わないつもりなので銃などはケースにいれて持って来ている。
防具も入っているので結構な大荷物になってしまった。
タクシーの『目的地に到着しました』の音声を聞いてから指輪型ライセンスでお金を支払い荷物を持って降りる。
今日やって来たのはDランクダンジョンの【週末の夜】だ、終末じゃないぞ週末だ。なぜ【週末の夜】という名前のダンジョンかというと、ここは土日にものすごく混む人気ダンジョンだからだ。平日はその他のダンジョンと大差ないのだが週末の夜だけ物凄く混む。
理由としてはここがDランクダンジョンで世界的に探索者として活動している人数が多いランク帯のダンジョンというのと、ここで出る魔物が素材としての価値が高いのと採取物の素材も高く買い取られているってこと。
さらに一番の理由はここのダンジョンが週末の夜になるとその魔物と採取物の出現率が大幅にあがることだ。
具体的には倒した傍から新しい魔物が出るし、採取物は採って数分すればまた出現する。
そんなにいっぱい採れるなら供給が多すぎて買い取り額が下がるんじゃないかと思われそうだが、実際には需要がそれ以上にあるのでどれだけ採っても買い取り額が下がらない。
「えーっと確か待ち合わせは会議室3だったよな?」
携帯を開いてダンジョン協会から来ているメールを開く、内容は探索者交流会の日時と場所が書いてある。
【週末の夜】ダンジョン横の協会支部へと入りそのまま建物内を歩き会議室が集められている2階へと上がっていく。階段を上りきると『探索者交流会の集合場所はこちら』の案内板と矢印があったのでそれに従って歩いていくと無事会議室3を見つけれた。
会議室は大きめの支部なら必ずついているもので主に探索者のPTが打ち合わせにつかったりなどが多いが今回みたいにダンジョン協会が主催するイベントなどでもよく使われる。
会議室3の扉を開き中へ入る、15畳ほどの部屋に大きな机が中央にひとつ、椅子もそれなりの数があり入口すぐの壁にはホワイトボードが取り付けられている。
会議室内には人影があり、どうやら先に来ている人がいるようだ。
「おや?神薙君じゃないか。久しぶりだね」
「おはようございます、新井さん久しぶりですね」
新井さんだった、どうやら交流会のPTのうち一人は新井さんのようだ。知らない仲じゃないしこれは嬉しい。
「きゅ!」
「ムンちゃんも久しぶり、元気にしてた?」
新井さんの召喚獣である狐のムンちゃんが近寄ってきてくれたのでしゃがんで撫でる、相変わらずふわふわでいい撫で心地だ。
新井さんと【骨骨の洞窟】で何回も会う内にムンちゃんとも撫でさせてもらえるぐらいには仲良くなった。
「いやぁ知り合いがいてほっとしたよ、この歳になって恥ずかしい話だけれど何度経験しても知らない人と会うのは緊張しちゃってね」
「俺もですよ、新井さんがいてよかった。それにしても早いですね、集合時間まで時間があるのに」
まだ集合時間まで15分ぐらいある。
「会社員時代の癖が抜けなくてね、どうしても早め早めに行動しちゃうんだよ。もうしなくていいって分かってるんだけれどね」
「なるほど、職業病って事ですか」
「まぁ、そうとも言うね。そうだ!この機会に連絡先を交換しないかい?」
「もちろん、いいですよ」
「ありがとう。この歳になってから友達が出来るとは思っていなかったよ」
少し照れくさいが俺も探索者になってから友達が出来るとは思っていなかった。
携帯を取り出し、連絡先交換モードにしてからお互いの携帯を近づける、すると自動で連絡先が交換できる。遥か昔に赤外線通信で連絡先が交換出来たそうだがそれに近いかもしれない。今まで携帯は技術の進歩で進化していって連絡先の交換の仕方も様々だが結局はこういったシンプルなのが一番やりやすい。
「ん? おはようございます」
「お、おはようございます」
新井さんと連絡先を交換し終わるとタイミングよく会議室の扉が開き女性が二人入ってきた。一人は赤髪のきりっとした顔立ちの女性、身長は170センチぐらいだろうか?モデルみたいだ。
もう一人は桃色の髪に少し幼い顔つき、こちらは身長が150センチほどで可愛らしい。
この部屋に入って来たって事は恐らく交流会でPTを組む事になる人なんだろう。
「おはようございます」
「おはようございます」
新井さんの横に並び挨拶を返す、それにしてもこの二人………どこかで見たような気がするんだけれど、どこだったっけ?う~ん、街で見かけたとかな?少なくとも知り合いにはいない。
少し微妙な空気と間が広がりシーンと静かになる、だけれど気にしているのはこちらだけなのか女性二人は挨拶を終えるとさっさと椅子へと座ってしまった。
それを見て新井さんと二人、こっちも座る事にする。
「あ、可愛い。狐?」
「えぇ、私の召喚獣のムンちゃんです。ほら、ムンちゃん挨拶して?」
「きゅ!」
桃色の髪の方の女の子がムンちゃんの存在に気づき、思わずっといった具合に声をあげた。
「わぁ…!召喚獣って事は【召喚】スキルですか?いいなぁ」
「えぇ、そうです。私は【召喚】スキル持ちですよ」
「ちょっと、香奈」
「あ、ごめんなさい!ぶしつけにスキルを聞いてしまって」
「ははは、構わないですよ。後でわかる事ですから。私は新井修二と言います、皆さんに比べると年上になるとは思いますがよろしくお願いしますね?」
「は、はい!私は雪白 香奈です今年高校生になったばかりですがよろしくお願いします!」
「私は雪白 玲奈よ、よろしく」
「あ、神薙 響です。よろしくお願いします」
何となく自己紹介の流れになったのでお互いに挨拶していった。女性二人は雪白と同じ苗字を名乗ったので多分姉妹だと思う。しかも今年新人って事は双子なのかな?
「後は教官役の人が来るんでしたか?」
「メールにはそう書いてましたね」
探索者交流会は新人探索者が4人に教官として高ランクの人が来て計5人で行くことになる。
まだ集合時間まで10分以上はあるのでまだ待つことになりそうだ。
「お二人は雪白─────」
◇ ◇ ◇ ◇
「お待たせしました」
雑談をしていると恐らく教官役であろう人がやってきた。入ってきたのは女性で年齢は20代なかばぐらいだろうか?俺から見れば大人の女性だ。
雑談は終始新井さんが話題をふってくれて話が尽きる事なく気が付けば集合時間になっていた。こういうところで経験の差がでるのか、新井さんはちゃんと大人なんだなって思う。
「教官役をすることになりました佐々野 楓です、よろしくお願いしますね。それであなたが新井さんで神薙君に雪白姉妹ね。それじゃぁ早速だけどダンジョンへ行きましょうか、詳しい話は中へ入ってからにするわ」
せっかく会議室を集合場所にしたのにここで話し合いしないのか………佐々野さんはそれだけ言うとさっさと出て行ってしまった。
「行きましょうか」
「はい」
席を立ち荷物を持ってから後を追う様にそれぞれ会議室を出る、部屋から出るのを確認すると佐々野さんは歩いていくので遅れないようについていく。
一階へ下りて、ダンジョン協会から外へ出て【週末の夜】ダンジョンがある方向へ進んでいく。
「ここで待っているから着替えてきなさい」
そう言うと佐々野さんは更衣室近くで立ち止まる。ダンジョンへ入る前に装備をしっかりして来いって事だと思う。
言われた通りにそれぞれ更衣室に入っていく。
「何だが急展開ですね」
「そうだね……もしかしたら無駄な事が嫌いな性格なのかもしれない」
男子更衣室で思わず新井さんにこぼしてしまう。佐々野さんが来てから一気に動き始めたので少し戸惑っていたのかもしれない。
新井さんと話しながらも防具であるプロテクターを付けていき、銃もケースから取り出していく。今回は〝ハンドガン〟と〝アサルトライフル〟だけ持つことにして〝ショットガン〟は【空間庫】へとしまっている。
予備のマガジンをベルトなどに入れていき、さらにリュックにも入れておく。今回は【空間庫】を使わないつもりなので事前に買い足しておいたのだ。
着替え終わり外へ出ると雪白姉妹も同じタイミングだったのか丁度出てきたところみたいだ。
「行くわよ」
佐々野さんは俺達が着替え終わったのを確認するとさっさと歩き出してそのまま止まる事なくダンジョン内へと入っていく。
ダンジョン内はフィールド型になっており草原に遠くに森が見える、上には青空が広がっており風も吹いているので外とほぼ変わらない。以前に行ったFランクダンジョンの【静寂の森】みたいな感じだ。
「ここでいいわ、それじゃぁ今回の探索者交流会の概要を話します。楽な姿勢で聞いていいわよ」
【週末の夜】ダンジョン内へ入って少し歩いた平原で立ち止まったので同じように立ち止まる。
「さっきも言ったけど改めて、私の名前は佐々野 楓、【朧月】クランのBランク探索者よ。今回貴方たちの教官役をすることになったわよろしくね」
【朧月】クラン!有名な所だ、大きなクランでよく国からの仕事なども受けていてニュースになっているのを見たことがある。そんな有名クランの中でもさらにBランクか…………
探索者として一番多いのがCとDランクの人達だ。Dランクだと普通に探索者として食べていけるぐらい、たまに旅行にでかけるぐらいにはお金が稼げる。
Cランクになるとちょっとした小金持ちになれて都心のいい所に住めるようになる。
Bランクになると10年働けば生涯資金を稼げるようになりすぐにでも探索者を引退できる。まぁBランクまで行った人が引退なんて選ぶことの方がすくないけれど。それぐらい稼げるって事だ。
ちなみに今の俺は実績が溜まってちょうどEランクになったところだ【骨骨の洞窟】ダンジョンを攻略したのが効いたっぽい。
「探索者交流会は最近の技術進歩のせいで出会いの場が無くなった探索者に、これをいい機会にしてPTの良さを知ってもらおうっていうイベントよ。まぁぶっちゃけ合コンみたいなものね」
合コン………ぶっちゃけ過ぎではないだろうか。
「これから5日間このPTで毎日行動してもらうわ、そしてさらに5日間今度はPTを変えてまたダンジョンへと行ってもらう。これを1ヵ月繰り返してもらうことになるわ。変えるのはPTだけで入るダンジョンは同じ【週末の夜】になるわ、ここまでて何か質問はある?」
1ヵ月もこれするのか………大丈夫なのか?
「はい、1ヵ月するって言ってたけれど学校はどうするの?休む事になるんだけれど今回の事にせっかくの休む機会を潰したくないんだけれど?」
雪白玲奈さんが俺も気になってた事を先んじて聞いてくれた。そうだよ、1ヵ月もするって事は今年の学校を休むチャンスが無くなるって事なんじゃ?
「安心しなさい、今回のは学校が認めている1ヵ月の休みとは別よ」
「それならいいわ」
別になるのか………ラッキー。
「それじゃぁ次はそれぞれの得意武器と戦い方を教えてもらうわ、それを聞いて編成を考えるから。それじゃぁ新井さんから」
「はい、私の戦い方は召喚獣であるムンちゃん─────」
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