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26.新井さんとダンジョン探索
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26.新井さんとダンジョン探索
その連絡が来たのは、いつも通り朝早い時間に所有している畑の世話をしている時だった。丁度ドローンの制御端末で水やりの指示をしている時だ、携帯がメールの着信を知らせてきた。
「ん?新井さん?」
携帯を見て見ると連絡してきたのは新井さんだ、メールを開き中身を見ていく。
「一緒にダンジョン探索に行きませんか?か。いいですよっと」
メールにはもっと丁寧に挨拶から始まり、最近はどうですか?とかもあったがまぁ要約すると一緒にダンジョンに行かないかっていう誘いのメールだった。
断る理由も無いので了承の返事を送る、するとすぐに新井さんからも返事が返ってきて一緒にダンジョンへいく日にちが決定した。
「3日後か、それまでに色々準備しようかな」
普段はダンジョンへ行くのに水分補給や軽食を【空間庫】内にいれているので持ち歩かないが誰かと一緒に行動するなら持ち運べるように用意しておかないといけない。
正直新井さんには【空間庫】とかばれても問題ないとは思うんだけどね、人の事を誰かに言ったりするような人じゃないって事はまだ短い付き合いだけどそれでもそんなことはしない人だってのはわかる。
まぁ折を見て話してみるか。
◇ ◇ ◇ ◇
「神薙君!」
「新井さん!ってなんだかすごい装備ですね、何ですか?それ」
今日は、新井さんと一緒にダンジョン探索へ行く日。待ち合わせ場所であるダンジョン協会内で待っていると新井さんがやって来たのだがその姿が以前とはまったく異なっていた。
まず目に入ったのはその足元まである長いローブ、夜空のように暗い色に星のような模様がキラキラと光りを反射している。
ローブの中にはしっかりとした革鎧を着ており、背中には渋い色合いの木の棒を背負っている。
「これかい?実は宝箱から出た装備でね、自分には勿体ないかと思ったんだけれど効果がよかったから装備しているんだ」
「へぇー宝箱からそんなローブが出るんですか。あ、ムンちゃんも久しぶり。覚えてるかな?」
「きゅ!」
宝箱からそんなかっこいい装備でるなんて知らなかったなぁ、ちょっとうらやましい………そしてムンちゃんは相変わらずかわいい。前足を俺の足に乗せて立っているので撫でまわす。
以前はしていなかった大きなリボンを付けておりその可愛さに拍車がかかっている。
「あれ?新しい召喚獣ですか?タヌキ?」
ムンちゃんを撫でていると新井さんの足元、後ろからタヌキがにゅっと出てきた。毛がもっふもふですごい。
「えぇ、そうなんです。【召喚】スキルのレベルが上がって2体目を呼び出せるようになったんですよ」
「可愛いですね、名前は何て言うんですか?」
「ランちゃんって名づけました」
「いい名前ですね。ランちゃんおいで~」
「くぅん」
しゃがんで目線を下げ軽く握った手をランちゃんに向かって差し出して向こうから近づいてくるのを待つ。
鼻をひくひくさせながらたぬきのランちゃんが近づいてきたのでジッとしているとペロっと舐められたので挨拶は完了だ。ゆっくりと撫でさせてもらう。
「おぉ………たぬきって初めて触ったけどこんな感じなんだ」
狐のムンちゃんとはまた違った何とも言えない触り心地、これはこれでいいな。
「それじゃぁそろそろダンジョンへ行きましょうか?」
「そうだね、まずは更衣室かな?私の方はもうすでに装備し終わってるけれど神薙君がまだだからね」
新井さんはいつでもダンジョンへ行ける恰好になっているが、俺は未だに荷物以外は普通に買い物にでも出かけるのかって感じの薄着だ。
「あ、あーこのままで大丈夫なんで行きましょうか」
「平気なのかい?」
「もちろん、俺の新しい防具を見せますよ」
「神薙君がそう言うならいいけれど、それじゃぁいこうか」
ふふふ、新井さんびっくりするかな?
新井さんと二人と2匹で並んでダンジョンへと歩いていく。
周りには同じ様にダンジョンへ向かっているパーティーをいくつも見かける、そのどれもが4人パーティーだ。
「このダンジョンって確か4人までの制限があるんでしたっけ?」
「えぇ、そうですね」
今回新井さんと一緒に来ることになったのはDランクの【小鬼の洞窟】ダンジョン。そう、お察しの通りゴブリンが出るダンジョンになる。
物語によってその姿形は様々だが今回戦うゴブリンはいわゆる小さな鬼タイプ、身長が100センチちょっとぐらいしかなくその顔は醜悪で頭に小さな角が生えている。
ゴブリンと言えばよく雑魚の魔物として書かれることが多いが実際は思うほど雑魚でもない。
探索者としてステータスを得ていない人はもちろん、Dランク帯の人でも普通に怪我とかしてやられる人がいる。
そもそもよく考えて欲しいのだがもし現実にいる一般的な動物。サルだとかそれこそ犬や猫でもいいが、そういった動物に襲われて一般人は怪我をする事なく撃退できるだろうか?
体格に恵まれていたり格闘技を習得している人とかなら話は変わってくるが、特に何かをしている訳でもない普通に暮らしているごく一般人の場合を考えて欲しい。
サルや犬猫でさえ襲われたら無事に撃退することは難しい、それなのに小さいといってもサルよりは大きく筋肉もあり戦うすべを本能で知っているゴブリンが雑魚魔物になりえるだろうか?
まぁ、そういった感じでゴブリンは普通に強い魔物になる。後、安心して欲しいのはオークと一緒で物語的な物ではゴブリンは女性を襲ったりするが現実ではそう言うのは無い。
普通に肉食なので襲ってくるが、それは食欲的な意味での肉食であって性的な意味は一切含まれない。
「神薙君、次は私達の番みたいだよ」
「あ、はい」
気が付くとダンジョンへと入る順番がやってきていた。
【小鬼の洞窟】ダンジョンがどうして4人制限か、それはまずダンジョンとしての洞窟の狭さがひとつある、人が5人ほど横にならんで歩ける程度しか広さが無い。
人が5人並んで歩ける?広いじゃないか。と思うかもしれないが実際戦闘を行うとすればこれでは狭い。
1人なら十分に武器を振れる広さだと思う、けどそれが2人なら?3人なら?お互いに武器が当たらないかハラハラしながら戦闘しないといけなくなる。
武器にもよるがとてもじゃないが満足に戦闘を行えないだろう。
なのでここではパーティー編成が前衛(盾)中衛(斥候)後衛(魔法使い、弓)といった感じが理想的になる。
王道だけど、これが一番安定するみたいだ。
そしてもう一つに。
「暗いですね」
「そうだね……」
ダンジョンの入り口から入ってすぐにあるのは長く暗い通路今はそこをみんなで歩いている、ここはダンジョンと外を繋ぐ通路でこの間を4人以上で歩くと外へと放り出されるのだ。
どうやってダンジョンが4人パーティーだと認識しているんだとか、ここがダンジョンのどの部分にあたるんだとか細かい事は知らないけどなんかそういう仕様なのでそう受け止めている。
その為連続してパーティーが入らないようにダンジョン入口で待機列が出来ている。まぁその列もわりとすぐにはけるからそんなに待つことは無いんだけどね。
俺と新井さんで2人パーティーだったら後2人呼ばないの?って思われるかもしれないが。
召喚獣はパーティーメンバーとして認識されるので、俺と新井さんとムンちゃんランちゃんで4人パーティーという扱いになる。
こういった制限がある場所では【召喚】スキルって不遇だなって思うが、それ以上にムンちゃんとランちゃんが可愛いからいいのかもしれない。
「あ、着いたみたいだよ」
「ほ~こんな感じになっているんですね」
【小鬼の洞窟】ダンジョン内は予想と違って明るく清潔感がある、地面や壁天井全てが綺麗な石で作られていてでこぼこもない。
「それで、ここまできたけれど神薙君はそのままで大丈夫なのかい?」
「あ、そうだった忘れてた。今装備しますね【装着】!」
俺がキーワードを言うと体が一瞬ぶれて見えなくなり、すぐに黒い全身プロテクターが現れる。
「おぉ!かっこいいね!」
「ふふふん、いいですよねこれ割と気に入ってます」
因みに武器である銃などは既に装備してある、不思議な現象だが銃を持っていても【装着】と唱えると干渉することなく防具の上に武器がちゃんとくる。
不思議だな~って思うが都合がいいし、そもそもなんで【装着】って言っただけで防具が着れるんだとかの話しになっちゃうので深い事は気にしない。
「は~おじさんには出来ない恰好だからちょっとうらやましいよ」
「そうですかね?」
新井さんのそのローブも中々に派手ですごいと思うんだが、気づかないのは本人ばかりか。
「それじゃぁ行きますか」
「そうだね、行ってみよう」
武器の最終確認をしてダンジョン探索を開始する。
◇ ◇ ◇ ◇
「ランちゃん【釜盾】!ムンちゃん【狐火】!」
「くぅ~ん!」
「きゅ!」
新井さんが召喚獣である2匹に指示を出すと、ランちゃんは半透明で大きな釜を出しゴブリンの攻撃を受け止めムンちゃんは【狐火】で攻撃をする。その隙に新井さん本人は【棒術】で他のゴブリンを足止めしつつ隙あらば倒している。
それを横目に見ながら俺はさらに他のゴブリンを〝アサルトライフルCharlie〟で倒していく。
「ふぅ、いい感じだね?」
「そうですね、っていうか凄いですねランちゃんは盾役をできるスキルを覚えているんですか?それにムンちゃんも以前みた【狐火】とは比べ物にならないぐらい威力が上がっているじゃないですか」
「ははは、そうなんだよ嬉しい事に順調に成長していてくれてね」
【召喚】スキルって不遇だと言われているがこうやって間近でみると全然そんな事が無いのが分かる。
自分には出来ない事を召喚獣がおぎなってくれて召喚獣にできない事を新井さん本人がしてあげていいパーティーだと思う。
「あ、ドロップしてるよ。はい、神薙君の分」
「ありがとうございます、それにしてもいいんですか?明らかに新井さんの方が貢献していますし多くもらってもいいんですよ?」
「いいんだよ、今回神薙君と一緒にダンジョンへ来たのは遊びにってのが大きいからね」
「そう言ってもらえると嬉しいです、それじゃぁ遠慮なくいただきます」
新井さんと一緒にダンジョンへ行くことになって決めたことは色々あるが一番大事なのはドロップ品をどうするかだと思う。色んなパーティーがここで揉めたりするからね。
俺的には新井さんが召喚獣とかいる分多く働く事になるとおもうし7:3でいいと言ったんだけど、新井さんが分かりやすく半々にしようと言ってくれてそれに甘える形になった。
因みにゴブリンのドロップ品は主に魔石と身に着けていた武器、それにたまに貴金属がドロップする。
ゴブリンは倒すと死体が残るのだが魔石はどこからかポロっとドロップする、貴金属についてもそうだ。
ゴブリン自身に利用価値はないのか?って所だが一応持って帰ればお金にはなる、だけれどそれもドロップする魔石や武器貴金属に比べるとはるかに安い。
なので効率を考えるとゴブリンはいらなくなる。
「次ちょっと試したい事があるのでゴブリンが2体だけの時任せてもらえませんか?」
「ん?構わないけれど危なくなったら私も攻撃に加わるからね?」
「はい、その時はお願いします」
【小鬼の洞窟】ではゴブリンが2体~5体ぐらいの編成でランダムで出てくる。なので試せるか分からないがゴブリンが2体ぐらいなら以前から考えていたアレをやってみたい。
◇ ◇ ◇ ◇
「あ、2匹だけこっちにきますね」
「そうかい?それじゃぁ任せるけど平気なんだね?」
「はい、危なくなったら言うので助けて下さい」
「了解したよ」
あれから何回かゴブリンと戦闘したらそのどれもが4体か5体の編成ばかりでうまい事少ないゴブリンに出会わなかった。
でも今回はうまい事2匹だけのゴブリンパーティーに出会えたみたいだ。
太ももに装備していた今回の為に新しく買った〝ハンドガンCharlie〟を取り出す。
〝アサルトライフルCharlie〟でも出来ない事はないみたいだが今回は動画を見て練習したアレを試すためにハンドガンで行く。
「来たよ」
ゴブリンが2匹、曲がり角の向こうから現れたのが見える。それを見て俺は銃を構えて素早く近づきゴブリンの数メートル手前で止まる。
「ぎゃ!ぎゃ!」
ゴブリンがこちらに気づき武器を構えて近づいてくるのを銃を構えて待つ。
「ぎゃ!」
ゴブリンの片手剣の振り下ろしを避けて胸のあたりに構えた銃でゴブリンの胸を狙い撃つ、そのまま素早く銃の構えを目線の高さまで持ち上げる構えに変え素早く頭に数発撃ちこむ。
「ぎゃぎゃ!!」
もう一匹のゴブリンが横から攻撃してくるのをタックルする事により体勢を崩させ尻もちをつかせる、その隙を狙い胸に2発、頭に1発お見舞いして戦闘終了だ。
「ふぅ、うまい事いった」
「神薙君!なんだい?今の!ものすごくかっこいいじゃないか!」
「へへへ……」
みなさんはもうお気づきだと思うが今回俺が試したかったのは銃を持った近接戦闘、いわゆるCQCやCQBその中でもCAR Systemと呼ばれる動きの物だ。
昔の映画を見ている時に発見してかっこよかったからやってみたかったのだ。
ゴブリンは人型なのでちょうどいい相手になると思って今回試した。
器用値のステータスが高いお陰か、わりとうまい事似たような動きが出来たと思う。
本来ならもっと待ち構えてとかの奇襲時にやる動きだがお試しなので発見されてから待ち構えてやってみた。
「いやぁすごいねぇ、まるで映画のワンシーンのようだったよ!」
新井さんがめっちゃ褒めてくれるので普通に照れる。
もうちょっと練習してもっと本格的に動けるようになってみたいなぁ。
その連絡が来たのは、いつも通り朝早い時間に所有している畑の世話をしている時だった。丁度ドローンの制御端末で水やりの指示をしている時だ、携帯がメールの着信を知らせてきた。
「ん?新井さん?」
携帯を見て見ると連絡してきたのは新井さんだ、メールを開き中身を見ていく。
「一緒にダンジョン探索に行きませんか?か。いいですよっと」
メールにはもっと丁寧に挨拶から始まり、最近はどうですか?とかもあったがまぁ要約すると一緒にダンジョンに行かないかっていう誘いのメールだった。
断る理由も無いので了承の返事を送る、するとすぐに新井さんからも返事が返ってきて一緒にダンジョンへいく日にちが決定した。
「3日後か、それまでに色々準備しようかな」
普段はダンジョンへ行くのに水分補給や軽食を【空間庫】内にいれているので持ち歩かないが誰かと一緒に行動するなら持ち運べるように用意しておかないといけない。
正直新井さんには【空間庫】とかばれても問題ないとは思うんだけどね、人の事を誰かに言ったりするような人じゃないって事はまだ短い付き合いだけどそれでもそんなことはしない人だってのはわかる。
まぁ折を見て話してみるか。
◇ ◇ ◇ ◇
「神薙君!」
「新井さん!ってなんだかすごい装備ですね、何ですか?それ」
今日は、新井さんと一緒にダンジョン探索へ行く日。待ち合わせ場所であるダンジョン協会内で待っていると新井さんがやって来たのだがその姿が以前とはまったく異なっていた。
まず目に入ったのはその足元まである長いローブ、夜空のように暗い色に星のような模様がキラキラと光りを反射している。
ローブの中にはしっかりとした革鎧を着ており、背中には渋い色合いの木の棒を背負っている。
「これかい?実は宝箱から出た装備でね、自分には勿体ないかと思ったんだけれど効果がよかったから装備しているんだ」
「へぇー宝箱からそんなローブが出るんですか。あ、ムンちゃんも久しぶり。覚えてるかな?」
「きゅ!」
宝箱からそんなかっこいい装備でるなんて知らなかったなぁ、ちょっとうらやましい………そしてムンちゃんは相変わらずかわいい。前足を俺の足に乗せて立っているので撫でまわす。
以前はしていなかった大きなリボンを付けておりその可愛さに拍車がかかっている。
「あれ?新しい召喚獣ですか?タヌキ?」
ムンちゃんを撫でていると新井さんの足元、後ろからタヌキがにゅっと出てきた。毛がもっふもふですごい。
「えぇ、そうなんです。【召喚】スキルのレベルが上がって2体目を呼び出せるようになったんですよ」
「可愛いですね、名前は何て言うんですか?」
「ランちゃんって名づけました」
「いい名前ですね。ランちゃんおいで~」
「くぅん」
しゃがんで目線を下げ軽く握った手をランちゃんに向かって差し出して向こうから近づいてくるのを待つ。
鼻をひくひくさせながらたぬきのランちゃんが近づいてきたのでジッとしているとペロっと舐められたので挨拶は完了だ。ゆっくりと撫でさせてもらう。
「おぉ………たぬきって初めて触ったけどこんな感じなんだ」
狐のムンちゃんとはまた違った何とも言えない触り心地、これはこれでいいな。
「それじゃぁそろそろダンジョンへ行きましょうか?」
「そうだね、まずは更衣室かな?私の方はもうすでに装備し終わってるけれど神薙君がまだだからね」
新井さんはいつでもダンジョンへ行ける恰好になっているが、俺は未だに荷物以外は普通に買い物にでも出かけるのかって感じの薄着だ。
「あ、あーこのままで大丈夫なんで行きましょうか」
「平気なのかい?」
「もちろん、俺の新しい防具を見せますよ」
「神薙君がそう言うならいいけれど、それじゃぁいこうか」
ふふふ、新井さんびっくりするかな?
新井さんと二人と2匹で並んでダンジョンへと歩いていく。
周りには同じ様にダンジョンへ向かっているパーティーをいくつも見かける、そのどれもが4人パーティーだ。
「このダンジョンって確か4人までの制限があるんでしたっけ?」
「えぇ、そうですね」
今回新井さんと一緒に来ることになったのはDランクの【小鬼の洞窟】ダンジョン。そう、お察しの通りゴブリンが出るダンジョンになる。
物語によってその姿形は様々だが今回戦うゴブリンはいわゆる小さな鬼タイプ、身長が100センチちょっとぐらいしかなくその顔は醜悪で頭に小さな角が生えている。
ゴブリンと言えばよく雑魚の魔物として書かれることが多いが実際は思うほど雑魚でもない。
探索者としてステータスを得ていない人はもちろん、Dランク帯の人でも普通に怪我とかしてやられる人がいる。
そもそもよく考えて欲しいのだがもし現実にいる一般的な動物。サルだとかそれこそ犬や猫でもいいが、そういった動物に襲われて一般人は怪我をする事なく撃退できるだろうか?
体格に恵まれていたり格闘技を習得している人とかなら話は変わってくるが、特に何かをしている訳でもない普通に暮らしているごく一般人の場合を考えて欲しい。
サルや犬猫でさえ襲われたら無事に撃退することは難しい、それなのに小さいといってもサルよりは大きく筋肉もあり戦うすべを本能で知っているゴブリンが雑魚魔物になりえるだろうか?
まぁ、そういった感じでゴブリンは普通に強い魔物になる。後、安心して欲しいのはオークと一緒で物語的な物ではゴブリンは女性を襲ったりするが現実ではそう言うのは無い。
普通に肉食なので襲ってくるが、それは食欲的な意味での肉食であって性的な意味は一切含まれない。
「神薙君、次は私達の番みたいだよ」
「あ、はい」
気が付くとダンジョンへと入る順番がやってきていた。
【小鬼の洞窟】ダンジョンがどうして4人制限か、それはまずダンジョンとしての洞窟の狭さがひとつある、人が5人ほど横にならんで歩ける程度しか広さが無い。
人が5人並んで歩ける?広いじゃないか。と思うかもしれないが実際戦闘を行うとすればこれでは狭い。
1人なら十分に武器を振れる広さだと思う、けどそれが2人なら?3人なら?お互いに武器が当たらないかハラハラしながら戦闘しないといけなくなる。
武器にもよるがとてもじゃないが満足に戦闘を行えないだろう。
なのでここではパーティー編成が前衛(盾)中衛(斥候)後衛(魔法使い、弓)といった感じが理想的になる。
王道だけど、これが一番安定するみたいだ。
そしてもう一つに。
「暗いですね」
「そうだね……」
ダンジョンの入り口から入ってすぐにあるのは長く暗い通路今はそこをみんなで歩いている、ここはダンジョンと外を繋ぐ通路でこの間を4人以上で歩くと外へと放り出されるのだ。
どうやってダンジョンが4人パーティーだと認識しているんだとか、ここがダンジョンのどの部分にあたるんだとか細かい事は知らないけどなんかそういう仕様なのでそう受け止めている。
その為連続してパーティーが入らないようにダンジョン入口で待機列が出来ている。まぁその列もわりとすぐにはけるからそんなに待つことは無いんだけどね。
俺と新井さんで2人パーティーだったら後2人呼ばないの?って思われるかもしれないが。
召喚獣はパーティーメンバーとして認識されるので、俺と新井さんとムンちゃんランちゃんで4人パーティーという扱いになる。
こういった制限がある場所では【召喚】スキルって不遇だなって思うが、それ以上にムンちゃんとランちゃんが可愛いからいいのかもしれない。
「あ、着いたみたいだよ」
「ほ~こんな感じになっているんですね」
【小鬼の洞窟】ダンジョン内は予想と違って明るく清潔感がある、地面や壁天井全てが綺麗な石で作られていてでこぼこもない。
「それで、ここまできたけれど神薙君はそのままで大丈夫なのかい?」
「あ、そうだった忘れてた。今装備しますね【装着】!」
俺がキーワードを言うと体が一瞬ぶれて見えなくなり、すぐに黒い全身プロテクターが現れる。
「おぉ!かっこいいね!」
「ふふふん、いいですよねこれ割と気に入ってます」
因みに武器である銃などは既に装備してある、不思議な現象だが銃を持っていても【装着】と唱えると干渉することなく防具の上に武器がちゃんとくる。
不思議だな~って思うが都合がいいし、そもそもなんで【装着】って言っただけで防具が着れるんだとかの話しになっちゃうので深い事は気にしない。
「は~おじさんには出来ない恰好だからちょっとうらやましいよ」
「そうですかね?」
新井さんのそのローブも中々に派手ですごいと思うんだが、気づかないのは本人ばかりか。
「それじゃぁ行きますか」
「そうだね、行ってみよう」
武器の最終確認をしてダンジョン探索を開始する。
◇ ◇ ◇ ◇
「ランちゃん【釜盾】!ムンちゃん【狐火】!」
「くぅ~ん!」
「きゅ!」
新井さんが召喚獣である2匹に指示を出すと、ランちゃんは半透明で大きな釜を出しゴブリンの攻撃を受け止めムンちゃんは【狐火】で攻撃をする。その隙に新井さん本人は【棒術】で他のゴブリンを足止めしつつ隙あらば倒している。
それを横目に見ながら俺はさらに他のゴブリンを〝アサルトライフルCharlie〟で倒していく。
「ふぅ、いい感じだね?」
「そうですね、っていうか凄いですねランちゃんは盾役をできるスキルを覚えているんですか?それにムンちゃんも以前みた【狐火】とは比べ物にならないぐらい威力が上がっているじゃないですか」
「ははは、そうなんだよ嬉しい事に順調に成長していてくれてね」
【召喚】スキルって不遇だと言われているがこうやって間近でみると全然そんな事が無いのが分かる。
自分には出来ない事を召喚獣がおぎなってくれて召喚獣にできない事を新井さん本人がしてあげていいパーティーだと思う。
「あ、ドロップしてるよ。はい、神薙君の分」
「ありがとうございます、それにしてもいいんですか?明らかに新井さんの方が貢献していますし多くもらってもいいんですよ?」
「いいんだよ、今回神薙君と一緒にダンジョンへ来たのは遊びにってのが大きいからね」
「そう言ってもらえると嬉しいです、それじゃぁ遠慮なくいただきます」
新井さんと一緒にダンジョンへ行くことになって決めたことは色々あるが一番大事なのはドロップ品をどうするかだと思う。色んなパーティーがここで揉めたりするからね。
俺的には新井さんが召喚獣とかいる分多く働く事になるとおもうし7:3でいいと言ったんだけど、新井さんが分かりやすく半々にしようと言ってくれてそれに甘える形になった。
因みにゴブリンのドロップ品は主に魔石と身に着けていた武器、それにたまに貴金属がドロップする。
ゴブリンは倒すと死体が残るのだが魔石はどこからかポロっとドロップする、貴金属についてもそうだ。
ゴブリン自身に利用価値はないのか?って所だが一応持って帰ればお金にはなる、だけれどそれもドロップする魔石や武器貴金属に比べるとはるかに安い。
なので効率を考えるとゴブリンはいらなくなる。
「次ちょっと試したい事があるのでゴブリンが2体だけの時任せてもらえませんか?」
「ん?構わないけれど危なくなったら私も攻撃に加わるからね?」
「はい、その時はお願いします」
【小鬼の洞窟】ではゴブリンが2体~5体ぐらいの編成でランダムで出てくる。なので試せるか分からないがゴブリンが2体ぐらいなら以前から考えていたアレをやってみたい。
◇ ◇ ◇ ◇
「あ、2匹だけこっちにきますね」
「そうかい?それじゃぁ任せるけど平気なんだね?」
「はい、危なくなったら言うので助けて下さい」
「了解したよ」
あれから何回かゴブリンと戦闘したらそのどれもが4体か5体の編成ばかりでうまい事少ないゴブリンに出会わなかった。
でも今回はうまい事2匹だけのゴブリンパーティーに出会えたみたいだ。
太ももに装備していた今回の為に新しく買った〝ハンドガンCharlie〟を取り出す。
〝アサルトライフルCharlie〟でも出来ない事はないみたいだが今回は動画を見て練習したアレを試すためにハンドガンで行く。
「来たよ」
ゴブリンが2匹、曲がり角の向こうから現れたのが見える。それを見て俺は銃を構えて素早く近づきゴブリンの数メートル手前で止まる。
「ぎゃ!ぎゃ!」
ゴブリンがこちらに気づき武器を構えて近づいてくるのを銃を構えて待つ。
「ぎゃ!」
ゴブリンの片手剣の振り下ろしを避けて胸のあたりに構えた銃でゴブリンの胸を狙い撃つ、そのまま素早く銃の構えを目線の高さまで持ち上げる構えに変え素早く頭に数発撃ちこむ。
「ぎゃぎゃ!!」
もう一匹のゴブリンが横から攻撃してくるのをタックルする事により体勢を崩させ尻もちをつかせる、その隙を狙い胸に2発、頭に1発お見舞いして戦闘終了だ。
「ふぅ、うまい事いった」
「神薙君!なんだい?今の!ものすごくかっこいいじゃないか!」
「へへへ……」
みなさんはもうお気づきだと思うが今回俺が試したかったのは銃を持った近接戦闘、いわゆるCQCやCQBその中でもCAR Systemと呼ばれる動きの物だ。
昔の映画を見ている時に発見してかっこよかったからやってみたかったのだ。
ゴブリンは人型なのでちょうどいい相手になると思って今回試した。
器用値のステータスが高いお陰か、わりとうまい事似たような動きが出来たと思う。
本来ならもっと待ち構えてとかの奇襲時にやる動きだがお試しなので発見されてから待ち構えてやってみた。
「いやぁすごいねぇ、まるで映画のワンシーンのようだったよ!」
新井さんがめっちゃ褒めてくれるので普通に照れる。
もうちょっと練習してもっと本格的に動けるようになってみたいなぁ。
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