幸せな結婚生活まで

稲垣桜

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15. マイラ

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翌朝、フェリスには伝えてはいたが予定が入ったことを再度謝り、すぐに例の倉庫へと向かった。

商会の所有する倉庫は二か所あり、町のはずれにある大きな建物が2つと、街の中心部から少し脇道に入った場所に事務所を併設した小さな倉庫(こっちは貴重品系だろう)だ。
まずはそれを確認するために遠巻きに近くの店から確認をした。

確かに人の出入りは頻繁だが、怪しいと言われれば倉庫なのだから不思議ではない。
ただ、ホロ付きの馬車に積み込まれた大きな木箱の中身が何かと言われればそこは調べるべきかもしれない。

だが、この街に倉庫を置く必要性があるのかと考えると、あまりないような気がする。
流通を考えればもっと王都に近い場所のほうがいいだろう。
人の目に着きたくない商品を扱う拠点という可能性もあるのだろうか。

エーレ子爵に裏があるとわかってきているが、その核心はまだ不明なのだ。
商会への潜入もしているようだが、それであれば俺の今日の時間は無駄なのではないかとつい思ってしまう。

だが、この件が片付けば何もかも安心できるというものだ。


出てくる人物を観察しているうちに、どうやら近くに別の倉庫か何かあるのだろうかと思うような違和感な様なものを感じ、さりげなく気付かれない距離を保って男の後をついて行った。
すると、路地を二つ挟んだ大きな材木置き場の裏手にある小さな一軒家へと入っていくのを確認した。

これは報告事項だとしばらくその場で見張っていたが、いくら待っても動きはなく、俺は仕方ないと街の方の事務所の方へと向かった。

そこはさっきの倉庫とは違って身なりの整った男が出入りしていることは確認できたが、おそらく働いている人間だろう。
こっちは見張りのような人間が見えることから、おそらくだが貴金属系が扱われている可能性がある。
建物もしっかりとしていて、一階は完全な事務所になっているようだ。

建物の周りを歩いてみようとさりげなく他の店先に目をやりながら歩いていると、いきなり声をかけられた。


「ブランゼス様!」

「…マイラ嬢」


どうやらこの事務所に来ていたのか、マイラ嬢が俺を見つけて声をかけてきた。
拙いとは思ったがさすがに逃げるわけにもいかず表情を作り相手をする。
もしかすると今度は何か聞き出せるかもしれないと思ったからだ。

そして疑問に思われないように、この近くに別邸がありそこに来ていることを話し、明日帰るのだと逃げる算段を付けて話をすすめた。
腕を組んでくるこの女に愛想を振りまきながらそのまま街を歩いた。

どうしてここにいるのか。何をしに来たのか。そんなことをさりげなく口にして、機嫌を取りつつ話を続けた。

そして散々耐えた時間で得られたのは、この街の事務所にはよくエーレ子爵直々に書類を届けるように頼まれるとのことだけだった。

この街の倉庫に保管しているものは生鮮品が多く、国内外への需要が大きいものを中心に置いているとマイラ嬢もエーレ子爵から聞いているらしいが、それが何かは知らないらしい。
それならば、その書類を見れば何かわかるかと思ったが、彼女の話では毎回その封筒にはしっかりと封蝋がなされており、中を見ることはできないようだ。
だが、それであればあの事務所にその封書がある可能性は高い。
これも団長に報告だと思い、俺はしばらく粘ったものの時間だと告げてマイラ嬢と別れた。


屋敷へと戻る前にここにきている騎士団の人間と接触し、一応だが手に入れた情報を伝え、文句を散々言ってから屋敷へと戻った。

そして屋敷に戻ってからラウル聞かされたのは、マイラ嬢と一緒にいたところをフェリスが目撃したということだった。

ラウルやキランはエーレ子爵家の事やマイラ嬢のこともある程度理解してはいるが、それをフェリスに話すわけにはいかない。
前に流れた噂もあって誤解しただろうかと思う気持ちも湧いてきたが、だからと言って自分からそれを聞くのは悪手だ。


翌日、街に行ったことを聞いてみたが、俺を見かけたことはフェリスは言わなかった。
しかも、その表情もいつもと変わらないのだから、俺はどうしたらいいのかわからなかった。

そして王都まで帰る馬車の中では、話しかけようとするが言葉が出てこず、昔の様に無言の時間が続いた。




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