【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

２５

　その直後、転移魔法でラリーの目の前に現れた人物がいた。

　見るからに鍛え上げられた肉体を持った、アッシュブラウンの髪を後ろに撫でつけ濃い青の瞳が印象的なカリスマ性を感じさせる騎士だ。


「ローレンス！大丈夫か？？」


　その人物は現れてすぐにラリーに向かいそう呼んだ。


「レイヴァン……お前がどうしてここに」

「お前の耳環が割れたのを感知してすぐに来たつもりだが、その血はどうした！」


　血まみれの腹部を見てレイヴァンと呼ばれた男性は驚きの声を上げた。


「ああ……もう治ってる。彼女が、リサが治してくれたんだが、魔力切れを起こしたようだ」


　ラリーの腕の中の女性を見て、レイヴァンはそれが誰かすぐにわかったようだ。


「リサ…？ああ、エリザベスか……彼女が魔力切れになるなんて、お前…相当危険な状態だったようだな。少しは自分の立場を考えろ」


　レイヴァンと呼ばれた人物は、レイヴァン・フォン・クロスロード。クロスロード公爵家の当主で現在の騎士団長でもある。
　そしてラリーことローレンス・イグニス・エクスデイルの友人でもあった。

　ラリーが今まで隠していた自身の正体は、現国王の弟でもあり国の重要人物だということだった。


「…エリザベス？？お前、彼女を知っているのか？」

「ああ、お前も聞いたことがあるだろう【銀湾の聖女】と呼ばれている冒険者を」

「……黎明の羅針盤アウローラコンパスのエリザベス・ファロン」


　ラリーは信じられないといった顔でリサを見つめていると、レイヴァンが「彼女が別人として生活していることを知っているのは数名だけだ」と話した。
　それがラリーの求める答えかどうかはわからないが、理解はしただろう。


　レイヴァンを追うようにやってきた数名の騎士に現場の事を任せて、ラリーは一旦、自身の屋敷へと戻ることにし、騎士の一人にグレンへの伝言も頼んだ。

　そしてレイヴァンと共に転移魔法で移動をした。