【完結】姉に婚約者を寝取られた私は家出して一人で生きていきます

稲垣桜

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 私、エレミアは、王都から遠く離れた山沿いの小さな領地を賜る、セニカ子爵家の三女だ。


 先々代が伯爵だった自身の親から譲ってもらった小さな領地を長年にわたり守り通して今に至るのだが、なにぶん領地が小さいので税収もそこまで多くない。

 特産品もコレ!というものはないし、冬になると雪が積もる。そこで冬の間の屋内での仕事として、刺繍などの手工芸品を作るようになり、それらが冬の主な収入源になっている。


 セニカ子爵家は私のほかに、父と兄、姉が二人いる。
 母は5年前に儚い人になってしまったので、今頃は空の上でゆっくりと過ごしている事だろう。
 
 使用人は4人だけで、雇えるだけでもまだいい方だ。それくらい慎ましい生活をしている。


 はっきり言って貧乏なのだ。


 その為、父は私達姉妹を少しでもよいところへ嫁に出そうと躍起になり、一番上の姉はそこそこ裕福な伯爵家の嫡男と結婚し、二番目の姉も伯爵家の嫡男と婚約はしていたのだが破棄されてしまったのだ。それも1度ではなく2度。
 私には知らされていなかったのだが、どうやら姉の方が悪いらしい。

 そんな時に、姉より年上の子爵家から後妻にと申し込みが来ていた。
 その子爵は結婚したものの、1年余りで奥様が病気でお亡くなりになり、その後は結婚せずに今までいらしたそうで、女遊びもせず真面目な方だと聞いていた。

 私も会ったことはあるが、とても優しい笑顔の大人の男性だった記憶がある。


 だけど、そのはずなんだけど、今、私の目の前に座っている私の姉の横には、姉の肩を抱く私の婚約者の姿があるのはなぜ?


「すまない、エレミア」

「ごめんなさい、私が悪いの。彼の優しさに甘えてしまって」


 私は何を見せられているのだろう。

 一瞬、意識がどこかに飛んで行ったのか、それともどこか違う世界に迷い込んだのだろうか。

 部屋に控えている侍女たちは一応に驚きを隠せないのか、対応に困った顔を隠そうとしているのが傍目でもわかる。彼女たちに申し訳なく思うのは私だけのようだ。


 涙を流す姉をいたわるような視線を向ける婚約者を見て、さっさと理由を話してしまえと暴言を吐きたくなる気持ちを抑える。

 
「それで、お姉さまたちは私に何を言いたいのですか?お姉さまにはちゃんと婚約者がいらっしゃいますよね。彼は私の婚約者ですけど」


 苛立つ心をなんとか押さえ、使用人たちがスッと目をそらす居たたまれなさを感じつつ何とか言葉を吐き出す。

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