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 私とレイモンドは王太子殿下から頂いたカイトの強制休暇が終わると同時に王都へと一緒に戻った。

 7年も住んで慣れ親しんだ土地を離れるのは悲しかったけど、馬車で4~5日で行けるので休暇になったら遊びに行くこともできるだろう。


 カイトは父親の公爵様が持つ伯爵位を受け継ぎ、今はリベルト伯爵家当主となっている。そして私はセニカ子爵令嬢として彼の元へ嫁ぐことになった。

 王太子殿下のあらすじでは【子爵令嬢が婚約を破棄され、その傷心旅行中に出会った公爵令息と恋に落ち子供を授かったが、身分の違いから姿を隠し最近になり偶然に再会した】ということらしい。まるでお芝居のようだ。

 だけどその嘘っぱちな話もあってか、レイモンドはカイトの正式な嫡子として認められ公爵家に温かく迎えられた。
 まあ、どこからどう見てもカイトにそっくりでティール家の瞳を持っているのだから、血筋を疑われる余地がなかった事が大きかった。

 その手続きも複雑怪奇なものだったがどうやら王太子殿下が裏からこっそりと手を回してくれたらしい。本当に感謝しかない。



 実家の子爵家は昨年兄が家督を継いだようで、必死に頑張って領地経営をしているらしい。

 私の婚約者を寝取った二番目の姉は勉強が嫌いなことが尾を引き、未だに子爵夫人からの教育を受けているようだ。合格が出るのはまだまだだと聞いている。それもあってか姉夫婦の仲はあまりよろしくないとか。

 生まれてきた子は真っ当に育てようと子爵夫妻がそれはそれは優秀な家庭教師をつけているらしく、今のところはその計画は成功しているとのことだった。

 そして姉が願ったドレスと宝石に囲まれた生活は夢のまた夢のようで、結婚して早々に後悔したとかしないとか。まあ、そんなことは私の知ったことではない。人の婚約者を奪うからそんな目に合うのだ。


 でも、今では感謝している。

 寝取ってくれたおかげで私はカイトと出会い、レイモンドを授かったのだから。



 そして今日はカイトとの結婚式だ。

 王国騎士団の副団長で公爵家の令息。そして社交界一の美貌を持つ最後の独身者の結婚式ともなると、招待客も多く哀しみに暮れる令嬢も多い。
 
 だが、王太子殿下の流した嘘っぱちの出会いのストーリーがあるのと、私とレイモンドに向けるカイトの甘い笑顔を見た人はその物語を信じ心からの祝福を私たちに向けてくれた。


 この日、私はリベルト伯爵夫人になるのだ。カイトの顔を見て、長かった7年に思いを馳せた。
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