超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
10 / 172
人間を手に入れ迷宮を出る

09 宝箱は契約する

しおりを挟む
 それにしても、九死に一生を得たばかりだというのに、二人は落ち着いたものだ。

 この世界の人間、特に冒険者は本当にしっかりしていると思う。
 命が軽い世界だからこそ、子供であっても幼いままではいられないのだろうか。

「俺の名前はトシゾウ。迷宮の魔物だ。お前たちは俺に助けられた。だが俺は、別にお前たちを助けようとしてここに来たわけではない。俺から見れば、お前たちは迷族から奪った宝のおまけに過ぎない」

 二人の顔を見ながら話す。
 コレットとシオンは素直にうなずく。

 物と同じに扱われていることを気にすることはないようだ。

 この世界は人の命が軽い。
 人の命は物と同じテーブルに乗っている。そのことに疑問を持つ者はいない。

 二人は俺が魔物だと聞いた時、少し驚いた様子だったが、取り乱すことはなかった。

 うすうす悟っていたのだろう。
 宝箱の姿で迷族を虐殺しておいて、人間だというには無理があるしな。

 これは後から知ったことだが、知恵を持つ魔物が人と接触を持つことは昔から稀にあるらしい。
 人と会話が可能なほど知能が発達した魔物はほとんどが非常に強力な固体であり、人間で言うところの英雄と比肩する存在として畏れられるのだとか。

 二人が俺の話をしっかりと聞いていることを確認し、続ける。

「だが、いくらおまけとはいえ、俺は手に入れたものを対価なく手放すことはしない」

 当たり前の話だ。それは二人もわかっているが、あえて俺が宣言したことで身構える。

「まず迷族から助けた命の対価として、二人の自殺を禁じる」

「は、はい。…え?」

 返事したコレットは目が点になっている。

「何を考えているのかはわかるが、求めるのは生きること。それだけだ。お前たちの価値観は関係ない」

「わ、わかりましたわ」

「はい」

 どこか訝しがりながらも返事する二人。

 生きていれば消費が生まれ、迷宮での需要が生まれる。
 結果として冒険者が増える。
 元が冒険者ならそのまま金の卵を産む鶏を助けたことになる。

 俺にとってはその程度のものだ。

「ではシオン。エリクサーの対価として、その身体をもって一時的に俺の所有物となれ。俺は魔物だから人間の事情に疎いところもある。だが少なくとも衣食住は保証しよう。命令には従ってもらうが、どうしても嫌な命令には拒否権を与える」

「は、はい!」

 決意を固めた表情のシオン。契約は成立だ。

「次にコレット。エリクサーの対価として、今後俺が必要になった際に協力することを求める」

「…わ、わかりましたわ」

 先ほどとは違い、重々しく頷くコレット。

 コレットの置かれている状況は複雑だ。端的に言って余裕がない。
 それゆえコレットは、トシゾウがすぐに対価を求めなかったことに安堵しつつも、“貸し一つ”の意味がわからないほど貴族として未熟ではないため、気を引き締める。
 冗談のように聞こえた命の対価は建前で、実際はこちらの要求がメインなのだろう。

「魔法契約書をお持ちですか?」

「いや、魔法契約書は必要ない。俺は、契約は自分で守らせる主義だ」

「わかりましたわ。対価は必ず、お支払いします」

 コレットは冷や汗を流しつつも宣言する。

 魔法契約書は、魔道具の一つだ。
 双方の契約内容と破った際の罰則を定め、それを強制することができる。

 魔法契約書を使用する場合、内容は厳密でなければならない。
 “貸し一つ”というようなあいまいさは抜け道を残すことになる。

 コレットは、トシゾウは魔物だが、そのことを知っているのだろうと判断した。

 同様の魔道具には、【帰還の魔石】、【奴隷紋】、【奴隷の首輪】などが含まれる。

 魔道具は、種族ごとに決まった属性の魔法しか使えない人間にとって、明らかに能力の枠を超えた代物である。

 かつての英雄、あるいは神と呼ばれる存在が作り出したものだと伝わるが詳細は不明だ。
 新たに開発できるものは現代に存在しない。
 ただ魔力を込めることで、既存の魔道具を量産する方法が現代に伝わっている。

 今回トシゾウが魔法契約書を使わないことに大した意味はなかった。
 トシゾウにとってエリクサーは貴重品というわけでもなく、軽い気持ちで貸し一つと言っただけである。
 迷宮の外に出た時役に立つかもと軽く考えただけであった。

 もっともトシゾウが本気で求めた契約や対価を拒絶した場合、契約相手は魔法契約書を使えば良かったと後悔することになるのだが、それは別の話だ。


「最後にコレット、お前に情報を要求する」

「情報ですか。それはどういう意味ですの?」

「俺は迷宮の外に出るつもりだ。コレットは貴族だな?貴族は人族の中でも数が少ないのだろう。迷宮の外について、いくつかの質問に答えて欲しい」

 迷宮の外に出るのは初めてだ。可能ならば、簡単な情報を仕入れておきたかった。
 貴族ならば、いろいろと知っていることも多いだろう。

「わかりましたわ。…領地を失陥の窮地に追い込み、部下に裏切られ、あげく迷族に囚われ、友人が魔物の所有物になるのをただ見ていることしかできない愚かな貴族の話で良ければなんなりとお話いたしますわ」

 コレットが自嘲気味に呟く。
 いろいろ事情があるらしい。知ったことではないが。

「助かる。わかる範囲で構わない。対価は【帰還の魔石】だ。いや…、助けた対価を返してもらう前に死なれるのは困る。情報しだいで、お前の今後に必要な道具一式も与えよう」

「それは願ってもないことですわ。なんなりと聞いてくださいまし。私が人族至上主義のブタ貴族に嵌められて迷族に囚われた話も、このままではレインベル家がブタの食い物にされることも余さずお話しましょう」

「それは別に…いや、必要か?…それより良いのか?こちらから言っておいてなんだが、魔物に情報を与えるなど」

「構いませんわ。トシゾウ様は恩人ですし、常識人ですから」

「得体のしれない魔物を相手に常識人とはよく言ったものだな」

「非常識なほどの常識人ですわ。圧倒的に有利な状況でありながら、対等な取引を持ちかけてくださるなど。あらゆる情報をお渡ししますわ。その代わり、ぜひとも私の復讐に必要な力をお貸しください。私にはトシゾウ様が神様に見えますわ」

 知らないうちに何かのスイッチを押してしまったらしい。

「コレットは面白い人間だな」

「ふふふ。いろいろあって少し自棄になっているのかもしれませんわね。それにトシゾウ様がその気になれば、情報の有無など関係なしに人間の世界など滅ぼせるのではありませんか?それならば私の知る情報をお教えして、領土の安堵と、トシゾウ様による人間世界への影響を最小限に抑えることを考えるべきだと思いますの」

「世界を滅ぼしたら誰が宝物を運んでくるんだ。さすがにそんなことはしない。が、なるほど。コレットは強かだな」

「できないとはおっしゃらないのですわね…。私は矮小な人間です。知恵を持つ魔物、それも恩ある方に逆らうほど愚かではありませんわ」

「そうか。情報を得られるのは非常にありがたい。俺としても貸しがあるからコレットには元気でいてもらいたい。それでは話してもらおうか」

 くくく…。
 ふふふ…。

 トシゾウ様についていくという私の判断は正しかったのでしょうか。あぁ、でもそれしか恩を返す方法は…。

 黒そうな二人の顔をみつめて、白狼種の少女は頭を抱えるのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...