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迷宮都市ラ・メイズ
15 シオンは高級宿で小さくなる
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風見鶏の寄木亭は、ラ・メイズの内壁を抜け貴族区画へ入ってすぐの場所にあった。
三階建ての木造建築で、屋根の上には風見鶏の彫刻が飾られ、各所に鳥の羽をモチーフにしたような装飾が施されている。
木造でありながら高級感があり、かつ歴史を感じさせるような重厚感があった。
豪奢な扉を開き中に入る。
外観に劣らず、高級感がありながらもどこか落ち着くような内装だ。
地面には一面に敷物が敷かれている。
シオンが慌てて靴を脱ぎだしたので止めた。
さすがに冒険者区画のテントとは比べ物にならないな。
「うぅ、緊張します。トシゾウ様ならともかく、私なんかが…」
「いや、俺は魔物だぞ。シオンも遠慮する必要などない」
「いらっしゃいませ。風見鶏の寄木亭へ、ようこそおいでくださいました。お食事ですか、それともご宿泊ですか?」
俺たちが中に入ったことに気付いた壮年の男性が慇懃な礼をする。
燕尾服というのだろうか、黒を基調とした礼服を着こなしている。
バトラーとか、ギャリソンとか、セバスチャンとか、そんな名前をつけたくなる紳士だ。
「宿泊と食事の両方だ。二名で一室。とりあえず一泊で良い」
「かしこまりました。部屋のグレードはいかがいたしましょうか」
「一番良い部屋を頼む」
「あいにく一番良いS室はすでに貴族の方が宿泊されていまして、次に良いA室のご案内となりますがよろしいでしょうか?」
「かまわない」
どうやら先客がいるらしい。わざわざ先客を追い出すことはないだろう。
「ありがとうございます。一泊一室、夕食と朝食のご利用で、11500コルとなります」
「いちま…」
シオンの顔が青ざめている。
一般に流通している貨幣は
銅貨 1コル
大銅貨 10コル
銀貨 100コル
大銀貨 1000コル
金貨 10000コル
大金貨100000コル
という内訳らしい。
金貨と大金貨は、二回りほど大きさが違う。
それでも10倍の大きさがあるわけではないが、金の含有量を調整することでバランスを取っているのだろう。
鋳つぶして純金にした場合、人間の世界においての価値は低下する。
硬貨の信用分、硬貨の価値が上がっているのだ。
金銀銅は、迷宮でも入手できる手段が限定されているため、貨幣として成立している。
物価は偏りがあるものの、おおよそ1コル=100円ほどの感覚だろうか。
串焼き一本が1コル、安物のナイフで10コル、シオンの知る安宿が一泊3コルらしい。
冒険者区画では最大で大銀貨(10万円相当)までしかみかけなかった。
金貨以上はあまり流通していないのかもしれないな。
他にも硬貨による取引が一般的だが、魔石やオリハルコン、ミスリルなど希少金属のインゴッドを貨幣として取引を行う場合もあるらしい。
今回だと部屋代が10000コルで、食事が1500コルといったところか。
日本人感覚だと、一泊100万円の部屋に、二人前の二食で15万円の食事ということになる。
なるほど、貴族や富裕層、トップクラスの冒険者でもないと泊まれないというのは本当のようだ。
前世の俺ならたとえ金があったとしても、たかだか一宿一飯に大金を払うなんてどこの馬鹿だと鼻で笑ったかもしれないな。
今は人間の世界に縛られない魔物で、貨幣そのものに対してあまり価値を感じない。
そこそこの飯と宿が手に入るなら、料金にこだわることはない。
いくら金を持っていても、俺が本当にほしい宝物は、金を出せば簡単に手に入るような、安易に出回るものではない。
逆に派手に金を使って、人間の経済を回したほうが良いくらいだ。
俺は懐から金貨1枚、大銀貨1枚、銀貨を5枚取り出し受付カウンターに置いた。
「確かにお預かりしました。それでは、部屋にご案内いたします」
紳士は丁寧に金を受け取り、宿の設備について説明しながら俺たちを部屋に案内した。
「おぉ、さすがは高級宿だな」
案内された部屋は、これがA室なら一番良いS室はどうなっているのかと考える程度には豪華で洗練されていた。
宿のコンセプトなのか、どこか和を感じるような造りだ。
木材がふんだんに使われているからだろう。香木の上品な香りが漂う。
おそらく素材は迷宮中層のエルダートレントのものだろう。
同じくエルダートレントから採れる木材を使用した椅子とテーブル、クローゼットや鉄製の頑丈そうな金庫など必要な家具も一通り揃っている。
広い室内の中央には天蓋の付いた大型のベッドが一台。キッチリと整えられ、柔らかな布が敷かれている。
宿の三階にある部屋で、通りに面した窓からは内壁から貴族区画を縦断する大通りが見渡せる。
部屋の入り口とは別にもう一つドアがあり、開いてみると魔石を動力として湯を沸かすことのできる風呂がついていた。
魔石やアメニティは使い放題らしい。
布と歯ブラシ、明かりをつけるランタン、水差しなども完備されており、電気と水道がないことを除けば前世の高級なホテルと大差ないと言えるだろう。
俺は適当にベッドに腰掛ける。
食事の時間までは少し時間があるな。
先に風呂でも…ん?
「シオン、そんなところで何をしている」
シオンは部屋の隅のほうでポツンと立っていた。
「いえ、私なんかが部屋に入ったら、汚れてしまいます」
俺は思わずため息をついた。
シオンはそう言っているが、迷宮を出るときに汚れは洗い流した。
冒険者区画を歩いたから、ほこりの一つも付いていないといえば嘘になるが、それは俺も同じだ。
つまるところ、単に高級な部屋に気後れしているだけである。
俺はこれから先も、必要なら金にいとめをつける気はない。
そのたびに同じやり取りをするのは非常に面倒だ。
今のうちに言い聞かせておく必要があるだろう。
三階建ての木造建築で、屋根の上には風見鶏の彫刻が飾られ、各所に鳥の羽をモチーフにしたような装飾が施されている。
木造でありながら高級感があり、かつ歴史を感じさせるような重厚感があった。
豪奢な扉を開き中に入る。
外観に劣らず、高級感がありながらもどこか落ち着くような内装だ。
地面には一面に敷物が敷かれている。
シオンが慌てて靴を脱ぎだしたので止めた。
さすがに冒険者区画のテントとは比べ物にならないな。
「うぅ、緊張します。トシゾウ様ならともかく、私なんかが…」
「いや、俺は魔物だぞ。シオンも遠慮する必要などない」
「いらっしゃいませ。風見鶏の寄木亭へ、ようこそおいでくださいました。お食事ですか、それともご宿泊ですか?」
俺たちが中に入ったことに気付いた壮年の男性が慇懃な礼をする。
燕尾服というのだろうか、黒を基調とした礼服を着こなしている。
バトラーとか、ギャリソンとか、セバスチャンとか、そんな名前をつけたくなる紳士だ。
「宿泊と食事の両方だ。二名で一室。とりあえず一泊で良い」
「かしこまりました。部屋のグレードはいかがいたしましょうか」
「一番良い部屋を頼む」
「あいにく一番良いS室はすでに貴族の方が宿泊されていまして、次に良いA室のご案内となりますがよろしいでしょうか?」
「かまわない」
どうやら先客がいるらしい。わざわざ先客を追い出すことはないだろう。
「ありがとうございます。一泊一室、夕食と朝食のご利用で、11500コルとなります」
「いちま…」
シオンの顔が青ざめている。
一般に流通している貨幣は
銅貨 1コル
大銅貨 10コル
銀貨 100コル
大銀貨 1000コル
金貨 10000コル
大金貨100000コル
という内訳らしい。
金貨と大金貨は、二回りほど大きさが違う。
それでも10倍の大きさがあるわけではないが、金の含有量を調整することでバランスを取っているのだろう。
鋳つぶして純金にした場合、人間の世界においての価値は低下する。
硬貨の信用分、硬貨の価値が上がっているのだ。
金銀銅は、迷宮でも入手できる手段が限定されているため、貨幣として成立している。
物価は偏りがあるものの、おおよそ1コル=100円ほどの感覚だろうか。
串焼き一本が1コル、安物のナイフで10コル、シオンの知る安宿が一泊3コルらしい。
冒険者区画では最大で大銀貨(10万円相当)までしかみかけなかった。
金貨以上はあまり流通していないのかもしれないな。
他にも硬貨による取引が一般的だが、魔石やオリハルコン、ミスリルなど希少金属のインゴッドを貨幣として取引を行う場合もあるらしい。
今回だと部屋代が10000コルで、食事が1500コルといったところか。
日本人感覚だと、一泊100万円の部屋に、二人前の二食で15万円の食事ということになる。
なるほど、貴族や富裕層、トップクラスの冒険者でもないと泊まれないというのは本当のようだ。
前世の俺ならたとえ金があったとしても、たかだか一宿一飯に大金を払うなんてどこの馬鹿だと鼻で笑ったかもしれないな。
今は人間の世界に縛られない魔物で、貨幣そのものに対してあまり価値を感じない。
そこそこの飯と宿が手に入るなら、料金にこだわることはない。
いくら金を持っていても、俺が本当にほしい宝物は、金を出せば簡単に手に入るような、安易に出回るものではない。
逆に派手に金を使って、人間の経済を回したほうが良いくらいだ。
俺は懐から金貨1枚、大銀貨1枚、銀貨を5枚取り出し受付カウンターに置いた。
「確かにお預かりしました。それでは、部屋にご案内いたします」
紳士は丁寧に金を受け取り、宿の設備について説明しながら俺たちを部屋に案内した。
「おぉ、さすがは高級宿だな」
案内された部屋は、これがA室なら一番良いS室はどうなっているのかと考える程度には豪華で洗練されていた。
宿のコンセプトなのか、どこか和を感じるような造りだ。
木材がふんだんに使われているからだろう。香木の上品な香りが漂う。
おそらく素材は迷宮中層のエルダートレントのものだろう。
同じくエルダートレントから採れる木材を使用した椅子とテーブル、クローゼットや鉄製の頑丈そうな金庫など必要な家具も一通り揃っている。
広い室内の中央には天蓋の付いた大型のベッドが一台。キッチリと整えられ、柔らかな布が敷かれている。
宿の三階にある部屋で、通りに面した窓からは内壁から貴族区画を縦断する大通りが見渡せる。
部屋の入り口とは別にもう一つドアがあり、開いてみると魔石を動力として湯を沸かすことのできる風呂がついていた。
魔石やアメニティは使い放題らしい。
布と歯ブラシ、明かりをつけるランタン、水差しなども完備されており、電気と水道がないことを除けば前世の高級なホテルと大差ないと言えるだろう。
俺は適当にベッドに腰掛ける。
食事の時間までは少し時間があるな。
先に風呂でも…ん?
「シオン、そんなところで何をしている」
シオンは部屋の隅のほうでポツンと立っていた。
「いえ、私なんかが部屋に入ったら、汚れてしまいます」
俺は思わずため息をついた。
シオンはそう言っているが、迷宮を出るときに汚れは洗い流した。
冒険者区画を歩いたから、ほこりの一つも付いていないといえば嘘になるが、それは俺も同じだ。
つまるところ、単に高級な部屋に気後れしているだけである。
俺はこれから先も、必要なら金にいとめをつける気はない。
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