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規格外のスタンピード
65 シオンはブレスに飲まれる
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白竜はその長大な尾を怒りに任せてシオンへ叩きつけた。
大きく横に回避するシオン。
素早さはシオンの方が上だが、白竜はその巨体を活かした面攻撃でその差を埋める。
逆巻いた鱗の密集した尾は、かすっただけで華奢なシオンをバラバラに擦り下ろすだろう。
シオンのレベルは29。
スキルを加味しても、40階層相当の白竜はシオンにとって格上の存在だ。
白竜は属性竜である。
トシゾウがシオンをレベリングした時に45層で相対したことがある魔物だ。
あの時はトシゾウがいた。しかし今はシオン一人で戦わなければならない。
口から覗く牙、足から伸びる太い爪、あらゆる攻撃がシオンにとって致命の破壊力を持つ。
逆巻いた鱗の一枚一枚ですらシオンの手にした剣よりも大きい。
振り回された爪が冷気の衝撃波を発生させ、かろうじて回避したシオンの髪の一部を凍り付かせる。
強い。
【超直観】に従ってなお、ぎりぎりを掠めていく攻撃。巨体の割に驚くほど俊敏で、一撃一撃が範囲攻撃のようだ。
恐ろしい。
でも、戦える。
シオンは、スキル【竜ノ心臓】が恐怖を抑え込んでいくのを感じる。同時に、心が高揚していく。
ご主人様の役に立ちたい。問題ないと送り出してくれたその期待に応えたい。強くなりたい。冒険者ギルドのみんなを守りたい。ご主人様から頂いた力がこんなところで負けるはずがない。
【竜ノ心臓】は無条件に恐怖を抑えてくれるスキルではない。
スキルの保持者に確かな覚悟と、心の拠り所があって初めて効果を発揮する。
「やぁぁ!」
振り下ろされた腕を紙一重で回避し、その勢いを利用して短剣を滑らせる。
白竜の鱗が弾ける。傷口から噴き出す冷気。
その正体は白竜の身体を流れる冷たい血液だ。
シオンは白竜の攻撃を避け続け、カウンターで小さいながらも傷を与えていく。
☆
冒険者ギルド、防壁上。
「シオン、あんなに強かったか…?」
シオンの戦闘を見守りつつ、トシゾウは首をかしげていた。
40階層相当の魔物と言っても、その強さにはばらつきがある。
そしてその中でも白竜はかなり強い部類に入る。
相性は悪くないが、今のシオンでは手に余る相手だ。
想定されていた第2波はすでに乗り切っていると言っても良い。
あの白竜は、明らかにイレギュラーな存在だ。
トシゾウはシオンが命を失う前にさっさと助けるつもりでいた。
だがシオンは予想以上に善戦しているようだ。
「かーっ!しーちゃんの心トシゾウはん知らずや。ええかトシゾウはん。しーちゃんはトシゾウはんとの約束を果たすために頑張っとるんや。恋する乙女や。そら強いに決まっとるがな。いけいけしーちゃんいてこませー!」
「うぉぉぉ頑張れ嬢ちゃん!そこだ、ぶっとばせぇぇ!」
「はー、こりゃすごいねぇ。そういえば竜の肉はものすごく美味しいらしいね。夕食に使っていいかい?」
防壁上にはギルドメンバー。どこかお祭りムードである。
内壁の上からは兵士や冒険者。こちらは青い顔で、固唾を飲んで戦いを見守っている。
二者の違いは、ここまでシオンが積み上げた信頼の差だ。
ギルドメンバーはシオンの心配をしつつも、シオンが勝つことを疑っていない。
人間っておもしろいなーとトシゾウは思った。
…とはいえ。このままではシオンは負ける。どこかで助けなければならないだろう。
援護があれば別だが、今回俺は半端に助けるつもりはない。
シオンの動きが少しずつ鈍くなっていることを気付いている者はいるのだろうか。
☆
体が重い。これは、疲労だけではない。
尾が迫る。回避を…、間に合わない!
シオンは、自分の身体の変化に戸惑っていた。
バチィッ
動きの鈍った一瞬の隙をついた尾の一撃が、ついにシオンを捕らえる。
「…うぅっ」
弾き飛ばされながらもなんとか受け身を取るシオン。
後ろへ跳ぶことで勢いを殺したが、受けたダメージは大きい。
祖白竜の鎧がなければ戦闘不能になっていただろう。
痛みが収まるのを待つ時間はない。
距離が開けばブレスが来る。シオンは再び白竜へ迫ろうと体を屈め、
身体の一部が凍ったように動かないことに気付いた。
シオンの装備は短剣だ。戦いは常に接近戦。
さらに一撃で仕留められない場合、魔物の返り血を浴びることになる。
白竜の表皮は氷よりもはるかに冷たく、流れる血液も氷点下を下回る。
戦いの熱の中でも、その冷気はシオンの熱を奪い続けていた。
白竜は当然そのことを把握している。
傷つきながらも、敵が動きを鈍らせるのを待っていたのだ。
動けないシオンへ即座にブレスが放たれたのは必然である。
クリスタルブレスがシオンを飲み込む。回避は不可能だ。
KURWOOOOOOOOOO
白竜は勝利の雄たけびを上げた。
大きく横に回避するシオン。
素早さはシオンの方が上だが、白竜はその巨体を活かした面攻撃でその差を埋める。
逆巻いた鱗の密集した尾は、かすっただけで華奢なシオンをバラバラに擦り下ろすだろう。
シオンのレベルは29。
スキルを加味しても、40階層相当の白竜はシオンにとって格上の存在だ。
白竜は属性竜である。
トシゾウがシオンをレベリングした時に45層で相対したことがある魔物だ。
あの時はトシゾウがいた。しかし今はシオン一人で戦わなければならない。
口から覗く牙、足から伸びる太い爪、あらゆる攻撃がシオンにとって致命の破壊力を持つ。
逆巻いた鱗の一枚一枚ですらシオンの手にした剣よりも大きい。
振り回された爪が冷気の衝撃波を発生させ、かろうじて回避したシオンの髪の一部を凍り付かせる。
強い。
【超直観】に従ってなお、ぎりぎりを掠めていく攻撃。巨体の割に驚くほど俊敏で、一撃一撃が範囲攻撃のようだ。
恐ろしい。
でも、戦える。
シオンは、スキル【竜ノ心臓】が恐怖を抑え込んでいくのを感じる。同時に、心が高揚していく。
ご主人様の役に立ちたい。問題ないと送り出してくれたその期待に応えたい。強くなりたい。冒険者ギルドのみんなを守りたい。ご主人様から頂いた力がこんなところで負けるはずがない。
【竜ノ心臓】は無条件に恐怖を抑えてくれるスキルではない。
スキルの保持者に確かな覚悟と、心の拠り所があって初めて効果を発揮する。
「やぁぁ!」
振り下ろされた腕を紙一重で回避し、その勢いを利用して短剣を滑らせる。
白竜の鱗が弾ける。傷口から噴き出す冷気。
その正体は白竜の身体を流れる冷たい血液だ。
シオンは白竜の攻撃を避け続け、カウンターで小さいながらも傷を与えていく。
☆
冒険者ギルド、防壁上。
「シオン、あんなに強かったか…?」
シオンの戦闘を見守りつつ、トシゾウは首をかしげていた。
40階層相当の魔物と言っても、その強さにはばらつきがある。
そしてその中でも白竜はかなり強い部類に入る。
相性は悪くないが、今のシオンでは手に余る相手だ。
想定されていた第2波はすでに乗り切っていると言っても良い。
あの白竜は、明らかにイレギュラーな存在だ。
トシゾウはシオンが命を失う前にさっさと助けるつもりでいた。
だがシオンは予想以上に善戦しているようだ。
「かーっ!しーちゃんの心トシゾウはん知らずや。ええかトシゾウはん。しーちゃんはトシゾウはんとの約束を果たすために頑張っとるんや。恋する乙女や。そら強いに決まっとるがな。いけいけしーちゃんいてこませー!」
「うぉぉぉ頑張れ嬢ちゃん!そこだ、ぶっとばせぇぇ!」
「はー、こりゃすごいねぇ。そういえば竜の肉はものすごく美味しいらしいね。夕食に使っていいかい?」
防壁上にはギルドメンバー。どこかお祭りムードである。
内壁の上からは兵士や冒険者。こちらは青い顔で、固唾を飲んで戦いを見守っている。
二者の違いは、ここまでシオンが積み上げた信頼の差だ。
ギルドメンバーはシオンの心配をしつつも、シオンが勝つことを疑っていない。
人間っておもしろいなーとトシゾウは思った。
…とはいえ。このままではシオンは負ける。どこかで助けなければならないだろう。
援護があれば別だが、今回俺は半端に助けるつもりはない。
シオンの動きが少しずつ鈍くなっていることを気付いている者はいるのだろうか。
☆
体が重い。これは、疲労だけではない。
尾が迫る。回避を…、間に合わない!
シオンは、自分の身体の変化に戸惑っていた。
バチィッ
動きの鈍った一瞬の隙をついた尾の一撃が、ついにシオンを捕らえる。
「…うぅっ」
弾き飛ばされながらもなんとか受け身を取るシオン。
後ろへ跳ぶことで勢いを殺したが、受けたダメージは大きい。
祖白竜の鎧がなければ戦闘不能になっていただろう。
痛みが収まるのを待つ時間はない。
距離が開けばブレスが来る。シオンは再び白竜へ迫ろうと体を屈め、
身体の一部が凍ったように動かないことに気付いた。
シオンの装備は短剣だ。戦いは常に接近戦。
さらに一撃で仕留められない場合、魔物の返り血を浴びることになる。
白竜の表皮は氷よりもはるかに冷たく、流れる血液も氷点下を下回る。
戦いの熱の中でも、その冷気はシオンの熱を奪い続けていた。
白竜は当然そのことを把握している。
傷つきながらも、敵が動きを鈍らせるのを待っていたのだ。
動けないシオンへ即座にブレスが放たれたのは必然である。
クリスタルブレスがシオンを飲み込む。回避は不可能だ。
KURWOOOOOOOOOO
白竜は勝利の雄たけびを上げた。
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