超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
67 / 172
規格外のスタンピード

65 シオンはブレスに飲まれる

しおりを挟む
 白竜はその長大な尾を怒りに任せてシオンへ叩きつけた。

 大きく横に回避するシオン。
 素早さはシオンの方が上だが、白竜はその巨体を活かした面攻撃でその差を埋める。

 逆巻いた鱗の密集した尾は、かすっただけで華奢なシオンをバラバラに擦り下ろすだろう。

 シオンのレベルは29。
 スキルを加味しても、40階層相当の白竜はシオンにとって格上の存在だ。

 白竜は属性竜である。
 トシゾウがシオンをレベリングした時に45層で相対したことがある魔物だ。
 あの時はトシゾウがいた。しかし今はシオン一人で戦わなければならない。

 口から覗く牙、足から伸びる太い爪、あらゆる攻撃がシオンにとって致命の破壊力を持つ。
 逆巻いた鱗の一枚一枚ですらシオンの手にした剣よりも大きい。

 振り回された爪が冷気の衝撃波を発生させ、かろうじて回避したシオンの髪の一部を凍り付かせる。


 強い。

 【超直観】に従ってなお、ぎりぎりを掠めていく攻撃。巨体の割に驚くほど俊敏で、一撃一撃が範囲攻撃のようだ。

 恐ろしい。

 でも、戦える。

 シオンは、スキル【竜ノ心臓】が恐怖を抑え込んでいくのを感じる。同時に、心が高揚していく。
 ご主人様の役に立ちたい。問題ないと送り出してくれたその期待に応えたい。強くなりたい。冒険者ギルドのみんなを守りたい。ご主人様から頂いた力がこんなところで負けるはずがない。

 【竜ノ心臓】は無条件に恐怖を抑えてくれるスキルではない。
 スキルの保持者に確かな覚悟と、心の拠り所があって初めて効果を発揮する。

「やぁぁ!」

 振り下ろされた腕を紙一重で回避し、その勢いを利用して短剣を滑らせる。
 白竜の鱗が弾ける。傷口から噴き出す冷気。

 その正体は白竜の身体を流れる冷たい血液だ。

 シオンは白竜の攻撃を避け続け、カウンターで小さいながらも傷を与えていく。



 冒険者ギルド、防壁上。

「シオン、あんなに強かったか…?」

 シオンの戦闘を見守りつつ、トシゾウは首をかしげていた。

 40階層相当の魔物と言っても、その強さにはばらつきがある。
 そしてその中でも白竜はかなり強い部類に入る。

 相性は悪くないが、今のシオンでは手に余る相手だ。

 想定されていた第2波はすでに乗り切っていると言っても良い。
 あの白竜は、明らかにイレギュラーな存在だ。

 トシゾウはシオンが命を失う前にさっさと助けるつもりでいた。
 だがシオンは予想以上に善戦しているようだ。

「かーっ!しーちゃんの心トシゾウはん知らずや。ええかトシゾウはん。しーちゃんはトシゾウはんとの約束を果たすために頑張っとるんや。恋する乙女や。そら強いに決まっとるがな。いけいけしーちゃんいてこませー!」

「うぉぉぉ頑張れ嬢ちゃん!そこだ、ぶっとばせぇぇ!」

「はー、こりゃすごいねぇ。そういえば竜の肉はものすごく美味しいらしいね。夕食に使っていいかい?」

 防壁上にはギルドメンバー。どこかお祭りムードである。
 内壁の上からは兵士や冒険者。こちらは青い顔で、固唾を飲んで戦いを見守っている。

 二者の違いは、ここまでシオンが積み上げた信頼の差だ。
 ギルドメンバーはシオンの心配をしつつも、シオンが勝つことを疑っていない。

 人間っておもしろいなーとトシゾウは思った。

 …とはいえ。このままではシオンは負ける。どこかで助けなければならないだろう。

 援護があれば別だが、今回俺は半端に助けるつもりはない。
 シオンの動きが少しずつ鈍くなっていることを気付いている者はいるのだろうか。



 体が重い。これは、疲労だけではない。
 尾が迫る。回避を…、間に合わない!

 シオンは、自分の身体の変化に戸惑っていた。

バチィッ

 動きの鈍った一瞬の隙をついた尾の一撃が、ついにシオンを捕らえる。

「…うぅっ」

 弾き飛ばされながらもなんとか受け身を取るシオン。
 後ろへ跳ぶことで勢いを殺したが、受けたダメージは大きい。
 祖白竜の鎧がなければ戦闘不能になっていただろう。

 痛みが収まるのを待つ時間はない。
 距離が開けばブレスが来る。シオンは再び白竜へ迫ろうと体を屈め、

 身体の一部が凍ったように動かないことに気付いた。

 シオンの装備は短剣だ。戦いは常に接近戦。
 さらに一撃で仕留められない場合、魔物の返り血を浴びることになる。

 白竜の表皮は氷よりもはるかに冷たく、流れる血液も氷点下を下回る。
 戦いの熱の中でも、その冷気はシオンの熱を奪い続けていた。

 白竜は当然そのことを把握している。
 傷つきながらも、敵が動きを鈍らせるのを待っていたのだ。

 動けないシオンへ即座にブレスが放たれたのは必然である。

 クリスタルブレスがシオンを飲み込む。回避は不可能だ。

 KURWOOOOOOOOOO

 白竜は勝利の雄たけびを上げた。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...