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遠征軍と未踏の特殊区画と人の悪意
120 転移のイヤリング
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「コレット、レインベル領は任せたぞ」
「はい、領民のためにもトシゾウ様のためにも、さらに素晴らしい領地にしてみせますわ」
「うむ、期待している」
当分の間、俺たちとコレットは別行動することになる。
少なくともレインベル領が安定するまでは、コレットは領主としての仕事に専念してもらうつもりだ。
まだ決定ではないが、レインベル領に設置する冒険者ギルド支部の代表も兼任することになるだろう。
俺の目的のためにコレットはなくてはならない存在となった。
コレットは優秀で頼りになる。
今回の件も、ゼベルの妨害がなければボスが復活することもなかったはずだ。
ゼベルの妨害を退け、他種族との連携が強化された今、コレットがいればレインベル領の繁栄は約束されたも同然だろう。
「コレット、これをお前に渡しておこう」
懐から紫色に光るイヤリングを取り出し、コレットに手渡す。
「これは…、トシゾウ様が転移の際に使用されている魔道具と似ていますわね」
「ああ、転移に使用している【迷宮主の紫水晶】を俺のスキル【無限工房ノ主】で解析、複製したものだ。それなりに貴重な素材を使用している」
「迷宮主…。どう考えてもとんでもない物だとしか思えませんわ」
「【転移のイヤリング】とでも名付けるか。迷宮の力が及ぶ土地内での転移と通信が可能だ。使用には魔力を消費する。今のコレットなら個人で転移や通信を行う場合は問題ないだろう。短距離の転移もできるから、場合によっては戦闘でも使用できる」
「…世界の常識が書き換わりそうな魔道具ですわね。ここのところ衝撃的な話ばかり聞いているので、いろいろと麻痺していてもはや驚こうにも驚けないのが幸いでしょうか」
ゼベルの件が片付いた後、俺が前世の記憶を持っていることや、迷宮主の存在などについては一通り説明してある。
ベッドの上でぐったりしているコレットに話した時は聞いているかわからなかったが、どうやらしっかりと覚えていたらしい。
受け取ったイヤリングをじっと見つめるコレット。
「…これはシオンにも渡しているのですか?」
コレットが俺に尋ねる。
なんとなく含意のありそうな話し方だ。青い瞳から覗くのは何の感情だろうか。
「…まだだな。必要な者には渡していくつもりだが。コレットとは距離が離れるからな。連絡を密にするために必要だから最優先だ」
「そうですか。…トシゾウ様、魔道具を他の者に渡すときはイヤリング以外の形で配るようお願いできませんか?」
「ふむ、問題ないぞ。では他の者に渡すときは腕輪の形にでも加工するとしよう」
レインベル領に関係のないことでコレットが願いを口にするのは初めてだ。
俺は所有物を大切にする。価値ある所有物ならなおさらだ。それがコレットの望みならできるだけ叶えてやるべきだろう。
「ふふ。ではトシゾウ様から贈られたイヤリングを持っているのは私だけになりますわね。ありがとうございます。大切にしますわね」
はにかみ、上目遣いで見上げてくるコレット。
コレットのこの表情を見るのはこれで二度目だ。
なんとなく先日の夜を思い出し少し落ち着かない。
スッキリしたばかりの人族の本能が刺激される。
欲望のままに抱きしめ…かけて踏みとどまる。さすがにシオンの目の前でというのも問題だ。
「う、うむ。気に入ったのなら何よりだ。お前は俺のものだ。用事があればいつでも転移で訪ねてこい」
「はい。その、用事があるとき以外でも訪ねていいでしょうか。シオンにも会いに行きたいですし、…それにちょっと息抜きがしたい時があるかもしれませんわ」
「もちろんだ、自由に使え。コレットは俺の所有物であり、ギルドメンバーの一員だ。シオンはもちろん他のメンバーと交流を深めておくことも今後のためになるだろうからな。冒険者ギルドに専用の部屋を用意しておく。いつでも転移で飛んで来ればよい」
「へ、部屋ですか。それは俗に言う…い、いえなんでもありませんわ」
口に出しかけた言葉を詰まらせ顔を赤くするコレット。
頭の回転の速さゆえか、コレットには妄想癖があるらしい。
想像力豊かなのは良いことだ。それは危機を未然に防ぐことにもつながる。ただ今回は…。
「コレットはスケベだな」
「すけ!?っち、違います!そのようなことなど考えておりませんわ!」
必死で否定するコレット。
一瞬で“そのようなこと”に思い当たるあたり、考えていないはずはないのだが。
「冗談だ。普通の部屋だ。ラ・メイズで滞在する場合などに使え。だが溜まったら発散しに行くから用意しておけ。息抜きは必要だからな」
「もう…。…でもトシゾウ様が望むのなら仕方ないですわね。私はトシゾウ様の所有物ですし…、そ、その、…その時はお待ちしておりますわ…」
小さな声でモニョモニョとつぶやくコレット。白い肌が恥じらいで真っ赤になっている。素晴らしい表情だ。
顔を赤くしたコレットにこんな風に照れられて、グラリとこない男はいないだろう。
独占欲を見せるコレットも良いが、素直なコレットも良いものだ。
人間の女は強かである。いつの間にやら主導権を握られそうだったのだが、適度にからかうことで俺が握り返すことに成功したようだ。
「では冒険者ギルドに戻るとするか」
「コレット、またね」
「ええシオン、仕事の休憩の時にまた会いに行くわね」
シオンとコレットが別れの挨拶をしている。
距離的にはそれなりに離れるのだが【転移のイヤリング】を使用すれば一瞬で会えるため、涙の別れは起こらない。なんとなく見てみたかった気もするが…。
去り際、シオンがコレットの耳元で何かを囁いた。
それを聞いたコレットが真っ赤になっている。
きっちりと調整された声量だ。普通の人間より耳が良い俺でも聞き取れない。
二人がこちらをチラチラと見ているので俺のことについて何かを話しているのだろう。
二人が何を話しているのかが気になる。なぜこれほど気になるのかはわからない。
主人の前で堂々と内緒話をすることを、シオンの成長と喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。
だが、楽しそうにじゃれ合うシオンとコレットを見ていると、こういうのも良いのかもしれないと思った。
今回の件で、俺はコレットという宝を手に入れた。
コレットはシオンを、シオンはコレットをより価値のある宝へと押し上げている。
そこに余計な口をはさむのは俺のルールに反するだろう。
転移間際、イヤリングを身に着けたコレットがほほえんだ。
耳元で光る紫のイヤリングが、明るく美しいコレットの顔に艶やかで大人びた雰囲気を添えていた。
コレット・レインベル
年 齢:17
種 族:人
レベル:38
スキル:【不撓不屈】
装 備:青竜のレイピア 青龍の小盾 青竜の鎧 白王狼の靴 不死鳥の尾羽 転移のイヤリング
「はい、領民のためにもトシゾウ様のためにも、さらに素晴らしい領地にしてみせますわ」
「うむ、期待している」
当分の間、俺たちとコレットは別行動することになる。
少なくともレインベル領が安定するまでは、コレットは領主としての仕事に専念してもらうつもりだ。
まだ決定ではないが、レインベル領に設置する冒険者ギルド支部の代表も兼任することになるだろう。
俺の目的のためにコレットはなくてはならない存在となった。
コレットは優秀で頼りになる。
今回の件も、ゼベルの妨害がなければボスが復活することもなかったはずだ。
ゼベルの妨害を退け、他種族との連携が強化された今、コレットがいればレインベル領の繁栄は約束されたも同然だろう。
「コレット、これをお前に渡しておこう」
懐から紫色に光るイヤリングを取り出し、コレットに手渡す。
「これは…、トシゾウ様が転移の際に使用されている魔道具と似ていますわね」
「ああ、転移に使用している【迷宮主の紫水晶】を俺のスキル【無限工房ノ主】で解析、複製したものだ。それなりに貴重な素材を使用している」
「迷宮主…。どう考えてもとんでもない物だとしか思えませんわ」
「【転移のイヤリング】とでも名付けるか。迷宮の力が及ぶ土地内での転移と通信が可能だ。使用には魔力を消費する。今のコレットなら個人で転移や通信を行う場合は問題ないだろう。短距離の転移もできるから、場合によっては戦闘でも使用できる」
「…世界の常識が書き換わりそうな魔道具ですわね。ここのところ衝撃的な話ばかり聞いているので、いろいろと麻痺していてもはや驚こうにも驚けないのが幸いでしょうか」
ゼベルの件が片付いた後、俺が前世の記憶を持っていることや、迷宮主の存在などについては一通り説明してある。
ベッドの上でぐったりしているコレットに話した時は聞いているかわからなかったが、どうやらしっかりと覚えていたらしい。
受け取ったイヤリングをじっと見つめるコレット。
「…これはシオンにも渡しているのですか?」
コレットが俺に尋ねる。
なんとなく含意のありそうな話し方だ。青い瞳から覗くのは何の感情だろうか。
「…まだだな。必要な者には渡していくつもりだが。コレットとは距離が離れるからな。連絡を密にするために必要だから最優先だ」
「そうですか。…トシゾウ様、魔道具を他の者に渡すときはイヤリング以外の形で配るようお願いできませんか?」
「ふむ、問題ないぞ。では他の者に渡すときは腕輪の形にでも加工するとしよう」
レインベル領に関係のないことでコレットが願いを口にするのは初めてだ。
俺は所有物を大切にする。価値ある所有物ならなおさらだ。それがコレットの望みならできるだけ叶えてやるべきだろう。
「ふふ。ではトシゾウ様から贈られたイヤリングを持っているのは私だけになりますわね。ありがとうございます。大切にしますわね」
はにかみ、上目遣いで見上げてくるコレット。
コレットのこの表情を見るのはこれで二度目だ。
なんとなく先日の夜を思い出し少し落ち着かない。
スッキリしたばかりの人族の本能が刺激される。
欲望のままに抱きしめ…かけて踏みとどまる。さすがにシオンの目の前でというのも問題だ。
「う、うむ。気に入ったのなら何よりだ。お前は俺のものだ。用事があればいつでも転移で訪ねてこい」
「はい。その、用事があるとき以外でも訪ねていいでしょうか。シオンにも会いに行きたいですし、…それにちょっと息抜きがしたい時があるかもしれませんわ」
「もちろんだ、自由に使え。コレットは俺の所有物であり、ギルドメンバーの一員だ。シオンはもちろん他のメンバーと交流を深めておくことも今後のためになるだろうからな。冒険者ギルドに専用の部屋を用意しておく。いつでも転移で飛んで来ればよい」
「へ、部屋ですか。それは俗に言う…い、いえなんでもありませんわ」
口に出しかけた言葉を詰まらせ顔を赤くするコレット。
頭の回転の速さゆえか、コレットには妄想癖があるらしい。
想像力豊かなのは良いことだ。それは危機を未然に防ぐことにもつながる。ただ今回は…。
「コレットはスケベだな」
「すけ!?っち、違います!そのようなことなど考えておりませんわ!」
必死で否定するコレット。
一瞬で“そのようなこと”に思い当たるあたり、考えていないはずはないのだが。
「冗談だ。普通の部屋だ。ラ・メイズで滞在する場合などに使え。だが溜まったら発散しに行くから用意しておけ。息抜きは必要だからな」
「もう…。…でもトシゾウ様が望むのなら仕方ないですわね。私はトシゾウ様の所有物ですし…、そ、その、…その時はお待ちしておりますわ…」
小さな声でモニョモニョとつぶやくコレット。白い肌が恥じらいで真っ赤になっている。素晴らしい表情だ。
顔を赤くしたコレットにこんな風に照れられて、グラリとこない男はいないだろう。
独占欲を見せるコレットも良いが、素直なコレットも良いものだ。
人間の女は強かである。いつの間にやら主導権を握られそうだったのだが、適度にからかうことで俺が握り返すことに成功したようだ。
「では冒険者ギルドに戻るとするか」
「コレット、またね」
「ええシオン、仕事の休憩の時にまた会いに行くわね」
シオンとコレットが別れの挨拶をしている。
距離的にはそれなりに離れるのだが【転移のイヤリング】を使用すれば一瞬で会えるため、涙の別れは起こらない。なんとなく見てみたかった気もするが…。
去り際、シオンがコレットの耳元で何かを囁いた。
それを聞いたコレットが真っ赤になっている。
きっちりと調整された声量だ。普通の人間より耳が良い俺でも聞き取れない。
二人がこちらをチラチラと見ているので俺のことについて何かを話しているのだろう。
二人が何を話しているのかが気になる。なぜこれほど気になるのかはわからない。
主人の前で堂々と内緒話をすることを、シオンの成長と喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。
だが、楽しそうにじゃれ合うシオンとコレットを見ていると、こういうのも良いのかもしれないと思った。
今回の件で、俺はコレットという宝を手に入れた。
コレットはシオンを、シオンはコレットをより価値のある宝へと押し上げている。
そこに余計な口をはさむのは俺のルールに反するだろう。
転移間際、イヤリングを身に着けたコレットがほほえんだ。
耳元で光る紫のイヤリングが、明るく美しいコレットの顔に艶やかで大人びた雰囲気を添えていた。
コレット・レインベル
年 齢:17
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