超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
142 / 172
冒険者ギルド世界を変える

140 シオンの挑発

しおりを挟む
「なんだ?まさかあのチビがシオン殿だというのか?あれが勇者で副ギルドマスターだと?まだガキじゃないか」

「白狼種とはいえ、あの年ではレベルも知れているだろう。もしやお飾りなのか」

 小柄な少女であるシオンを見て侮りと疑問の声を上げる獣人たち。
 ラ・メイズに訪れたばかりの者はシオンのことを噂でしか知らないため、一部の例外であるらしい。

「口を閉じろ。バカ者どもが。外見と強さは関係ないことを知らぬわけではないだろう」

 侮るような態度を見せる獣人たちを諫める一人の獣人の声が響く。
 さして大きな声ではなかったが、その声に他の獣人たちが口をつぐむ。
 灰色の毛を持つ獣人たちの中ではどちらかというと白みの強い、銀色に近い毛を持つ獣人だ。どうやら灰狼族の長らしい。もし剥ぎ取れば良い毛皮になるだろう。

 自分の担ごうとしている神輿のことを碌に調べていないのは愚かなことだが、さすがに長はまだマシであるようだ。
 灰狼の長はシオンに向き直り、慇懃に礼をした。

「若造どもが失礼を致しました。我ら灰狼種一同、シオン殿に助力をするべく荒野より参じました。シオン殿の指揮の元、獣人の勢力をさらに拡大し、増長する人族に楔を打ち込みましょう。我ら灰狼、荒野でシオン殿のご活躍を耳にした時は胸のすくような…」

 大真面目に力説を始める長。そこには人族との確執が明確に滲んでいる。
 戦闘班の報告通りで間違いないらしい。対するシオンは不機嫌そうな表情を崩さずに苦笑した。

「勘違いしないでください。冒険者ギルドはそんなちっぽけな組織ではありません。種族の優位を主張したいなら別の場所でやってください」

 衆目の中、明確に灰狼の長の申し出を断るシオン。
 その堂々とした振る舞いにかつて拾い屋であった時のおどおどとした面影はどこにもない。

「なっ、我々の悲願をちっぽけだと愚弄されるのか」

 頭から否定されるとは考えていなかったのだろう。灰狼の長が顔を顰める。

「そうではないです。私は人族に虐げられながら、長い間拾い屋をしてきました。皆さんの悔しさ、苦しさを理解できます」

「おお、ならば…」

「でも人族が獣人を嫌うのは、獣人が野心を見せたからでもあります。外から見れば、どっちもどっちです」

「それは…、あれはそもそも人族が…」

 灰狼の長は納得できない様子だ。

 だがシオンの言っていることは正しい。
 獣人は過去に、人族を廃し人族の領土を奪い取ろうとしたことがあった。
 人族至上主義は行き過ぎだが、人族が他種族を遠ざけたことにも一応の理由はあるのだ。

「冒険者ギルドでは、種族は関係ありません。みんなで仲良く迷宮に潜りましょう。人族でも獣人でも、冒険者ギルドの邪魔になるのなら力づくで調整します」

「お戯れを。そのようなことができるとお思いか」

「何が戯れですか?人族と獣人が仲良くなることですか?それとも実力不足だと言うのですか?」

「両方です。人族が我々を受け入れるとは思えませぬ」

「私は元拾い屋の獣人です。でも今は人族の皆さんとも仲良くしています。みんな良い人たちです。人族至上主義者の人たちはもう力を失いました。冒険者の皆さんの多くは、獣人に対して差別意識を持っていません。今なら友達になることもできます」

「夢物語です。少なくとも我々灰狼種は人族に尻尾を振るくらいなら死を選びます。それに今を逃せば、人族はまた増長して我らを迫害するでしょう」

「別に尻尾を振る必要はないです。対等な立場として認めるだけです。それに無理に仲良くする必要はありません。迷宮に制限なしで潜れるのは皆さんにとっても大きな利益があるはずです。今は冒険者ギルドの力を信じて、任せてくれませんか?」

「確かに、獣人は力ある者に敬意を払います。しかし獣人全てを力で従えることなど不可能です。我々が気持ちを抑えても、すぐに他の獣人が騒ぎを起こすでしょう。冒険者ギルドの力は、全ての獣人を従えるほどなのですか?それができなければ遠からず争いが起こるでしょう」

「できます。少なくともあなたたちを倒すだけなら、私一人で十分です」

 まるで挑発するかのように、毅然と言い放つシオン。

「ばかな」

 灰狼の長はシオンの宣言に面食らったようだが、すぐに獰猛な笑みを浮かべる。
 お前たちなど自分一人にも及ばない。
 主張を異にする相手にそこまで侮られたら頭を下げ続けることなどでできはしない。
 それが荒野に生きる獣人の誇りであり、限界である。

 できるものならやってみろ。長の顔にはそう書いてある。
 他の獣人たちも隠しきれない闘争の色を浮かべ始めた。
 こういう相手は一度叩いておくべきだと考えたシオンの目論見通りに。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...