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冒険者ギルド世界を変える
141 シオンの勧誘
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「…それではこうしましょう。私に勝てればすべてあなたの望み通りにします。でも私に負けたら私がボスです。群れの下っ端として、ギルドマスターであるトシゾウ様のために働いてください」
すかさず駄目押しとばかりに条件を提示するシオン。
さすがにシオンは獣人の思考をよく理解している。
こうまで言われて黙っていられるような彼らではないし、その上で賭けた条件に従わないのはそれもまた彼らの誇りが邪魔をする。
これで条件が整ったわけだ。
「…どうやらシオン殿は勇者と呼ばれて少々のぼせておられるようだ。我々は誇り高き灰狼の精鋭。いくらなんでも、我々全員を相手にしては勝ち目などありませんぞ。そもそも、シオン殿はそこまでの権力をお持ちなのですかな?」
案の定、獣人たちの怒りは沸点に達しつつあるようだ。
獣人の長も、お前は本当にそんな権力を持つのかと侮蔑混じりに鼻を鳴らす。
「私は群れの二番手です。ボスであるトシゾウ様の許可も出ています」
冒険者ギルドを一つの群れだと捉えて説明するシオン。らしい発想だ。
副ギルドマスターと言うよりも、獣人にとって理解しやすいだろう。
普段は素直で大人しいところもあるシオンだが、たまに獣人としての顔を覗かせる。
上下関係の扱い方を理解しているというか…。そんな時のシオンはとても凛々しい。
俺より格下の存在にへりくだる必要はない。
いつかの俺の言いつけを忠実に守っているようだ。
シオンは美少女だ。小柄でも芯のある立ち姿、その毅然とした態度は絵になっている。
勇者という肩書も手伝って、シオンに熱い眼差しが集まる。
シオンは勇者として、頼りがいのある副ギルドマスターとして、その存在感を示している。
「ギルドの目的と理想を馬鹿にするのは許さないです」
冒険者ギルドが謳う種族平等の理念は、列に並ぶ者たちも知っている。
しかし人族の中には、ギルドによって自分たちの権利が脅かされるのではないかと心配している者がいることも事実だ。
種族の平等。
今回の一件はそれが綺麗ごとではなく事実であること、それを実現する力を持っていることを示す良い機会になるかもしれないな。
「ギルドマスターのトシゾウだ。この件について、副ギルドマスターのシオンにすべてを任せよう。シオンに勝てればギルドの決定権をお前たちに譲ろう。ここにいる者たちが証人だ。その代わり負ければ、冒険者ギルドの意に沿ってもらう」
俺の方からもダメ押しをしておく。
今の話を聞いていたなと、念を押すように周囲の人間に視線を向ける。
周囲の人間たちが首肯する。
一部の者は憐れみの視線を獣人へ向けているのだが、頭に血が上り、引くに引けない獣人たちはそれに気づかない。
その憐憫の視線のことを、シオンを心配している目だとでも思っているのだろうか。
「そういうことです。あなたも獣人なら、力で要望を通してみればどうですか。もちろん尻尾を巻いて逃げても良いです。冒険者ギルドはあなたたちを追いません」
「…吐いた唾は飲めんぞ、小娘」
「私のセリフです」
売り言葉に買い言葉。どうやら長の脳みそは完全に沸騰したようだ。
一見冷静そうに見えたが。あれしきの挑発で熱くなるようなら、迷宮で早死にしそうだな。それなりに強いのにもったいない。
話がまとまったら戦闘班に組み込んで教育したほうが良いかもしれない。
灰狼の長がその両手を胸の前で交差させる。
それを見た他の獣人たちも、長と同じ構えをとる。
対するシオンも両手をクロスさせた。
獣人流の決闘の所作なのだろう。
獣人の間には、種族ごとにそういった所作があるようでなかなかに興味深い。
「シオン、とてもかっこいいですわ」
目をキラキラさせて親友に熱い視線を送るコレット。
コレットの決闘の時の逆パターンだな。似ていないようで似ている二人は面白い。
「結局獣人はそればっかやなぁ。まぁしょうもない水掛け論になるよりは分かりやすいんやけどな。せやから人族に出し抜かれるんやで…」
そして微妙に獣人を馬鹿にした発言をかますベル。コレットとの温度差がひどい。
合理的な判断をするベルからすれば、感情論を振りかざしたり何でも力で解決しようとするのは馬鹿らしく感じるのだろう。
意外に狡猾な発想をしつつも、なんだかんだで最後は力を神聖視するのが獣人だ。
その在り様は俺好みだ。殴って分かるのなら話が早いからな。
獣人は有能だ。馬鹿でもない。だが先入観がその瞳を曇らせている。
全ては変化していく。過去の価値観など、俺の求める冒険者ギルドには不要だ。
シオンが獣人たちの目を覚まさせられるなら良し、そうならないなら排除することになるだろう。
俺にとっては特に意味のない魔法契約が結ばれ、決闘の準備が整っていく。
シオンVS獣人20名か。…戦いになれば良いのだがな。
すかさず駄目押しとばかりに条件を提示するシオン。
さすがにシオンは獣人の思考をよく理解している。
こうまで言われて黙っていられるような彼らではないし、その上で賭けた条件に従わないのはそれもまた彼らの誇りが邪魔をする。
これで条件が整ったわけだ。
「…どうやらシオン殿は勇者と呼ばれて少々のぼせておられるようだ。我々は誇り高き灰狼の精鋭。いくらなんでも、我々全員を相手にしては勝ち目などありませんぞ。そもそも、シオン殿はそこまでの権力をお持ちなのですかな?」
案の定、獣人たちの怒りは沸点に達しつつあるようだ。
獣人の長も、お前は本当にそんな権力を持つのかと侮蔑混じりに鼻を鳴らす。
「私は群れの二番手です。ボスであるトシゾウ様の許可も出ています」
冒険者ギルドを一つの群れだと捉えて説明するシオン。らしい発想だ。
副ギルドマスターと言うよりも、獣人にとって理解しやすいだろう。
普段は素直で大人しいところもあるシオンだが、たまに獣人としての顔を覗かせる。
上下関係の扱い方を理解しているというか…。そんな時のシオンはとても凛々しい。
俺より格下の存在にへりくだる必要はない。
いつかの俺の言いつけを忠実に守っているようだ。
シオンは美少女だ。小柄でも芯のある立ち姿、その毅然とした態度は絵になっている。
勇者という肩書も手伝って、シオンに熱い眼差しが集まる。
シオンは勇者として、頼りがいのある副ギルドマスターとして、その存在感を示している。
「ギルドの目的と理想を馬鹿にするのは許さないです」
冒険者ギルドが謳う種族平等の理念は、列に並ぶ者たちも知っている。
しかし人族の中には、ギルドによって自分たちの権利が脅かされるのではないかと心配している者がいることも事実だ。
種族の平等。
今回の一件はそれが綺麗ごとではなく事実であること、それを実現する力を持っていることを示す良い機会になるかもしれないな。
「ギルドマスターのトシゾウだ。この件について、副ギルドマスターのシオンにすべてを任せよう。シオンに勝てればギルドの決定権をお前たちに譲ろう。ここにいる者たちが証人だ。その代わり負ければ、冒険者ギルドの意に沿ってもらう」
俺の方からもダメ押しをしておく。
今の話を聞いていたなと、念を押すように周囲の人間に視線を向ける。
周囲の人間たちが首肯する。
一部の者は憐れみの視線を獣人へ向けているのだが、頭に血が上り、引くに引けない獣人たちはそれに気づかない。
その憐憫の視線のことを、シオンを心配している目だとでも思っているのだろうか。
「そういうことです。あなたも獣人なら、力で要望を通してみればどうですか。もちろん尻尾を巻いて逃げても良いです。冒険者ギルドはあなたたちを追いません」
「…吐いた唾は飲めんぞ、小娘」
「私のセリフです」
売り言葉に買い言葉。どうやら長の脳みそは完全に沸騰したようだ。
一見冷静そうに見えたが。あれしきの挑発で熱くなるようなら、迷宮で早死にしそうだな。それなりに強いのにもったいない。
話がまとまったら戦闘班に組み込んで教育したほうが良いかもしれない。
灰狼の長がその両手を胸の前で交差させる。
それを見た他の獣人たちも、長と同じ構えをとる。
対するシオンも両手をクロスさせた。
獣人流の決闘の所作なのだろう。
獣人の間には、種族ごとにそういった所作があるようでなかなかに興味深い。
「シオン、とてもかっこいいですわ」
目をキラキラさせて親友に熱い視線を送るコレット。
コレットの決闘の時の逆パターンだな。似ていないようで似ている二人は面白い。
「結局獣人はそればっかやなぁ。まぁしょうもない水掛け論になるよりは分かりやすいんやけどな。せやから人族に出し抜かれるんやで…」
そして微妙に獣人を馬鹿にした発言をかますベル。コレットとの温度差がひどい。
合理的な判断をするベルからすれば、感情論を振りかざしたり何でも力で解決しようとするのは馬鹿らしく感じるのだろう。
意外に狡猾な発想をしつつも、なんだかんだで最後は力を神聖視するのが獣人だ。
その在り様は俺好みだ。殴って分かるのなら話が早いからな。
獣人は有能だ。馬鹿でもない。だが先入観がその瞳を曇らせている。
全ては変化していく。過去の価値観など、俺の求める冒険者ギルドには不要だ。
シオンが獣人たちの目を覚まさせられるなら良し、そうならないなら排除することになるだろう。
俺にとっては特に意味のない魔法契約が結ばれ、決闘の準備が整っていく。
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