超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
170 / 172
新章

169 人間たちの勇躍

しおりを挟む
 クラリッサらの助けもあり目まぐるしく書き変わる人間の版図は、その中で生きる人々とその外で活動する魔物たちにも多くの影響を与えているようだった。

 人間の版図は縮小を続けていたため、どうしてもそこから溢れた人間が発生していた。
 そこに新たな土地が生まれたことで新たな需要が発生し、多くの人間が移民として流れていった。
 従来の土地で肩身を狭くして生きていた者は、新天地を求めるフロンティアスピリットを燃やし、解放されたばかりの土地を整えるために猫の手も借りたい者たちがそれを支援した。

 結果として餓死者は激減し、自分たちの土地を手に入れた者たちはその発展にまい進した。
 地理的にも経済的にもそれらの中心となったラ・メイズは俄に活気づき、空前の賑わいを見せている。

 反面、解放された特殊区画の多くは人間の領域の外縁部に位置するため、荒野で発生する魔物からの防衛に頭を悩ませているらしい。

 なにせできたばかりの領地である。いくら豊かな土地であってもそれだけでは生きていけない。
 インフラは迷宮に依存するとしても、まずは土地を整えて防壁を築くところから始めなければならないのだ。

 しかしそんな大事業を魔物が悠長に待ってくれるはずもない。
 迷宮の力に守られた領域であっても、特殊区画を開放した遠征軍と中央からの援軍の力がなくては侵入してくる魔物に土地が荒らされてしまうのだ。

 人間は迷宮の加護の存在を経験則として知っている。
 領地に侵入した魔物が弱り、あるいは少数しか侵入してこないことは既知の事実で、知恵ある魔物がそれについて言及したこともあるらしい。

 ともあれ、迷宮の加護があっても防衛に力を割かねばならないことは間違いない。
 そのあたりの細々とした調整は人族の専門分野であり、本来なら他種族に戦闘力で後れを取りがちな人族の強みでもあった。
 悪い事例を挙げるならば、過去に迷宮を人族が独占できたきっかけであるとも言える。

 他種族にとっても特殊区画の維持には人族の助力が必須であり、そのあたりの事情から種族間の融和も少しずつ深まってきているようだった。


 一連の流れは当初の予想よりもかなり早いペースで進んでいる。
 いくつか考えられる理由はある。
 一番の理由はやはり冒険者ギルドの支援が強力であるということだろう。

 次に、かつて人間は自力で50層へ到達していたことから最低限のノウハウと地力を保持していたということだろう。

 鬱屈とした先細りの打開と積み重ねられてきたノウハウ、そこに他種族と冒険者ギルドの力が上手く混じり合い、この急激な発展は続いている。

 そして成長しているのは人間全体の話だけではない。
 トシゾウの介入から始まった一連の改革は、トシゾウに近しい場所にいる者たちの力と立ち位置を大きく変化させていた。

「今日はお城の兵士さんと迷宮に行ってきます」

 シオンは副ギルドマスターとしてギルドの仕事をこなし、時間があるときは他の冒険者や兵士と訓練や迷宮に潜ることで経験を高めている。
 【白銀】シオンの名はラ・メイズを飛び越え、シオンの存在を知らない者はもはや存在しない。

 それは他の新たな勇者たちについても同様だ。

 迷宮深層に魔物を切り裂き吹き飛ばす快音が響く。
 新たな素材で作られた爪と斧がその存在を誇示する。
 新たな武器を得て、さらにレベル制限を解除された他種族の勇者たちは快進撃を続けていた。

「ははは、迷宮は良いな、力が漲ってくるようだ。またコウエンと閣下とともに狩りをしてみたいものだ。今ならあの蛇のそっ首を一人で吹き飛ばしてやれるだろう」

「おいゴルオン。ちゃんと素材は拾ってくれ。エルフ領への納期が迫っとる」

「わかっている。それで当のルシアはどうした」

「あー、なんでも家の都合で休みだそうだわい」

「ふん、子どものような言い訳だな」

「いやいや、あれであいつはエルフの偉いさんだ。そういうこともあるのだろうて」

 シオンをはじめ他に勇者パーティとして登録されたゴルオン、ドワグル、ルシアは、目まぐるしく書き換えられる迷宮の最前線で活動を続けている。
 時に競い、時に協力してそれぞれの領地を豊かにしているようだ。

 元々力のある者たちだ。
 レベル制限が解除されたこと、ラ・メイズを中心に技術革新の波が起こったことにより瞬く間に頭角をあらわし、当代の勇者パーティの一員として勇名を馳せていた。

 また、迷宮開放によってからもたらされるようになった貴重な素材の数々は彼らエルフやドワーフの領域を潤し、彼らの高い技術力を生かした商品を人族の商人がこぞって扱っている。

「勇者扱いにはいまだになれませんわね…。でも移住者が素直に従ってくれるので助かっていますわ」

 勇者【蒼久】のコレットはレインベル領主として内政に専念しているため、他の勇者パーティに比べ直近の名声は一歩劣るものの、勇者の名声、冒険者ギルド支部の一号店、ラ・メイズと他種族との中継点である地理的な利点を最大限に活用し、レインベル領を空前の大発展へと導いていた。

 戦闘班長としての仕事があるコウエンも迷宮へ潜る機会こそゴルオンたちより少なかったが、種族の融和に伴って起こる摩擦を緩和するために奔走し、持ち前の高潔な性格と相まって種族間のバランサーとして忙しく働いている。

「シビルフィズ領の食堂はあんたに任せるよ、しっかりやんな!他人の色恋にキャーキャー言ってる余裕があるなら、あんたも向こうで良い人を見つけてくるんだよ」

「は、はい!」

 以前ギルドマスターにミーハーな視線を向けて騒いでいた料理班の見習いも出世したようだ。

「エルダは厳しすぎるわい。こいつの作る飯も美味いからきっと上手くやるだろう。なんならワシが誰か紹介してやっても…」

「何言ってるんだいドワイト。あんたが紹介するのは大酒飲みばかりじゃないか。ちゃんと仕事もできるんだろうね」

「お、おう、藪蛇だったわい。ワシもそろそろ次の現場へ行ってくるか」

 料理班長のエルダは冒険者ギルドの各食堂をまとめるオーナーとなり、ドワイトは次々と建設が続く冒険者ギルドの新規支店を飛び回りながら支持を飛ばしている。
 二人は新たに解放された特殊区画にも一枚噛んでおり、その地の気候条件に適した食事や建築について他の専門職たちと日々意見を交わしている。
 まさに冒険者ギルドにとって縁の下の力持ちとしてなくてはならない存在となっていた。


 一般的な冒険者の質の向上も顕著だ。
 彼らは新たな階層へ挑み、新たな素材を持ち帰り、そこから生まれた新たな装備を身に纏いまた新たな階層へ挑戦するという好循環の中にいる。

 その中でも冒険者ギルドの説明会に訪れていた参加者たちはベルベットが厳選した優秀な冒険者たちだ。
 特典満載の説明会に参加するという幸運に恵まれた彼らは見事にスタートダッシュを成功させ、今もそれに恥じぬ活躍を見せている。

 トシゾウもその名前を覚えているカルストとセリカは35層を超える冒険者となっていた。
 さらに特殊区画開放の際には最前線で戦い、特殊区画【朝霧の浜辺】の共同領主という肩書を手に入れていた。

「左団扇ですぅぅ!サンセットビーチで金貨風呂ですうぅぅ!」

 とはしゃいでいたセリカだったが、残念ながら今日もカルストに引きずられ迷宮へ潜っているとベルベットが酒の肴に口にしていた。なお、朝霧の浜辺に夕暮れは来ない。

 他にも冒険者の一部が30層を超えた証である冒険者ランクB級に到達し、前勇者の細目男に勝る力を身に着けつつある。
 35層を超えるとエリクサーの素材をドロップする魔物が現れる。
 エリクサーが出回り始めれば迷宮の攻略はさらに加速するだろうというのがトシゾウの予測だ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...