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新章
169 人間たちの勇躍
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クラリッサらの助けもあり目まぐるしく書き変わる人間の版図は、その中で生きる人々とその外で活動する魔物たちにも多くの影響を与えているようだった。
人間の版図は縮小を続けていたため、どうしてもそこから溢れた人間が発生していた。
そこに新たな土地が生まれたことで新たな需要が発生し、多くの人間が移民として流れていった。
従来の土地で肩身を狭くして生きていた者は、新天地を求めるフロンティアスピリットを燃やし、解放されたばかりの土地を整えるために猫の手も借りたい者たちがそれを支援した。
結果として餓死者は激減し、自分たちの土地を手に入れた者たちはその発展にまい進した。
地理的にも経済的にもそれらの中心となったラ・メイズは俄に活気づき、空前の賑わいを見せている。
反面、解放された特殊区画の多くは人間の領域の外縁部に位置するため、荒野で発生する魔物からの防衛に頭を悩ませているらしい。
なにせできたばかりの領地である。いくら豊かな土地であってもそれだけでは生きていけない。
インフラは迷宮に依存するとしても、まずは土地を整えて防壁を築くところから始めなければならないのだ。
しかしそんな大事業を魔物が悠長に待ってくれるはずもない。
迷宮の力に守られた領域であっても、特殊区画を開放した遠征軍と中央からの援軍の力がなくては侵入してくる魔物に土地が荒らされてしまうのだ。
人間は迷宮の加護の存在を経験則として知っている。
領地に侵入した魔物が弱り、あるいは少数しか侵入してこないことは既知の事実で、知恵ある魔物がそれについて言及したこともあるらしい。
ともあれ、迷宮の加護があっても防衛に力を割かねばならないことは間違いない。
そのあたりの細々とした調整は人族の専門分野であり、本来なら他種族に戦闘力で後れを取りがちな人族の強みでもあった。
悪い事例を挙げるならば、過去に迷宮を人族が独占できたきっかけであるとも言える。
他種族にとっても特殊区画の維持には人族の助力が必須であり、そのあたりの事情から種族間の融和も少しずつ深まってきているようだった。
一連の流れは当初の予想よりもかなり早いペースで進んでいる。
いくつか考えられる理由はある。
一番の理由はやはり冒険者ギルドの支援が強力であるということだろう。
次に、かつて人間は自力で50層へ到達していたことから最低限のノウハウと地力を保持していたということだろう。
鬱屈とした先細りの打開と積み重ねられてきたノウハウ、そこに他種族と冒険者ギルドの力が上手く混じり合い、この急激な発展は続いている。
そして成長しているのは人間全体の話だけではない。
トシゾウの介入から始まった一連の改革は、トシゾウに近しい場所にいる者たちの力と立ち位置を大きく変化させていた。
「今日はお城の兵士さんと迷宮に行ってきます」
シオンは副ギルドマスターとしてギルドの仕事をこなし、時間があるときは他の冒険者や兵士と訓練や迷宮に潜ることで経験を高めている。
【白銀】シオンの名はラ・メイズを飛び越え、シオンの存在を知らない者はもはや存在しない。
それは他の新たな勇者たちについても同様だ。
迷宮深層に魔物を切り裂き吹き飛ばす快音が響く。
新たな素材で作られた爪と斧がその存在を誇示する。
新たな武器を得て、さらにレベル制限を解除された他種族の勇者たちは快進撃を続けていた。
「ははは、迷宮は良いな、力が漲ってくるようだ。またコウエンと閣下とともに狩りをしてみたいものだ。今ならあの蛇のそっ首を一人で吹き飛ばしてやれるだろう」
「おいゴルオン。ちゃんと素材は拾ってくれ。エルフ領への納期が迫っとる」
「わかっている。それで当のルシアはどうした」
「あー、なんでも家の都合で休みだそうだわい」
「ふん、子どものような言い訳だな」
「いやいや、あれであいつはエルフの偉いさんだ。そういうこともあるのだろうて」
シオンをはじめ他に勇者パーティとして登録されたゴルオン、ドワグル、ルシアは、目まぐるしく書き換えられる迷宮の最前線で活動を続けている。
時に競い、時に協力してそれぞれの領地を豊かにしているようだ。
元々力のある者たちだ。
レベル制限が解除されたこと、ラ・メイズを中心に技術革新の波が起こったことにより瞬く間に頭角をあらわし、当代の勇者パーティの一員として勇名を馳せていた。
また、迷宮開放によってからもたらされるようになった貴重な素材の数々は彼らエルフやドワーフの領域を潤し、彼らの高い技術力を生かした商品を人族の商人がこぞって扱っている。
「勇者扱いにはいまだになれませんわね…。でも移住者が素直に従ってくれるので助かっていますわ」
勇者【蒼久】のコレットはレインベル領主として内政に専念しているため、他の勇者パーティに比べ直近の名声は一歩劣るものの、勇者の名声、冒険者ギルド支部の一号店、ラ・メイズと他種族との中継点である地理的な利点を最大限に活用し、レインベル領を空前の大発展へと導いていた。
戦闘班長としての仕事があるコウエンも迷宮へ潜る機会こそゴルオンたちより少なかったが、種族の融和に伴って起こる摩擦を緩和するために奔走し、持ち前の高潔な性格と相まって種族間のバランサーとして忙しく働いている。
「シビルフィズ領の食堂はあんたに任せるよ、しっかりやんな!他人の色恋にキャーキャー言ってる余裕があるなら、あんたも向こうで良い人を見つけてくるんだよ」
「は、はい!」
以前ギルドマスターにミーハーな視線を向けて騒いでいた料理班の見習いも出世したようだ。
「エルダは厳しすぎるわい。こいつの作る飯も美味いからきっと上手くやるだろう。なんならワシが誰か紹介してやっても…」
「何言ってるんだいドワイト。あんたが紹介するのは大酒飲みばかりじゃないか。ちゃんと仕事もできるんだろうね」
「お、おう、藪蛇だったわい。ワシもそろそろ次の現場へ行ってくるか」
料理班長のエルダは冒険者ギルドの各食堂をまとめるオーナーとなり、ドワイトは次々と建設が続く冒険者ギルドの新規支店を飛び回りながら支持を飛ばしている。
二人は新たに解放された特殊区画にも一枚噛んでおり、その地の気候条件に適した食事や建築について他の専門職たちと日々意見を交わしている。
まさに冒険者ギルドにとって縁の下の力持ちとしてなくてはならない存在となっていた。
一般的な冒険者の質の向上も顕著だ。
彼らは新たな階層へ挑み、新たな素材を持ち帰り、そこから生まれた新たな装備を身に纏いまた新たな階層へ挑戦するという好循環の中にいる。
その中でも冒険者ギルドの説明会に訪れていた参加者たちはベルベットが厳選した優秀な冒険者たちだ。
特典満載の説明会に参加するという幸運に恵まれた彼らは見事にスタートダッシュを成功させ、今もそれに恥じぬ活躍を見せている。
トシゾウもその名前を覚えているカルストとセリカは35層を超える冒険者となっていた。
さらに特殊区画開放の際には最前線で戦い、特殊区画【朝霧の浜辺】の共同領主という肩書を手に入れていた。
「左団扇ですぅぅ!サンセットビーチで金貨風呂ですうぅぅ!」
とはしゃいでいたセリカだったが、残念ながら今日もカルストに引きずられ迷宮へ潜っているとベルベットが酒の肴に口にしていた。なお、朝霧の浜辺に夕暮れは来ない。
他にも冒険者の一部が30層を超えた証である冒険者ランクB級に到達し、前勇者の細目男に勝る力を身に着けつつある。
35層を超えるとエリクサーの素材をドロップする魔物が現れる。
エリクサーが出回り始めれば迷宮の攻略はさらに加速するだろうというのがトシゾウの予測だ。
人間の版図は縮小を続けていたため、どうしてもそこから溢れた人間が発生していた。
そこに新たな土地が生まれたことで新たな需要が発生し、多くの人間が移民として流れていった。
従来の土地で肩身を狭くして生きていた者は、新天地を求めるフロンティアスピリットを燃やし、解放されたばかりの土地を整えるために猫の手も借りたい者たちがそれを支援した。
結果として餓死者は激減し、自分たちの土地を手に入れた者たちはその発展にまい進した。
地理的にも経済的にもそれらの中心となったラ・メイズは俄に活気づき、空前の賑わいを見せている。
反面、解放された特殊区画の多くは人間の領域の外縁部に位置するため、荒野で発生する魔物からの防衛に頭を悩ませているらしい。
なにせできたばかりの領地である。いくら豊かな土地であってもそれだけでは生きていけない。
インフラは迷宮に依存するとしても、まずは土地を整えて防壁を築くところから始めなければならないのだ。
しかしそんな大事業を魔物が悠長に待ってくれるはずもない。
迷宮の力に守られた領域であっても、特殊区画を開放した遠征軍と中央からの援軍の力がなくては侵入してくる魔物に土地が荒らされてしまうのだ。
人間は迷宮の加護の存在を経験則として知っている。
領地に侵入した魔物が弱り、あるいは少数しか侵入してこないことは既知の事実で、知恵ある魔物がそれについて言及したこともあるらしい。
ともあれ、迷宮の加護があっても防衛に力を割かねばならないことは間違いない。
そのあたりの細々とした調整は人族の専門分野であり、本来なら他種族に戦闘力で後れを取りがちな人族の強みでもあった。
悪い事例を挙げるならば、過去に迷宮を人族が独占できたきっかけであるとも言える。
他種族にとっても特殊区画の維持には人族の助力が必須であり、そのあたりの事情から種族間の融和も少しずつ深まってきているようだった。
一連の流れは当初の予想よりもかなり早いペースで進んでいる。
いくつか考えられる理由はある。
一番の理由はやはり冒険者ギルドの支援が強力であるということだろう。
次に、かつて人間は自力で50層へ到達していたことから最低限のノウハウと地力を保持していたということだろう。
鬱屈とした先細りの打開と積み重ねられてきたノウハウ、そこに他種族と冒険者ギルドの力が上手く混じり合い、この急激な発展は続いている。
そして成長しているのは人間全体の話だけではない。
トシゾウの介入から始まった一連の改革は、トシゾウに近しい場所にいる者たちの力と立ち位置を大きく変化させていた。
「今日はお城の兵士さんと迷宮に行ってきます」
シオンは副ギルドマスターとしてギルドの仕事をこなし、時間があるときは他の冒険者や兵士と訓練や迷宮に潜ることで経験を高めている。
【白銀】シオンの名はラ・メイズを飛び越え、シオンの存在を知らない者はもはや存在しない。
それは他の新たな勇者たちについても同様だ。
迷宮深層に魔物を切り裂き吹き飛ばす快音が響く。
新たな素材で作られた爪と斧がその存在を誇示する。
新たな武器を得て、さらにレベル制限を解除された他種族の勇者たちは快進撃を続けていた。
「ははは、迷宮は良いな、力が漲ってくるようだ。またコウエンと閣下とともに狩りをしてみたいものだ。今ならあの蛇のそっ首を一人で吹き飛ばしてやれるだろう」
「おいゴルオン。ちゃんと素材は拾ってくれ。エルフ領への納期が迫っとる」
「わかっている。それで当のルシアはどうした」
「あー、なんでも家の都合で休みだそうだわい」
「ふん、子どものような言い訳だな」
「いやいや、あれであいつはエルフの偉いさんだ。そういうこともあるのだろうて」
シオンをはじめ他に勇者パーティとして登録されたゴルオン、ドワグル、ルシアは、目まぐるしく書き換えられる迷宮の最前線で活動を続けている。
時に競い、時に協力してそれぞれの領地を豊かにしているようだ。
元々力のある者たちだ。
レベル制限が解除されたこと、ラ・メイズを中心に技術革新の波が起こったことにより瞬く間に頭角をあらわし、当代の勇者パーティの一員として勇名を馳せていた。
また、迷宮開放によってからもたらされるようになった貴重な素材の数々は彼らエルフやドワーフの領域を潤し、彼らの高い技術力を生かした商品を人族の商人がこぞって扱っている。
「勇者扱いにはいまだになれませんわね…。でも移住者が素直に従ってくれるので助かっていますわ」
勇者【蒼久】のコレットはレインベル領主として内政に専念しているため、他の勇者パーティに比べ直近の名声は一歩劣るものの、勇者の名声、冒険者ギルド支部の一号店、ラ・メイズと他種族との中継点である地理的な利点を最大限に活用し、レインベル領を空前の大発展へと導いていた。
戦闘班長としての仕事があるコウエンも迷宮へ潜る機会こそゴルオンたちより少なかったが、種族の融和に伴って起こる摩擦を緩和するために奔走し、持ち前の高潔な性格と相まって種族間のバランサーとして忙しく働いている。
「シビルフィズ領の食堂はあんたに任せるよ、しっかりやんな!他人の色恋にキャーキャー言ってる余裕があるなら、あんたも向こうで良い人を見つけてくるんだよ」
「は、はい!」
以前ギルドマスターにミーハーな視線を向けて騒いでいた料理班の見習いも出世したようだ。
「エルダは厳しすぎるわい。こいつの作る飯も美味いからきっと上手くやるだろう。なんならワシが誰か紹介してやっても…」
「何言ってるんだいドワイト。あんたが紹介するのは大酒飲みばかりじゃないか。ちゃんと仕事もできるんだろうね」
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料理班長のエルダは冒険者ギルドの各食堂をまとめるオーナーとなり、ドワイトは次々と建設が続く冒険者ギルドの新規支店を飛び回りながら支持を飛ばしている。
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まさに冒険者ギルドにとって縁の下の力持ちとしてなくてはならない存在となっていた。
一般的な冒険者の質の向上も顕著だ。
彼らは新たな階層へ挑み、新たな素材を持ち帰り、そこから生まれた新たな装備を身に纏いまた新たな階層へ挑戦するという好循環の中にいる。
その中でも冒険者ギルドの説明会に訪れていた参加者たちはベルベットが厳選した優秀な冒険者たちだ。
特典満載の説明会に参加するという幸運に恵まれた彼らは見事にスタートダッシュを成功させ、今もそれに恥じぬ活躍を見せている。
トシゾウもその名前を覚えているカルストとセリカは35層を超える冒険者となっていた。
さらに特殊区画開放の際には最前線で戦い、特殊区画【朝霧の浜辺】の共同領主という肩書を手に入れていた。
「左団扇ですぅぅ!サンセットビーチで金貨風呂ですうぅぅ!」
とはしゃいでいたセリカだったが、残念ながら今日もカルストに引きずられ迷宮へ潜っているとベルベットが酒の肴に口にしていた。なお、朝霧の浜辺に夕暮れは来ない。
他にも冒険者の一部が30層を超えた証である冒険者ランクB級に到達し、前勇者の細目男に勝る力を身に着けつつある。
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