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新章
170 新たな領地と荒野の謎
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人族が開放した【朝霧の浜辺】
獣人が開放した【渇望の平原】
エルフが開放した【永緑の樹海】
ドワーフが開放した【溶鉱の庭園】
レーベン傭兵団が開放した【絡繰の鳥籠】
以上が新たに解放された特殊区画の名だ。
領地の名はまた別にある。
解放された特殊区画がそれぞれの種族特性を存分に活かせる場所であることは偶然ではない。
種族の力を結集し、綿密な打ち合わせの元に攻略する土地を決定したのだ。
特殊区画の入り口は特殊な環境となっていることが多く、その形状や内部に出現する魔物などからその方向性を知ることができる。
例えばレインベル領の擁する【常雨の湿地】は渦巻く水たまりに飛び込んだ中に存在する。
そしてその内部では、カバのような魔物【マッドヒッポ】や空飛ぶ魚【スピリカフィッシュ】など水に関係ある魔物が出現するのだ。
基本的に雑多な魔物が出現する迷宮において何らかの統一性が見られた場合は、その場所あるいはその周辺に特殊区画が存在するという指標となるのだ。
荒野から変化する土地は、特殊区画ごとに荒野における場所が固定されている。
そして基本的には深い階層に発生した特殊区画ほどラ・メイズ、いやメインゲートから遠くの土地に生成される。
また、荒野に出現する魔物は基本的に迷宮から離れるほどに強い個体が出現する。
今回解放された特殊区画は全て迷宮の領域における外縁部に位置している。
簡単に解放できる特殊区画であればすでに開放しているため、新たに解放される特殊区画が外へ外へと広がっていくのはある意味当然のことだ。
その領域の広さがそのまま人間の持つ力の大きさを示している。
そのあたりの事情を迷宮主や祖白竜ミストルから聞いたトシゾウは情報として知ってはいるが、そもそも荒野に興味を持ち始めたのが最近のため抜けている知識も多い。
それらの知識は邪神や迷宮主、世界の成り立ちやトシゾウの存在に大きく関わる部分であるのだが、トシゾウ当人にはさほど重要なことではなかった。
今回の特殊区画開放は、基本的に種族が統一されているドワーフやエルフはもちろん、荒野に多様な場所と種を持つ獣人たちも可能な範囲で一つにまとまり行動した。
そのあたりにもトシゾウ達の暗躍があった。
ほとんどはラ・メイズで行ったことばかりだが、冒険者ギルドがオープンしてからの半年間もそれなりにイベントが多かったのだ。
トシゾウはそれらの調整に意識を向けていた。
「…と、最近の報告は以上やな。ああ、シビルフィズ領についても一通りの改革が済んで、今では軌道に乗ってきたって報告が来とるで」
「レインベル領についても順調ですわ。冒険者ギルドの支部を初めに建てた実績が今も好影響を与えています。特殊区画【常雨の湿地】の維持はもちろん、最近は近隣の領地に冒険者を応援に出す余裕も出てきました」
「そうか、報告ご苦労」
トシゾウは冒険者ギルド長室でベルベットとコレットから報告を聞いていた。
敷地の広さを活かして充分な広さを確保したその部屋は、トシゾウギャラリーと同じようにクリスタルのショーケースに収まったトシゾウ自慢の宝が左右に並んでいる。
この部屋を訪れることができる者は限られている。
そのため、飾られた宝の価値に気付く者はそれなりにいた。
人によっては王城の宝物庫がただの倉庫に見えるほどの衝撃を受ける。
もちろんトシゾウの目の前にいる三人はその宝の山を見ても今更心を揺らすことはない。
豊かな赤毛を美しく編み込んだベルベットは、元は冒険者ギルドにおける商業班の班長だが、今はほとんど実務のトップとして各地に散らばり始めた冒険者ギルドの統括を行っている。
ベルベットは人の本質を見抜き育て使うことに長けており、途方もない量の業務をこなしつつもどこか余裕を保っている。
冒険者ギルドにおいて掛け値なしに最優秀の者は誰かと聞かれれば、トシゾウは高確率でベルベットの名を挙げるだろう。
「今月も黒字すぎてどこに投資したもんか悩むなぁ。なぁトシゾウはん、いっそ武力を使わない世界征服を始めてみるっていうのはどうやろ。経済でじわじわと篭絡していくんや」
「却下だ」
そんな主であるトシゾウの考えを知ってか知らずか、ベルベットは今日ものびのびと仕事に励んでいるようであった。
ベルベットの冗談で部屋に弛緩した空気が漂う。
報告会議は一通り終了し、現在は雑談に興じているところだ。
「コレット、前に荒野の魔物が活発化しているって言っていたけど大丈夫?」
「ええ、領の兵士の地力も上がっているから問題ありませんわ。冒険者が増えたおかげで特殊区画の魔物を間引いていた優秀な兵士を荒野に回せるようになったからまだまだ大丈夫よ」
トシゾウの隣に控えて時に質問を挟むのはシオンだ。
半年間でまた背が少し伸びたシオンは、まだまだ少女だが少しずつ大人の女性の雰囲気も見せるようになってきている。
冒険者ギルドの副マスターとしてトシゾウの横で会議に加わったり、勇者として人前に出たり、戦闘班や兵士に混じり鍛錬を積んでいることもシオンの成長を促しているのだろう。
小顔、整った容姿に大きな紫の瞳、柔らかな白い耳と尻尾がシオンの見た目はまだまだ少女だと主張しているが、それでもその表情には日々凛々しさが増しているようだ。
「荒野か…」
そういえば荒野については何も知らないなとトシゾウは思う。
トシゾウは迷宮で生まれ迷宮で育った知恵ある魔物だ。
迷宮を出てから色々なことがあったが、それでもまだ一年も経っていないのだ。
やることも多かったため荒野については詳しく知らないが、話によるとずいぶんと迷宮とは異なる場所らしい。
まぁ、そのうち訪れる機会も来るかと考えその時は深く考えなかった。
忙しいと時が流れるのは早いと言うが、あまりにも充実していると逆に遅く感じるものだとトシゾウは思う。
迷宮50層で冒険者をひたすら待っていた時など、半年や一年など暇に感じることなく一瞬で過ぎ去っていたからだ。
もっとも、当時と今ではトシゾウも随分変化したという自覚がある。
もう一度迷宮で長い時を待ち続けるのはすぐに退屈してしまい大変かもしれなかった。
迷宮を出てからは新たな経験ばかりで新鮮に感じていた。
人間という新たな宝の存在にも気づいた。価値観が広がることで、宝の種類も増えていく。
「ああ、宝と言えば…」
「ご主人様、どうかしたのですか?」
ふと口をついて出たトシゾウの呟きをシオンが拾う。
トシゾウはシオンの相変わらずの耳の良さに感心しつつも【無限工房】から一つの宝を取り出した。
獣人が開放した【渇望の平原】
エルフが開放した【永緑の樹海】
ドワーフが開放した【溶鉱の庭園】
レーベン傭兵団が開放した【絡繰の鳥籠】
以上が新たに解放された特殊区画の名だ。
領地の名はまた別にある。
解放された特殊区画がそれぞれの種族特性を存分に活かせる場所であることは偶然ではない。
種族の力を結集し、綿密な打ち合わせの元に攻略する土地を決定したのだ。
特殊区画の入り口は特殊な環境となっていることが多く、その形状や内部に出現する魔物などからその方向性を知ることができる。
例えばレインベル領の擁する【常雨の湿地】は渦巻く水たまりに飛び込んだ中に存在する。
そしてその内部では、カバのような魔物【マッドヒッポ】や空飛ぶ魚【スピリカフィッシュ】など水に関係ある魔物が出現するのだ。
基本的に雑多な魔物が出現する迷宮において何らかの統一性が見られた場合は、その場所あるいはその周辺に特殊区画が存在するという指標となるのだ。
荒野から変化する土地は、特殊区画ごとに荒野における場所が固定されている。
そして基本的には深い階層に発生した特殊区画ほどラ・メイズ、いやメインゲートから遠くの土地に生成される。
また、荒野に出現する魔物は基本的に迷宮から離れるほどに強い個体が出現する。
今回解放された特殊区画は全て迷宮の領域における外縁部に位置している。
簡単に解放できる特殊区画であればすでに開放しているため、新たに解放される特殊区画が外へ外へと広がっていくのはある意味当然のことだ。
その領域の広さがそのまま人間の持つ力の大きさを示している。
そのあたりの事情を迷宮主や祖白竜ミストルから聞いたトシゾウは情報として知ってはいるが、そもそも荒野に興味を持ち始めたのが最近のため抜けている知識も多い。
それらの知識は邪神や迷宮主、世界の成り立ちやトシゾウの存在に大きく関わる部分であるのだが、トシゾウ当人にはさほど重要なことではなかった。
今回の特殊区画開放は、基本的に種族が統一されているドワーフやエルフはもちろん、荒野に多様な場所と種を持つ獣人たちも可能な範囲で一つにまとまり行動した。
そのあたりにもトシゾウ達の暗躍があった。
ほとんどはラ・メイズで行ったことばかりだが、冒険者ギルドがオープンしてからの半年間もそれなりにイベントが多かったのだ。
トシゾウはそれらの調整に意識を向けていた。
「…と、最近の報告は以上やな。ああ、シビルフィズ領についても一通りの改革が済んで、今では軌道に乗ってきたって報告が来とるで」
「レインベル領についても順調ですわ。冒険者ギルドの支部を初めに建てた実績が今も好影響を与えています。特殊区画【常雨の湿地】の維持はもちろん、最近は近隣の領地に冒険者を応援に出す余裕も出てきました」
「そうか、報告ご苦労」
トシゾウは冒険者ギルド長室でベルベットとコレットから報告を聞いていた。
敷地の広さを活かして充分な広さを確保したその部屋は、トシゾウギャラリーと同じようにクリスタルのショーケースに収まったトシゾウ自慢の宝が左右に並んでいる。
この部屋を訪れることができる者は限られている。
そのため、飾られた宝の価値に気付く者はそれなりにいた。
人によっては王城の宝物庫がただの倉庫に見えるほどの衝撃を受ける。
もちろんトシゾウの目の前にいる三人はその宝の山を見ても今更心を揺らすことはない。
豊かな赤毛を美しく編み込んだベルベットは、元は冒険者ギルドにおける商業班の班長だが、今はほとんど実務のトップとして各地に散らばり始めた冒険者ギルドの統括を行っている。
ベルベットは人の本質を見抜き育て使うことに長けており、途方もない量の業務をこなしつつもどこか余裕を保っている。
冒険者ギルドにおいて掛け値なしに最優秀の者は誰かと聞かれれば、トシゾウは高確率でベルベットの名を挙げるだろう。
「今月も黒字すぎてどこに投資したもんか悩むなぁ。なぁトシゾウはん、いっそ武力を使わない世界征服を始めてみるっていうのはどうやろ。経済でじわじわと篭絡していくんや」
「却下だ」
そんな主であるトシゾウの考えを知ってか知らずか、ベルベットは今日ものびのびと仕事に励んでいるようであった。
ベルベットの冗談で部屋に弛緩した空気が漂う。
報告会議は一通り終了し、現在は雑談に興じているところだ。
「コレット、前に荒野の魔物が活発化しているって言っていたけど大丈夫?」
「ええ、領の兵士の地力も上がっているから問題ありませんわ。冒険者が増えたおかげで特殊区画の魔物を間引いていた優秀な兵士を荒野に回せるようになったからまだまだ大丈夫よ」
トシゾウの隣に控えて時に質問を挟むのはシオンだ。
半年間でまた背が少し伸びたシオンは、まだまだ少女だが少しずつ大人の女性の雰囲気も見せるようになってきている。
冒険者ギルドの副マスターとしてトシゾウの横で会議に加わったり、勇者として人前に出たり、戦闘班や兵士に混じり鍛錬を積んでいることもシオンの成長を促しているのだろう。
小顔、整った容姿に大きな紫の瞳、柔らかな白い耳と尻尾がシオンの見た目はまだまだ少女だと主張しているが、それでもその表情には日々凛々しさが増しているようだ。
「荒野か…」
そういえば荒野については何も知らないなとトシゾウは思う。
トシゾウは迷宮で生まれ迷宮で育った知恵ある魔物だ。
迷宮を出てから色々なことがあったが、それでもまだ一年も経っていないのだ。
やることも多かったため荒野については詳しく知らないが、話によるとずいぶんと迷宮とは異なる場所らしい。
まぁ、そのうち訪れる機会も来るかと考えその時は深く考えなかった。
忙しいと時が流れるのは早いと言うが、あまりにも充実していると逆に遅く感じるものだとトシゾウは思う。
迷宮50層で冒険者をひたすら待っていた時など、半年や一年など暇に感じることなく一瞬で過ぎ去っていたからだ。
もっとも、当時と今ではトシゾウも随分変化したという自覚がある。
もう一度迷宮で長い時を待ち続けるのはすぐに退屈してしまい大変かもしれなかった。
迷宮を出てからは新たな経験ばかりで新鮮に感じていた。
人間という新たな宝の存在にも気づいた。価値観が広がることで、宝の種類も増えていく。
「ああ、宝と言えば…」
「ご主人様、どうかしたのですか?」
ふと口をついて出たトシゾウの呟きをシオンが拾う。
トシゾウはシオンの相変わらずの耳の良さに感心しつつも【無限工房】から一つの宝を取り出した。
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