色々物語

見えざる手

薄暗い部屋の中、テレビの明かりだけがぼんやりと揺れている。ミライはソファに深く腰掛け、画面に映る都市伝説の特集番組をぼんやりと見つめていた。

ナレーターの声が低く響く。

「ここ数年で、私たちの生活を劇的に変えた数々の技術革新。その裏には、謎に包まれた“FutureKey”というペンネームの人物がいると言われている。彼または彼女は、数多くの画期的な発明の設計図を匿名で公開し、世界を驚かせてきた。」

映像には、無人ドローンや自動運転車、最先端ロボットの数々が映し出される。そのどれもが、世の中の利便性を飛躍的に向上させていた。

ミライの心に、ふと不思議な感覚が走る。

（“FutureKey”……私も同じ名前を使ってる。）

彼女の指先が、スマホの画面で静かに光る“FutureKey”のアカウント名を思い出させる。

隣で、相棒のロボット・ユメが優しくつぶやいた。

「世の中には、すごい人がたくさんいるんだね。」

ミライは、かすかに微笑んだ。

「そうだね。しかも、私と同じことをしている人が他にもいるなんて。偶然って、本当にあるんだな。」

テレビの画面は切り替わり、白熱した会議室で真剣な表情の企業幹部たちや政府関係者が“FutureKey”の正体を突き止めようと躍起になっている様子を映し出す。

「正体不明のこの発明者は、未来人説や宇宙人説までささやかれている。誰も彼女（彼）を見つけ出すことができていない。」

ミライは言葉にならない思いで、しばらくテレビの画面を見つめていた。彼女の心の中で、小さな火が静かに燃え始める。

（私も、もっと頑張らなきゃ……）

そう決意した瞬間、部屋の空気が少しだけ変わったように感じた。

ミライは立ち上がり、窓の外に広がる夕暮れの街並みをじっと見つめた。どこか遠くで、小鳥がさえずり、風が葉を揺らしている。

彼女の瞳は、これからの道をしっかりと見据えていた。

「新しい発明……次は何を作ろう。」

小さくつぶやきながら、ミライは部屋を出て、いつもの散歩道へと歩き出した。未来への挑戦は、まだ始まったばかりだった。