色々物語

夢と記憶と運命の予兆

夕暮れの色が、森の隙間から差し込んでいた。
木々の影が道を横切り、空気にはほんの少し湿り気のある風が吹いている。

その中を歩きながら、せんえは心の中でふと思った。
それは、もう少しで“魔女”に会えそうだという予感だった。

今までも、いろいろな場所で、どこか魔法の影を感じてきた。
でも今回のそれは、少し違っていた。

どこか――懐かしい感じがした。

（……この気持ちはなんだろう？）

考えていると、せいまが近づいてきて声をかけてきた。

「せんえちゃん、何かあった？」

「ううん、何もないよ。ただ、予感がするんだ。誰かと出会えるって。」

「前に言ってた悪い魔女かな？」

「懐かしい感じ……」

「そうなんだ」

「魔女……どうしようかな……」

「ところで、せんえちゃん、変わったよね」

「え？　なにが？」

「性格が。昔よりも……」

「そうかな～！　私はずっとこんな感じだよ！」

せいまはふっと笑って、それにつられてせんえも微笑んだ。

　

＊＊＊

　

私は、せいまと一緒に歩いていた。
どこか見知らぬ場所、けれど不思議と怖くはなかった。

せいまがふと、私のほうを見て小さくつぶやいた。

「過去のこと、覚えてる？　私と出会った頃のこととか……」

「えっと……うん、ごめんね……覚えてない」

「あなたは私を助けてくれたんだよ」

「そうだったんだ……助けたって……？」

「覚えてないよね……ごめん。私はあのとき、心からあなたのことを……」

「せいま……？」

せいまの様子が少しおかしかった。
さっきまでの穏やかな空気が、急にざわめき出す。

彼女は落ち着かない様子で、突然言った。

「この先の村……魔女が出る」

そして、怯えたように頭を抱え込んだ。

「村の人たちが……悪い魔女に襲われてる……」

「えっ……どういうこと？」

私の声は、届いていないようだった。

せいまはただ、苦しげに頭を抱えたままつぶやく。

「助けないと……」

「せいま、どうしたの？」

その声も届かない。私は、ただ見つめることしかできなかった。

「せいま……っ！」

私は手を伸ばそうとした――そのとき。

　

……ぱちり、と目を開いた。

視界には、心配そうに私を見つめるせいまの顔があった。

「大丈夫……？　なんだか、すごく苦しそうに寝てたから……」

「……私が、苦しそうに？」

私はゆっくりと身を起こしながら、夢の中の光景を思い出す。

あの怯えていたせいまの姿――でも、今目の前のせいまは、どこか不思議そうな顔をしていた。

「夢……だったんだよね……？」

だけど心の奥には、まだ重たいものが残っていた。

（本当に……夢だったのかな）