色々物語

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運命の灯②

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「ありがとう!」

女の子はとても嬉しそうに声を弾ませた。

「ううん、大丈夫だよ。私の魔法、すごいんだから!」

「ほんとにすごかった……! 同い年くらいなのに、びっくりした」

「えへへ、ありがと! じゃあね!」

「……あっ、待って!」

「ん?」

「名前、教えてもらってもいい?」

「私の名前は――せんえ!」

「せんえ……覚えるね。わたしは、せいま。よかったら、友達に……」

せいまが笑いかけたとき、せんえの姿はもう空にあった。
箒に乗り、夕焼けの風を切って、どこかへ飛び去っていく。

「……せんえ」

せいまはぽつりと名前をつぶやいた。


その夜、せんえは高台にある古い塔へ戻っていた。
空を染めた夕焼けが消え、夜のしじまが辺りを包んでいる。

そこに、いつもの静かな声が迎えてくれた。

「せんえ。ごきげんね。今日は何かいいことでもあったの?」

「うん、今日はね、人助けをしたの! 私の魔法で!」

月夜はそっと笑った。

「それは素晴らしいこと。あなたの魔法は、誰かのためにこそ輝くのよ」

「でしょ! 私の魔法、すごいんだから!」

せんえは鼻を高くして、胸を張った。

「ねぇ師匠。そろそろ“見習い”じゃなくて、本物の魔法使いになりたいなぁ」

「ふふ。まだ早いわね」

「えーっ!? どうして!? 人助けもできたし、魔法だっていっぱい使えるよ!」

月夜は微笑んだまま、窓の外の星空を見つめた。

「魔法が使えることと、魔法使いになることは――同じではないのよ」

せんえは少し唇をとがらせた。

「じゃあ……いつになったら?」

月夜は静かに、だけど意味深くつぶやいた。

「……“試練”を乗り越えたその時よ」


それから数日後。
空を飛んでいたせんえは、どこからか呼ばれるような気配を感じて箒を降ろした。

「あっ、あなたは……!」

「せいまだよ! 覚えてくれてた?」

「うん、もちろん!」

「えへへ……せんえと、もっと仲良くなりたくて……!」

「私は未来に、世界で一番輝く魔法使いになるんだから!」

その言葉に、せいまはほんの少し寂しそうな表情を浮かべた。

でも、すぐに顔を上げる。

「……それでも、友達でいたいな」

「もちろんだよ!」

せんえは笑顔で、せいまの手を取った。

「これからよろしくね、せいま!」

「うんっ!」

二人の笑い声が、夕暮れの空に吸い込まれていった。
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