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運命の灯③
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せいまと別れたあと、せんえは一人、丘の上に立っていた。
夕焼けが空を満たし、風が草を揺らしている。
その静けさの中で――何かが、ざわりと空気を裂いた。
気づいたときには、黒い影が立っていた。
その存在から放たれる圧力に、息が詰まる。
「誰……?」
その声に答えることなく、影は魔力を放った。
一瞬で身体が宙に浮き、地面に叩きつけられる。
視界が歪む。耳鳴りが鳴り止まない。
(――ああ、だめだ。負ける……)
その瞬間――まばゆい銀の光が辺りを包みこんだ。
誰かが立っていた。
それは――月夜だった。
「……よく頑張ったわね、せんえ」
月夜の声はやさしく、深く、どこか哀しげだった。
せんえはうまく目を開けられないまま、その手に包まれた。
「……ごめん……わたし……たすけ……られな……」
言葉が途中で崩れ、瞳がゆっくりと閉じていく。
月夜はせんえの頬に触れ、小さく微笑んだ。
「大丈夫。全部、わかってるわ」
そして、そっと手を額に当てる。
(この記憶は……重すぎる)
(彼女の心を壊してしまう)
(――だから、今はただ、眠らせよう)
風が静かに吹く中、月夜は小さくつぶやいた。
「私は、ずっとあなたを見守っているからね――せんえ」
そして、光がそっと、せんえの記憶に鍵をかけた。
せんえは、ふと過去のことを思い出した。
――そうだった……この人、月夜さんは私の師匠だった。
「師匠……」
「思い出したのね」
「うん」
「実はね、あなたの記憶を奪ったのは私。あなたに“試練”を与えるためだったの」
「試練……?」
「あなたには、いくつか欠点があった。その欠点を乗り越えるための試練よ。でも、あなたはそれを乗り越えた。見事にね」
「うん……」
「だから、私はあなたを立派な魔法使いとして認めるわ。
これからどんな困難があっても、あなたならきっと乗り越えられる」
「師匠……」
「せんえ、よく頑張ったわね」
月夜は優しく微笑んだ。
「あなたはもう、立派な魔法使い。だから――お別れよ」
「え……? 師匠……」
「また会おうね」
「待って! お願いがあるの!」
「どうしたの、せんえ?」
「ずっと一緒にいてほしい! 師匠じゃなくてもいい。
私はまだまだ未熟だし、月夜と一緒にいると楽しいから……!」
せんえはそう言って、そっと月夜に触れた。
「……うん、わかった」
「やった! 月夜や、せいまと一緒に、もっともっといっぱい話したいんだ!」
せんえの元気な声が、空にこだました。
夕焼けが空を満たし、風が草を揺らしている。
その静けさの中で――何かが、ざわりと空気を裂いた。
気づいたときには、黒い影が立っていた。
その存在から放たれる圧力に、息が詰まる。
「誰……?」
その声に答えることなく、影は魔力を放った。
一瞬で身体が宙に浮き、地面に叩きつけられる。
視界が歪む。耳鳴りが鳴り止まない。
(――ああ、だめだ。負ける……)
その瞬間――まばゆい銀の光が辺りを包みこんだ。
誰かが立っていた。
それは――月夜だった。
「……よく頑張ったわね、せんえ」
月夜の声はやさしく、深く、どこか哀しげだった。
せんえはうまく目を開けられないまま、その手に包まれた。
「……ごめん……わたし……たすけ……られな……」
言葉が途中で崩れ、瞳がゆっくりと閉じていく。
月夜はせんえの頬に触れ、小さく微笑んだ。
「大丈夫。全部、わかってるわ」
そして、そっと手を額に当てる。
(この記憶は……重すぎる)
(彼女の心を壊してしまう)
(――だから、今はただ、眠らせよう)
風が静かに吹く中、月夜は小さくつぶやいた。
「私は、ずっとあなたを見守っているからね――せんえ」
そして、光がそっと、せんえの記憶に鍵をかけた。
せんえは、ふと過去のことを思い出した。
――そうだった……この人、月夜さんは私の師匠だった。
「師匠……」
「思い出したのね」
「うん」
「実はね、あなたの記憶を奪ったのは私。あなたに“試練”を与えるためだったの」
「試練……?」
「あなたには、いくつか欠点があった。その欠点を乗り越えるための試練よ。でも、あなたはそれを乗り越えた。見事にね」
「うん……」
「だから、私はあなたを立派な魔法使いとして認めるわ。
これからどんな困難があっても、あなたならきっと乗り越えられる」
「師匠……」
「せんえ、よく頑張ったわね」
月夜は優しく微笑んだ。
「あなたはもう、立派な魔法使い。だから――お別れよ」
「え……? 師匠……」
「また会おうね」
「待って! お願いがあるの!」
「どうしたの、せんえ?」
「ずっと一緒にいてほしい! 師匠じゃなくてもいい。
私はまだまだ未熟だし、月夜と一緒にいると楽しいから……!」
せんえはそう言って、そっと月夜に触れた。
「……うん、わかった」
「やった! 月夜や、せいまと一緒に、もっともっといっぱい話したいんだ!」
せんえの元気な声が、空にこだました。
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