算術の秘密

文字の大きさ
42 / 59

テスト②

しおりを挟む
一方、さくのも順調にテストを解いていた。

あの日から、まだお父さんは帰ってきていない。
心のどこかで、今日が最後の日になるのかもしれない──そんな予感がうっすらと漂っていた。

また、違う人生が始まる。
これから先のことは、誰にも分からない。

もし、もっと違う経験をしていたら。
もし、私の性格が少し違っていたら……。

──

どこかに、傷ついた少年がいた。
その前に、大人の男が立っていた。

彼はただ静かに、その少年に言った。
「君がやっていること、考えていることは、決して間違いではない」


---

さくのはいつの間にか、計算で小さな間違いをしてしまった。
いけない……今は、ちゃんと計算に集中しなければ。

私は、いつでも変わらない。
何よりも、自分の利益を追求するだけだ。

やがて、実技のテストが始まった。
まりは、いつも通りに行動する。
今まで繰り返してきたことを、淡々とこなす。

不思議なことに、まりは落ち着いていた。

時間は過ぎ、さくのの番が回ってくる。
今まで勉強してきた成果を、しっかりと見せる番だ。

──

どこかで、少年は落ち込んでいた。
また、大人の男性がそっと近づき、尋ねる。
「何があった?」

「信じていた友達に、裏切られた……」
「そうか……それは悲しかったな」

「もう、誰も信じられないよ」
「それは本当か?」

「え……⁉」

「君のそばには、きっといるはずだ。
支えてくれる人間が」

「そんな人、いないよ……」

「声は小さくても、しっかりと存在している。
君は、その人を大切にすべきだ」

そして、男は立ち去ろうとした。

「あんたの名前は……?」
「名前なんてない。
ただ、利己主義に溺れた、駄目な大人だ。
少年よ、いい人生を送れ」

その大人は、少年の前から静かに消えていった。

──

テストの時間が終わり、答案が返ってきた。
さくのはそっと目を通し、心の中でつぶやく。

筆記は、88点。
実技は、90点か……。

そして、さくのはまりの元へ向かった。

ひなたがまりの答案をのぞき込み、声をあげる。
「筆記100点、実技100点って、まりすごい……!全部満点だなんて!さすがまりだね!」

まりはその言葉に顔を赤らめ、少し照れたように微笑む。

さくのはその様子を見て、心の中で静かに思った。
そうか……。

そして、まりの前に立ち、自分の点数を差し出す。
「私の負けだよ」

まりは微笑んで言う。
「さくのさんも得点高いね!」

だが、さくのはすぐに本題に移る。
「それより、あなたの言うことを一つ聞くんでしょ。早く言いなさい。私は約束を守るよ……」

まりは少し息を呑み、そして力強く答えた。
「じゃあ……さくのさん、私と友達になって!」

その言葉に、さくのは言葉を詰まらせた。
心のどこかで、すぐには答えられない自分がいる。

「本当にそれでいいの?復讐はしないの?」
さくのの問いに、まりは迷いなく答える。
「うん!私はさくのさんと仲良くなりたい!」

「そっか……でも、そうだったらいいね」

まりが首をかしげる。
「どういうこと?」

「なんでもない」
さくのはそっと言い、少しだけ距離を縮める。
「あなたの友達になるよ」

まりの顔に満面の笑みが広がった。
「ありがとう!嬉しい!」

今の私は、まだまりと心から友達になれる状態じゃない。
だけど、もし……

テストの日は、こうして静かに終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

置き去りにされた聖女様

青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾 孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう 公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする 最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで…… それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

処理中です...