52 / 59
息子が作った虚構
しおりを挟む
スタジオの裏側は、表の派手な放送とはまるで別世界だった。
モニターに映る学者風の人物や高額な壺の映像に、スタッフたちは息を殺して見守っている。
「本当に、こんな放送でいいのかな……」
新人スタッフの一人が小声でつぶやくと、社長の息子が振り返り、にやりと笑った。
「うるさいな。どうせ文句なんて来ないんだし、そのままやれよ」
次の瞬間、モニター越しに学者風の人物が威勢よく壺を掲げ、1000万円の価格を告げる。スタッフたちは眉をひそめながらも、手元の機材を押さえるしかなかった。
放送終了後、クレーム対応担当が電話で報告する。
「こういう意見があるらしいです……」
すると社長の息子はあっさり言った。
「嫌なら見るな! それに、視聴者はこういう放送を求めてるんだ。だから俺たちは正しいことをやってるだけ」
社長の息子が来てから、インフィニティTVはすっかりおかしくなった。
陰謀論、炎上商法、コンプレックス広告、お笑い芸人を使ったデマ流し、偏向報道――ありとあらゆるメディアの負の部分を凝縮したような放送が日常となった。
敵をわざわざ作って他社を挑発し、自分は改めることをまったくしない。まさに殿様商売だ。
彼はこの会社以外のメディアを「オールドメディア」と呼び、このインフィニティTVこそ次世代のメディアだと言い張る。
コンプライアンスという概念は、彼の辞書には存在しなかった。
休憩時間にスタッフが、新人に対して、低く息をつきながら語った。
「数学が現実化する前の時代……道徳を無視した漫画や番組がたくさんあったんです。今ではもう作られませんが、社長はそれらを大量に買い込み、息子に見せていました」
息子は学校を休んでそればかり見続け、やがて今の思想を作り上げていった。
「ある日、突然、自分も制作に携わりたい、番組を作りたいと言い出したんです」
社長は息子に甘く、その願いを受け入れた。初めのうちは視聴率も伸びたが、それは一時的なブームに過ぎなかった。
「そこから一気に落ちました。最初の伸びに囚われた息子は、自分なら視聴率を上げられると信じ込み、道を改めなかったんです」
結果、視聴率はどんどん下がり、今ではほとんど誰も見なくなってしまった――。
モニターに映る学者風の人物や高額な壺の映像に、スタッフたちは息を殺して見守っている。
「本当に、こんな放送でいいのかな……」
新人スタッフの一人が小声でつぶやくと、社長の息子が振り返り、にやりと笑った。
「うるさいな。どうせ文句なんて来ないんだし、そのままやれよ」
次の瞬間、モニター越しに学者風の人物が威勢よく壺を掲げ、1000万円の価格を告げる。スタッフたちは眉をひそめながらも、手元の機材を押さえるしかなかった。
放送終了後、クレーム対応担当が電話で報告する。
「こういう意見があるらしいです……」
すると社長の息子はあっさり言った。
「嫌なら見るな! それに、視聴者はこういう放送を求めてるんだ。だから俺たちは正しいことをやってるだけ」
社長の息子が来てから、インフィニティTVはすっかりおかしくなった。
陰謀論、炎上商法、コンプレックス広告、お笑い芸人を使ったデマ流し、偏向報道――ありとあらゆるメディアの負の部分を凝縮したような放送が日常となった。
敵をわざわざ作って他社を挑発し、自分は改めることをまったくしない。まさに殿様商売だ。
彼はこの会社以外のメディアを「オールドメディア」と呼び、このインフィニティTVこそ次世代のメディアだと言い張る。
コンプライアンスという概念は、彼の辞書には存在しなかった。
休憩時間にスタッフが、新人に対して、低く息をつきながら語った。
「数学が現実化する前の時代……道徳を無視した漫画や番組がたくさんあったんです。今ではもう作られませんが、社長はそれらを大量に買い込み、息子に見せていました」
息子は学校を休んでそればかり見続け、やがて今の思想を作り上げていった。
「ある日、突然、自分も制作に携わりたい、番組を作りたいと言い出したんです」
社長は息子に甘く、その願いを受け入れた。初めのうちは視聴率も伸びたが、それは一時的なブームに過ぎなかった。
「そこから一気に落ちました。最初の伸びに囚われた息子は、自分なら視聴率を上げられると信じ込み、道を改めなかったんです」
結果、視聴率はどんどん下がり、今ではほとんど誰も見なくなってしまった――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
置き去りにされた聖女様
青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾
孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう
公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ
ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう
ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする
最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで……
それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる