SNG ~その青年の進む道は救済か滅亡か~

上社玲衣

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第四章 殺戮と兵器と青年と

第二十話「邂逅と訣別」

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第二十話「邂逅と訣別」

 “別れの山”アップシーツ・ホルンに、デヴォイ達は到着する。
 デヴォイは完全には立ち直っていなかったが、あれから少しずつ回復しているみたいなので、ウォッシュに半強制的に連れて来られてしまった。お前にも関わる大事な行事が始まるから、と言われて。
「あんたは…デヴォイじゃないか?」
 ヴォルド…“エルザレブ”の試練を乗り越えたトリニティの面々もそこにいた。
「久しぶりだけど、あんまり元気ないね、どうかしたの?」
 シローが訊ねる。
「おい、それよりも…デヴォイ、いつの間にこんないい女見つけたんだ?」
 イオに興味を持ったラルフが話を中断する。
「あれ、あなたラルフ? デヴォイまで、どうしたの?」
 丁度そこへエイジス達も来ていた。
「おいおい、どうしたんだよ、女祭か?」
 ラルフの顔が緩む。
「違いますって。どうやら、SNGがたくさん集まってるみたいっすよ…ほら、他にも、見てみて下さい。」
 バンが山の麓を指さす。かなり多くのソルジャーがいる。百人は下らない。
「皆、声に呼び出された…頭の中に届いた、テレパシーの声に…一体誰だ?」
「俺だよ。ウォッシュ=ヒルフハート。お前等と同じSランクソルジャーだ。」
 ウォッシュが名乗る。山の麓のSNG、トリニティ、エイジス達を峠へと導く。
「で、何をする気なんだ?」
 一人のソルジャーが訊ねる。
「第一回目の儀式を行う…俺からのテレパシーの中で『お前は選ばれた』という言葉を受け取った者は東へ、そうでないものは西へ。」
 ウォッシュとイオ、パラライザーの刺客を撃退したデヴォイやトリニティ、その他のSNG…“選ばれし者”達は峠の東へ、候補ではあったがパラライザーに打ち勝てなかった者…エイジス達は西へ移動した。
「今から、粛清を行う。選ばれなかった者に用はない。彼らを消せ。」
 ウォッシュが至極簡潔に言い放つ。

 一方、ミゼルに残ったマイアとクレアは…。
「あなた、『運命を視る紅い瞳』を持っているんでしょう…? デヴォイは…? あなたはアップシーツ・ホルンで何があるか知っているんじゃないの?」
 訊ねたクレアにマイアは静かに答える。
「何があるかは知っているけれど…私は彼の運命は視ることが出来ない…。ただ分かっているのは、あそこは邂逅と訣別の地だという事よ…。」

「どういう事よ…?」
 エイジス達には訳が分かるはずもない。
「問答無用だ…死に逝く者に答えなどいるまい…。」
 ウォッシュの口調が変わる。両腕に深藍色のキャノン砲が装着され、また、左腕に、無数の文字が回転するシールドが現れる。彼の【土】と【言語】の能力の真の発現である!
「やめろ!」
 その時初めてデヴォイがその場で口をきいた。デヴォイは西側に移動し、選ばれざる者達を守る為、両腕を鋏に変えて広げる。“斬”の能力だ。
「俺は…もう誰も罪のない人間を殺したくない…!」
 デヴォイの瞳には生気が戻り、また決意に満ちていた。
「そのお前の能力は人を殺す為に…神が愚かな人間を浄化する為に与えた能力なのだ。」
 ウォッシュは今まで一度もデヴォイに対して見せたことのなかった冷たさを見せる。
「違う! 俺はそんな事の為にこの力を使わない…今やっと分かったんだよ、俺が本当は何をしたかったのかが…。」
 ウォッシュの声に怒気がこもる。
「お前は世界を敵にまわす気なのか?」
「世界に従うって事が、今ここにいるエイジス達を俺の力で殺す、あるいは見殺しにする事なのなら、世界や君の信じる神に背くとしても、俺は君達の側には付きはしない!」
「残念だわ、デヴォイ…いえ、アデュー。ああ、折角私達の弟が現れたというのに…。一緒に来ればあなたの憧れたジオンハート、私達とあなたの本当の父親に会えるのに…。」
 と、イオが両腕に三角形の深藍色の物質を生み出しながら言う。【虹】ではなく、今度はそう、ミゼルまで飛んだときにも使った、【風】の能力の真の姿だ。彼女にも、今まで見せていた優しい顔はなく、冷たい殺人者の顔へと変貌していた。
「ジオンハートが父親だって…!? それに君達が俺の兄と姉…嘘だ!」
 何気なく言ったイオの言葉にデヴォイは動揺の色を全く隠さない。
「嘘ではない。馬鹿な事はやめて俺達についてきたなら証拠を見せよう。」
 言うウォッシュの瞳に一瞬だけ優しい光が立ち戻る。
「しかしそうしたら選ばれなかったソルジャーは…。駄目だ!」
 そこへ、ラルフが二人の間に入って話を中断させる。
「何か話を聞いていると、いいように遊ばれているみたいで面白くないな。ユージンが言ってたのはこんなつまらない事だったのか。」
 トリニティも西側へ移動する。
「全く…愚か者共がぁ! どうなっても知らんぞ!」
 また再び殺戮者の顔に戻ったウォッシュ。砲塔から岩石を放った彼の攻撃を皮切りに、選別…粛清の儀式は開始された。

「ふふふふふふ…実力がない人も、例えSランクであっても私達の言う事を聞かない人も、これからの世界にはいらないのよ…!」
 イオは【風】の能力で身に烈風を纏いながら、体当たりを仕掛ける。その切れ味はマイアの斬風《シュナイデンター ヴィント》の比ではない。更に深藍色の三角形の刃を自在に遠隔操作し、確実にターゲットをしとめていく。エイジスやバンはかつてマイアに風の魔法で斬られた時のあの恐怖を思い出して、必死に逃れる。
「神をも恐れぬ不届き者達よ!」
 ウォッシュはキャノンから生み出す岩石や深藍色の超硬質弾を手当たり次第にぶっ放し殲滅行動に出る。【言語】シールドからは、複数のターゲットの脳に解読不明の古言語テレパシーを送りつけ、混乱させる。
「そんな在り来たりのセリフで裁かれる筋合いはない!」
 【言語】攻撃を振り払ったデヴォイは、両腕の鋏で岩石は斬り崩すが、超硬質弾はどうやら別物らしく、鋏が欠けてしまう。それを見たウォッシュが嘲笑う。
「まだ自由に扱えるようになって日が浅いだろう、そんなもので俺の能力は破れない!」
「破るとか破らないとか、初めからそんな事は考えちゃいない!」
 そう、彼に、理屈は存在しない。ただ、今は仲間達を守る事が重要だ。そしてその障害を足止めする。
 すぐさま鋏を再生させるデヴォイ。
 トリニティはこの戦いに意味を見いだせないので、選ばれなかったSNG達の避難を手伝ったり、逆に選ばれた者達の足止めをしていた。
「お前らはそれでいいのか? 状況に流されているだけで…自分の意志で道を選ぼうとは思わないのか!」
 ラルフは防戦に徹しながら彼らに訊ねる。
「うるさい!」
 彼の相手をしているソルジャーがラルフの剣を振り払う。さすが“選ばれし者”だけの事はある。実力伯仲といったところだ。手を抜いて相手出来るものではない。
 その時だった。突然、上空で大爆発が起こった。
 誰もが意識していなかったので反応できず、その爆風で、その場にいた者は全て吹き飛ばされた。
「誰だ…儀式を邪魔する奴は…!?」
 怒りをたぎらせた目でウォッシュは犯人を探す。山の頂上に、魔法を唱えた主が立っていた。
「愚かな…無益な戦いです。“世界の中心”になるが為に彼らに踊らされるなんて…。」
 グィン=フォルナウス、あの彼である。
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