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船
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夜になりました。
でも今日は星が見えません。寒さはなく、むしろ暑いくらいです。シャボン玉は、いつの間にか熱帯の海までやって来ていたのでした。
時間は生ぬるく過ぎて行き、夜はとても長く感じられました。あまりに刺激が無いためか、そのうちに、妙な音が聞こえ始めました。ザーッザザザーッザーッザザザーッザザーッといったような、何だかたくさんの砂粒が右へ左へ転がり続ける音のように思えました。聞こえるか聞こえないかの小ささなので、幻聴なのかなとも思えます。空の上には砂などある訳はないので、気のせいだろうとは思うのですが、そう思おうとすればするほど気になってしまって不安になってきます。
タカは夜の暗さを「慣れれはなんてことないさ」と言いましたが、二晩くらいではそんな訳にもいかず、やっぱり真っ暗闇は恐いのでした。
そして時は過ぎ、また白々とした薄明りが世界を満たし始めます。
シャボン玉は下を見降ろして驚きました。
海面が、すぐ近くにあったからです。とは言っても、まだ六十メートルくらいの距離はあるでしょうが、何千メートルもの高さまで昇ったことを考えれば、目と鼻の先と言ってもいいでしょう。あいかわらず陸地はまったく見えず、果てしのない暗みのある青さをたたえた大海原があるばかり。海面はうねり、音を発し続けています。夜中に聞こえていた砂が転がるような音は、海の波の音だったのです。シャボン玉はてっきり乾いたものが発する音だと思っていたので驚きました。
風は塩辛く、微妙に磯臭く感じられました。
上昇気流のやむ夜の間に高度が下がるのはしかたのないことですが、今回はちょっと危なかったようです。
もう少し気流が下を向いていたら、海面に落ちていたかもしれない。シャボン玉はそう思い、海面の底の知れないうねりを見つめてゾッとしました。
そしてまた、今日も世界に息吹きを与える太陽が、水平線から顔をのぞかせ始めました。
朝日を浴びて輝き始めた東方の海面。二度目となるその美しい光景を見ていると、シャボン玉は水平線の近くに、奇妙なものが浮かんでいるのを見つけました。
流線形をした、葉っぱのような形のもの。距離があるから小さく見えますが、本当はかなり大きなもののようです。背後から朝日を受けているので赤っぽく翳って見えますが、色は白でしょう。形はまったく動かないのに、波をかき分けてこちらへ向かって進んで来ているようすなのは不思議でした。
シャボン玉が見つけたものは船でした。それも、外国からはるばる海洋を渡って来た豪華客船だったのです。
シャボン玉はそれに興味を覚えましたが、たとえこのままどんどん近ずいて来たとしても自分がそれを近くで見ることはないだろうと思っていました。太陽が昇れば上昇気流が発生するから、あの船が近ずいた頃にはシャボン玉はどんどん上空に昇って行って海面からの距離が離れてしまうだろうと思ったのです。ところがそうはなりませんでした。
どうした訳か今日は思ったような上昇気流は発生せず、シャボン玉はいつまでたっても上昇して行くことがなかったのです。いえ、それどころか、逆にじりじり高度を下げていました。
今日は空は雲が多めです。太陽は雲に隠れたり出たりを繰り返していました。
シャボン玉はこれまで幸運だったのです。曇りがちな日には思うように上昇気流が発生しないのは当然です。いや、晴れた日だとしても、大きな上昇気流が発生するのは一部の地域だけでしょう。シャボン玉は、たまたまそれに二日続けてめぐり合っただけなのでした。
海面までの距離が五十メートル、四十メートル、三十メートルと近くなって来ます。時おり小さな気流を捕まえて上昇することもあるのですが、落ちて行く時はそれ以上なのでした。シャボン玉は焦り始めました。このままでは海に落ちて割れてしまうかもしれない。何とか上へ行く気流を見つけなくちゃと思ってはみますがどうにもなりません。
そのうちに、シャボン玉は海面の下に魚影を見ることができるようになりました。どんな魚なのかは分かりませんが、時おり大きめの魚が海面の近くを行きかうようです。
海の中にも生き物がいるんだ。だとすると僕もひょっとしたら水の中に入っても生きていられるかもしれない。と、そんなことを考えてみたりもしましたが、それが虫のいい考えなのはシャボン玉にもすぐ分かりました。雨に濡れるだけでもピンチだったのに、どうして水の中などにいられるでしょう。
あの、真っ直ぐにこちらに向かって進んで来ている、海に浮かんだものすごく大きなものも生き物なのかな。そんな風には見えないけど。
シャボン玉はすぐ目の前に近づきつつある豪華客船を見て思いました。今やそれはほんの数十メートル先に巨大な姿を現しています。シャボン玉はその船のてっぺんにかすりそうな低い空中をただよっていました。
なだらかな絶壁のような船腹。その上方に並ぶ窓。操舵室の上に突き出た鉄塔。てっぺんにはためく旗。デッキは清潔で広々としています。中央にはプールがあり、その周囲に椅子とテーブルが並んでビーチパラソルの花が咲いています。
まだ早い時間だからでしょうか、デッキに人は少ないようです。サングラスをかけて寝椅子に寝そべって日光浴をする青年や、読書をする中年男性。プールで泳ぐ若い女の人もいました。
高度を下げてさ迷い続けるシャボン玉は、その船のデッキの上空に、迷い込んでしまったのでした。
最初にシャボン玉に気づいたのは椅子に座って読書をしていた中年男性です。本から目を上げて「おや? 」と首をひねってつぶやきます。「シャボン玉なんて誰が飛ばしたんだろう」
シャボン玉は一生懸命答えました。
「僕はこの船の上で生まれたシャボン玉じゃありません。海の向こうの陸地で小さな女の子に吹いてもらって誕生して、そしてここまで旅して来たんですよ」
シャボン玉は久しぶりに人間に会えて嬉しかったのです。自分の旅はもう終わりに近いのかもしれないと思わないでもなかったので、ひょっとしたらどこかでマユミちゃんに会うかもしれない人間に、旅の報告をしたかったのでした。
しかし中年男は何も聞こえないようで、シャボン玉を無視して再び本に目を落としてそれっきりです。
次はプールで泳いでいた女の人が目に留めました。泳ぎ終わってデッキに上がった時、ふわっと二メートルくらい上をただようシャボン玉に目を留めました。「まあ綺麗」女の人はシャボン玉の中に虹のきらめきを見ていたようです。花柄のビキニを着た女の人も、健康的な小麦色の肌をして瞳がとても綺麗でした。
「あ、ありがとうございます。そんなことを言われたのは初めてです」
シャボン玉ははにかんで顔を赤くしてそう答えましたが、やっぱり女の人もシャボン玉の声が聞こえなかったようです。すぐにまたプールに飛び込んで泳ぎ始めたのでした。
僕は人間とは話ができないんだろうか・・・・・・。
シャボン玉はとても寂しい気持ちになりました。
シャボン玉はそのままふわふわと風に流されてデッキの上を縦断して行きました。
乗客が近寄らないデッキの最後尾には船員服を着た青年が一人で立っていました。仕事の合間に一休みしているのでしょうか。船の手すりにもたれ、物憂い顔で進行方向とは逆の海を眺めています。
シャボン玉はどうせこの人とも話が通じないんだろうなと思いました。もうシャボン玉は船から離れようとしています。黙って前を通り過ぎようとすると、思いがけなく青年から声をかけられたのです。
「ねえシャボン玉君。僕の話を聞いてくれないかな」
青年は、真剣に、シャボン玉の中を覗き込んでいました。
「えっ、僕と話ができるんですか」
「こんな海の上で出会ったのも何かの縁だ。君がどこから来たのか知らないが、もしこの広い海を渡ってここまで来たのだとしたら、僕の話が分からないでもあるまい」
「ええ。そうなんです。僕はこの海を渡って来たんですよ」
シャボン玉はすっかり嬉しくなりました。まさか人間にこんなに自分のことを分かってもらえるなんて・・・・・・とそう思って有頂天になりかけたのですが、青年の態度は期待したものとはちょっと違っていました。シャボン玉の声が聞こえないようすなのは他の人たちと同じだったのです。青年はシャボン玉の表面に映った自分に対して話しかけていたのです。占い師が水晶玉を見つめるのと同じことでした。
「僕は、悩んでいるんだよ」青年はため息をついて言いました。「恋の悩みというやつさ。今回の航海で出会った乗客に素敵な女性がいて、恋い焦がれて食事も喉を通らないくらいだ。だけどこの航海はもうすぐ終わってしまう。そうしたら彼女とは永久にお別れなんだ。何とか彼女と付き合うきっかけをつかみたいとは思うんだけど、乗客と乗組員の間柄ではそれは許されない話なのさ。彼女は僕のことを乗客に親切な仕事熱心な船員だとしか思っていないだろう。もし良かったらメールアドレスでも交換してくれませんかなんて言ったら気持ち悪く思われるだけだ。僕と彼女じゃ身分違いもいいところなんだ。やっぱり彼女に迷惑をかけないためにも、この想いは胸の中にしまっておくべきなんだろうな・・・・・・」
「それは、違いますよ」シャボン玉は必死になって言いました。「僕を見てください。シャボン玉はすぐに割れて消えるのが普通なのに頑張ってここまで旅をして来たんです。僕には一分一秒が大切で、想いを胸に秘める時間なんて無いんです。人間だって同じですよ。いつかは死ぬんです。なのに、いつ人生が終わるか分からないのにそんなことを言っていたらいけないと思います」
すると青年は不思議そうな顔をして、
「何故だろう。シャボン玉の声が聞こえたような気分がする。想いを胸に秘めている時間なんか無い・・・・・・か。そうなのかもしれないな」そしてうなずくと、「何だか勇気が湧いてきたよ」
でもその後にはハッとして、苦笑いして首をひねります。
「僕はシャボン玉を相手に何を言っているんだろう。悩み過ぎておかしくなったのかな・・・・・・」
シャボン玉は風に押されて船を離れました。
でも今日は星が見えません。寒さはなく、むしろ暑いくらいです。シャボン玉は、いつの間にか熱帯の海までやって来ていたのでした。
時間は生ぬるく過ぎて行き、夜はとても長く感じられました。あまりに刺激が無いためか、そのうちに、妙な音が聞こえ始めました。ザーッザザザーッザーッザザザーッザザーッといったような、何だかたくさんの砂粒が右へ左へ転がり続ける音のように思えました。聞こえるか聞こえないかの小ささなので、幻聴なのかなとも思えます。空の上には砂などある訳はないので、気のせいだろうとは思うのですが、そう思おうとすればするほど気になってしまって不安になってきます。
タカは夜の暗さを「慣れれはなんてことないさ」と言いましたが、二晩くらいではそんな訳にもいかず、やっぱり真っ暗闇は恐いのでした。
そして時は過ぎ、また白々とした薄明りが世界を満たし始めます。
シャボン玉は下を見降ろして驚きました。
海面が、すぐ近くにあったからです。とは言っても、まだ六十メートルくらいの距離はあるでしょうが、何千メートルもの高さまで昇ったことを考えれば、目と鼻の先と言ってもいいでしょう。あいかわらず陸地はまったく見えず、果てしのない暗みのある青さをたたえた大海原があるばかり。海面はうねり、音を発し続けています。夜中に聞こえていた砂が転がるような音は、海の波の音だったのです。シャボン玉はてっきり乾いたものが発する音だと思っていたので驚きました。
風は塩辛く、微妙に磯臭く感じられました。
上昇気流のやむ夜の間に高度が下がるのはしかたのないことですが、今回はちょっと危なかったようです。
もう少し気流が下を向いていたら、海面に落ちていたかもしれない。シャボン玉はそう思い、海面の底の知れないうねりを見つめてゾッとしました。
そしてまた、今日も世界に息吹きを与える太陽が、水平線から顔をのぞかせ始めました。
朝日を浴びて輝き始めた東方の海面。二度目となるその美しい光景を見ていると、シャボン玉は水平線の近くに、奇妙なものが浮かんでいるのを見つけました。
流線形をした、葉っぱのような形のもの。距離があるから小さく見えますが、本当はかなり大きなもののようです。背後から朝日を受けているので赤っぽく翳って見えますが、色は白でしょう。形はまったく動かないのに、波をかき分けてこちらへ向かって進んで来ているようすなのは不思議でした。
シャボン玉が見つけたものは船でした。それも、外国からはるばる海洋を渡って来た豪華客船だったのです。
シャボン玉はそれに興味を覚えましたが、たとえこのままどんどん近ずいて来たとしても自分がそれを近くで見ることはないだろうと思っていました。太陽が昇れば上昇気流が発生するから、あの船が近ずいた頃にはシャボン玉はどんどん上空に昇って行って海面からの距離が離れてしまうだろうと思ったのです。ところがそうはなりませんでした。
どうした訳か今日は思ったような上昇気流は発生せず、シャボン玉はいつまでたっても上昇して行くことがなかったのです。いえ、それどころか、逆にじりじり高度を下げていました。
今日は空は雲が多めです。太陽は雲に隠れたり出たりを繰り返していました。
シャボン玉はこれまで幸運だったのです。曇りがちな日には思うように上昇気流が発生しないのは当然です。いや、晴れた日だとしても、大きな上昇気流が発生するのは一部の地域だけでしょう。シャボン玉は、たまたまそれに二日続けてめぐり合っただけなのでした。
海面までの距離が五十メートル、四十メートル、三十メートルと近くなって来ます。時おり小さな気流を捕まえて上昇することもあるのですが、落ちて行く時はそれ以上なのでした。シャボン玉は焦り始めました。このままでは海に落ちて割れてしまうかもしれない。何とか上へ行く気流を見つけなくちゃと思ってはみますがどうにもなりません。
そのうちに、シャボン玉は海面の下に魚影を見ることができるようになりました。どんな魚なのかは分かりませんが、時おり大きめの魚が海面の近くを行きかうようです。
海の中にも生き物がいるんだ。だとすると僕もひょっとしたら水の中に入っても生きていられるかもしれない。と、そんなことを考えてみたりもしましたが、それが虫のいい考えなのはシャボン玉にもすぐ分かりました。雨に濡れるだけでもピンチだったのに、どうして水の中などにいられるでしょう。
あの、真っ直ぐにこちらに向かって進んで来ている、海に浮かんだものすごく大きなものも生き物なのかな。そんな風には見えないけど。
シャボン玉はすぐ目の前に近づきつつある豪華客船を見て思いました。今やそれはほんの数十メートル先に巨大な姿を現しています。シャボン玉はその船のてっぺんにかすりそうな低い空中をただよっていました。
なだらかな絶壁のような船腹。その上方に並ぶ窓。操舵室の上に突き出た鉄塔。てっぺんにはためく旗。デッキは清潔で広々としています。中央にはプールがあり、その周囲に椅子とテーブルが並んでビーチパラソルの花が咲いています。
まだ早い時間だからでしょうか、デッキに人は少ないようです。サングラスをかけて寝椅子に寝そべって日光浴をする青年や、読書をする中年男性。プールで泳ぐ若い女の人もいました。
高度を下げてさ迷い続けるシャボン玉は、その船のデッキの上空に、迷い込んでしまったのでした。
最初にシャボン玉に気づいたのは椅子に座って読書をしていた中年男性です。本から目を上げて「おや? 」と首をひねってつぶやきます。「シャボン玉なんて誰が飛ばしたんだろう」
シャボン玉は一生懸命答えました。
「僕はこの船の上で生まれたシャボン玉じゃありません。海の向こうの陸地で小さな女の子に吹いてもらって誕生して、そしてここまで旅して来たんですよ」
シャボン玉は久しぶりに人間に会えて嬉しかったのです。自分の旅はもう終わりに近いのかもしれないと思わないでもなかったので、ひょっとしたらどこかでマユミちゃんに会うかもしれない人間に、旅の報告をしたかったのでした。
しかし中年男は何も聞こえないようで、シャボン玉を無視して再び本に目を落としてそれっきりです。
次はプールで泳いでいた女の人が目に留めました。泳ぎ終わってデッキに上がった時、ふわっと二メートルくらい上をただようシャボン玉に目を留めました。「まあ綺麗」女の人はシャボン玉の中に虹のきらめきを見ていたようです。花柄のビキニを着た女の人も、健康的な小麦色の肌をして瞳がとても綺麗でした。
「あ、ありがとうございます。そんなことを言われたのは初めてです」
シャボン玉ははにかんで顔を赤くしてそう答えましたが、やっぱり女の人もシャボン玉の声が聞こえなかったようです。すぐにまたプールに飛び込んで泳ぎ始めたのでした。
僕は人間とは話ができないんだろうか・・・・・・。
シャボン玉はとても寂しい気持ちになりました。
シャボン玉はそのままふわふわと風に流されてデッキの上を縦断して行きました。
乗客が近寄らないデッキの最後尾には船員服を着た青年が一人で立っていました。仕事の合間に一休みしているのでしょうか。船の手すりにもたれ、物憂い顔で進行方向とは逆の海を眺めています。
シャボン玉はどうせこの人とも話が通じないんだろうなと思いました。もうシャボン玉は船から離れようとしています。黙って前を通り過ぎようとすると、思いがけなく青年から声をかけられたのです。
「ねえシャボン玉君。僕の話を聞いてくれないかな」
青年は、真剣に、シャボン玉の中を覗き込んでいました。
「えっ、僕と話ができるんですか」
「こんな海の上で出会ったのも何かの縁だ。君がどこから来たのか知らないが、もしこの広い海を渡ってここまで来たのだとしたら、僕の話が分からないでもあるまい」
「ええ。そうなんです。僕はこの海を渡って来たんですよ」
シャボン玉はすっかり嬉しくなりました。まさか人間にこんなに自分のことを分かってもらえるなんて・・・・・・とそう思って有頂天になりかけたのですが、青年の態度は期待したものとはちょっと違っていました。シャボン玉の声が聞こえないようすなのは他の人たちと同じだったのです。青年はシャボン玉の表面に映った自分に対して話しかけていたのです。占い師が水晶玉を見つめるのと同じことでした。
「僕は、悩んでいるんだよ」青年はため息をついて言いました。「恋の悩みというやつさ。今回の航海で出会った乗客に素敵な女性がいて、恋い焦がれて食事も喉を通らないくらいだ。だけどこの航海はもうすぐ終わってしまう。そうしたら彼女とは永久にお別れなんだ。何とか彼女と付き合うきっかけをつかみたいとは思うんだけど、乗客と乗組員の間柄ではそれは許されない話なのさ。彼女は僕のことを乗客に親切な仕事熱心な船員だとしか思っていないだろう。もし良かったらメールアドレスでも交換してくれませんかなんて言ったら気持ち悪く思われるだけだ。僕と彼女じゃ身分違いもいいところなんだ。やっぱり彼女に迷惑をかけないためにも、この想いは胸の中にしまっておくべきなんだろうな・・・・・・」
「それは、違いますよ」シャボン玉は必死になって言いました。「僕を見てください。シャボン玉はすぐに割れて消えるのが普通なのに頑張ってここまで旅をして来たんです。僕には一分一秒が大切で、想いを胸に秘める時間なんて無いんです。人間だって同じですよ。いつかは死ぬんです。なのに、いつ人生が終わるか分からないのにそんなことを言っていたらいけないと思います」
すると青年は不思議そうな顔をして、
「何故だろう。シャボン玉の声が聞こえたような気分がする。想いを胸に秘めている時間なんか無い・・・・・・か。そうなのかもしれないな」そしてうなずくと、「何だか勇気が湧いてきたよ」
でもその後にはハッとして、苦笑いして首をひねります。
「僕はシャボン玉を相手に何を言っているんだろう。悩み過ぎておかしくなったのかな・・・・・・」
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