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第二話 宮殿
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「ここが貴方の天国での家です。」宮殿は近くで見るとさらに大きく、広さは砂漠よりも広く、高さは山よりも高いといった感じで、上の方には空中を渡る階段や吹き抜けなどの、複雑で非現実な構造が見えた。ここが自分の住むところだと思うと心がざわめいた。入り口の階段は一段目は赤い斑岩、二段目は目の粗い焼き石、三段目は鏡のようになめらかな大理石だった。僕は宮殿の中へと足を踏み入れた。
中に入ると、最初の部屋はとてつもなく広く、壁から天井に渡って、言葉で言い表せないほど美しい風景画が描かれており、床はルビーとサファイアの板がチェスのボードのように交互に敷き詰められていた。「食事をお出しします。こちらへ来てください。」猫について行くと、あんなに広かったはずの広間をなぜかたった3歩で渡りきってしまった。「言い忘れていましたね。この世界では全てが貴方に従うのですよ。扉を開けた先も必ず貴方の行きたい部屋につながっています。」猫がそう言うと扉がひとりでに開き、そこには大きく豪華な食堂があった。
僕が席に座ると猫は言った。「何でも食べたいものをおっしゃってみてください。」僕は少し考えてから言った。「えっと、じゃあフォアグラが食べてみたい。」すると金の皿にきれいに盛り付けされた、フォアグラをメインディッシュにしたフランス料理が、食器とともにテーブルを透き通るようにしてせり上がってきた。「貴方が望む食材、料理、古今東西何だって食べることができます。例えば毒のあるものだって今の貴方なら恐れずに召し上がれますし、」猫が言うとベニテングタケ料理、見たこともない果物、ハコフグの刺身が皿にのって現れた。「想像上の食べ物も手に入ります。」続けてトニオのイタリア料理、フグ鯨、仙豆も出てきた。「考えるのが面倒でしたらお任せにすることもできます。それから、食べ終わった料理は勝手に消えますので片付けなくて結構です。」
僕は今まで食べてみたかったけど食べることのできなかった料理をたらふく食べた。しかしいくら食べても腹いっぱいにはならない。空腹になるのも満腹になるのも僕の望んだとおりになるようだ。
猫はそれから書斎を見せてくれた。そこには僕が死ぬ時点まで地球上で作られたあらゆる本、映画、音楽、ゲームがあった。古すぎて残っていないような作品や未発表のまま失われてしまった作品もこの部屋にはあった。人類最初の音楽も聴くことができた。
その次に見たのは知識の部屋というところで、この部屋で僕の元いた宇宙について質問するとどんなことでも教えてくれるのだ。これまで知りたくても知ることのできなかった、例えば宇宙人はいるかという質問にも正確に答えを返してくれた。
僕は贅の限りを尽した魔法の宮殿を歩き回った。いつでも満開の桜の森が広がる部屋、ファラオが使っていた部屋を再現した部屋、蝋燭が灯る茶室、見る部屋見る部屋が僕に衝撃と感動を与えた。僕が歩いて回っていると猫が言った。「貴方が望めば空を飛ぶこともできますよ。念じるだけです。」僕は言われたとおりにしてみると、自分の体重が軽くなっていくのを感じた。体重がゼロになったとき、体がゆっくりと浮き上がり、足が床を離れた。僕は壁を伝って浮き上がり天井に触った。最高の気分だった。僕は宮殿の中と外を自在に飛び回った。飛んでいるうちに、浮遊するだけでなく滑空したり加速したりすることもできることが分かってきた。
この世界でならばできないことは何もない。物理法則さえも操れる。僕は音速で空を飛びながら声を上げて笑った。
それから天国での生活が始まった。天国には昼も夜もない。食欲や眠気はコントロールできるので好きな時に遊んで好きなときに食べ、好きなときに寝る。今までできなかったことができるようになったのだ。ここはまさに天国だった。
しかし2週間3週間と時が流れるうちに、だんだんとこの変化のない生活に飽き始めてきた。最初の頃は宝石やきれいなものばかりのこの世界を見て回って楽しんでいたが、それが普通になってくると自分でも驚くくらい急速に興味が薄れてきた。宝石も珍しいから価値があるのであって、結局はただの石だ。豪華で高級感のある雰囲気も慣れてくるにつれありがたみを感じなくなってくるし、いくら楽しくても何百時間も書斎にこもり続けたり食事をとり続けるのも少し嫌気がさしてきた。天国の果てを知ろうと思って宮殿から遠く離れたところまで行ってみたが、やはり同じ景色が際限なく続くばかりであった。僕はこのだだっ広い空間に逆に閉塞感を感じ始めていた。
「ねえ、この世界の外にはもう出られないのかな。」ある日僕は猫に尋ねた。「ここから出たくなったのですか。ここは人間の望むものだけを全て具現化して作られた世界であるはずなのに。不思議なことを言いますね。しかしここ以外の場所に行くのはできないわけではありません。この宮殿に貴方がまだ見ていない部屋があります。付いてきてください。」
中に入ると、最初の部屋はとてつもなく広く、壁から天井に渡って、言葉で言い表せないほど美しい風景画が描かれており、床はルビーとサファイアの板がチェスのボードのように交互に敷き詰められていた。「食事をお出しします。こちらへ来てください。」猫について行くと、あんなに広かったはずの広間をなぜかたった3歩で渡りきってしまった。「言い忘れていましたね。この世界では全てが貴方に従うのですよ。扉を開けた先も必ず貴方の行きたい部屋につながっています。」猫がそう言うと扉がひとりでに開き、そこには大きく豪華な食堂があった。
僕が席に座ると猫は言った。「何でも食べたいものをおっしゃってみてください。」僕は少し考えてから言った。「えっと、じゃあフォアグラが食べてみたい。」すると金の皿にきれいに盛り付けされた、フォアグラをメインディッシュにしたフランス料理が、食器とともにテーブルを透き通るようにしてせり上がってきた。「貴方が望む食材、料理、古今東西何だって食べることができます。例えば毒のあるものだって今の貴方なら恐れずに召し上がれますし、」猫が言うとベニテングタケ料理、見たこともない果物、ハコフグの刺身が皿にのって現れた。「想像上の食べ物も手に入ります。」続けてトニオのイタリア料理、フグ鯨、仙豆も出てきた。「考えるのが面倒でしたらお任せにすることもできます。それから、食べ終わった料理は勝手に消えますので片付けなくて結構です。」
僕は今まで食べてみたかったけど食べることのできなかった料理をたらふく食べた。しかしいくら食べても腹いっぱいにはならない。空腹になるのも満腹になるのも僕の望んだとおりになるようだ。
猫はそれから書斎を見せてくれた。そこには僕が死ぬ時点まで地球上で作られたあらゆる本、映画、音楽、ゲームがあった。古すぎて残っていないような作品や未発表のまま失われてしまった作品もこの部屋にはあった。人類最初の音楽も聴くことができた。
その次に見たのは知識の部屋というところで、この部屋で僕の元いた宇宙について質問するとどんなことでも教えてくれるのだ。これまで知りたくても知ることのできなかった、例えば宇宙人はいるかという質問にも正確に答えを返してくれた。
僕は贅の限りを尽した魔法の宮殿を歩き回った。いつでも満開の桜の森が広がる部屋、ファラオが使っていた部屋を再現した部屋、蝋燭が灯る茶室、見る部屋見る部屋が僕に衝撃と感動を与えた。僕が歩いて回っていると猫が言った。「貴方が望めば空を飛ぶこともできますよ。念じるだけです。」僕は言われたとおりにしてみると、自分の体重が軽くなっていくのを感じた。体重がゼロになったとき、体がゆっくりと浮き上がり、足が床を離れた。僕は壁を伝って浮き上がり天井に触った。最高の気分だった。僕は宮殿の中と外を自在に飛び回った。飛んでいるうちに、浮遊するだけでなく滑空したり加速したりすることもできることが分かってきた。
この世界でならばできないことは何もない。物理法則さえも操れる。僕は音速で空を飛びながら声を上げて笑った。
それから天国での生活が始まった。天国には昼も夜もない。食欲や眠気はコントロールできるので好きな時に遊んで好きなときに食べ、好きなときに寝る。今までできなかったことができるようになったのだ。ここはまさに天国だった。
しかし2週間3週間と時が流れるうちに、だんだんとこの変化のない生活に飽き始めてきた。最初の頃は宝石やきれいなものばかりのこの世界を見て回って楽しんでいたが、それが普通になってくると自分でも驚くくらい急速に興味が薄れてきた。宝石も珍しいから価値があるのであって、結局はただの石だ。豪華で高級感のある雰囲気も慣れてくるにつれありがたみを感じなくなってくるし、いくら楽しくても何百時間も書斎にこもり続けたり食事をとり続けるのも少し嫌気がさしてきた。天国の果てを知ろうと思って宮殿から遠く離れたところまで行ってみたが、やはり同じ景色が際限なく続くばかりであった。僕はこのだだっ広い空間に逆に閉塞感を感じ始めていた。
「ねえ、この世界の外にはもう出られないのかな。」ある日僕は猫に尋ねた。「ここから出たくなったのですか。ここは人間の望むものだけを全て具現化して作られた世界であるはずなのに。不思議なことを言いますね。しかしここ以外の場所に行くのはできないわけではありません。この宮殿に貴方がまだ見ていない部屋があります。付いてきてください。」
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