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41.聞きたくないけど、止められない
しおりを挟む『それで、こんなことになっているのか』
精霊王とため息って似合わないわね。
闇の精霊王は疲れた様子で、森の精霊王を睨みつけているわ。
森の精霊王は初めて会った時は神々しく感じたのに、しょげた様子はすっかりキャラが違ってしまった感じよ。
精霊王って本当はこれが普通なのかしら。
『愛し子、君の名を教えてくれ』
「私は愛し子ではありませんわ」
『それは分かった。だからこそ名をくれ。呼びにくい』
なんでしょう、その投げやりな感じ。
「マチルダ、ですわ」
『マチルダか、良い名だ。とりあえず闇の加護をマチルダに』
ちょ、ちょっとお待ちください。そんなだまし討ちあります? お決まりのセリフも言わせてもらえませんの?
『それから、母親と家の中の者たちに……これでとりあえず良いだろう。あとは、森の、お前はお前の庭に戻れ』
『えっ、せっかく心配して来たのに?』
『なにが心配だ。お前がちゃんとマチルダを助けていれば、こんな面倒な事になっていなかっただろう』
『ちゃんと助けたじゃないか』
『助けてないだろう。確かに愛し子には生まれる前から加護はある。だがそれは微かなものだ。加護というより、残りかすみたいなものだ。怪我も病気も他の人々と同じようにその身に受ける。打ち所が悪ければ死んでしまっていたかもしれない』
森の精霊王は、まさかと顔をゆがませた。
まさか、じゃありませんわ。闇の精霊王のおっしゃる通り、運が悪ければ死んでましたのよ。
『まさかではない。お前が神殿に住む愛し子としか会った事が無いとはいえ、愛し子は加護がなければただの人だ。転べば痛いし、怪我もする。神殿にいる愛し子が怪我も病気もしなかったのは、その身をいつでも光が守っていたからだ。それに、愛し子の魂は一つだけとはいえ、人格は別物だ。マチルダが愛し子だとしても、今までの愛し子と同じことを考え、願うとは限らない』
『そんな』
今度は衝撃って表情で、口をパクパクさせた森の精霊王は、すっかりしょげた様子で私の方へ視線をよこしたわ。
「……私は愛し子ではありませんわよ」
何度も言ってますけど、ちゃんと聞いています?
『光にもそう言ったそうだね……私たちをこんなにも引きつけていると言うのに、マチルダは何故そんなに愛し子であることを否定するんだろう』
森の精霊王が、困った子を見るように私を見ていますわ。困っているのはこちらなのに。
「否定ではありません。違うと言っているのです。愛し子は妹のルフィナですわ。その証拠に精霊たちはみな妹の事が大好きで、いつでも妹を守っていますもの」
私は生まれた時から、ステータスは悪役令嬢。精霊たちにまで意地悪をされる悪女なのよ。
『マチルダ、すまなかった……それは、俺のせいだ。俺が君が生まれる時に側にいればこんなことにならなかった』
闇の精霊王は、そう眉を寄せました。
意味が分かりません。私が生まれる時に貴方がいたからといって、私の待遇がそんなに変わるものかしら?
『話せば長くなるが、闇と光の力は自然を司る精霊たちと違い、人に与える影響が強い』
「体に良くないのですか?」
『あぁ、体と言うか精神だ。闇そのものは悪いものではないが、人には悪意があるだろう。それが闇の力に触れると強くなる。
だから、特に闇は人に影響を与えにくい場所に出入口を作らねばならない。
その場所の一つがこのラウティーナが守る地だ』
あら、なんだか難しい話になりそうね。そんな話は良いからさっさと結論を言って欲しいわ。
まあ、聞きたくないと言っても無駄なのでしょうけど。
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