だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ

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56.愛し子の日記……もとい、父親の日記

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 最初に断わっておくけど、滅びた国のその後は九冊目のおじさん日記に書かれてた分よ。
 運よく逃げのびた人が結構いたみたいで、ありがたいことに彼らの証言が九冊目の最初にまとめられていたの。
 事実に基づいているからこそ、その言葉は真に迫っていて、ページをめくる手を止められなかった。

 八冊目と九冊目の間に、誰かの日記が挟まってたんだけど、国がどうなったか気になりすぎたって言うのもあるけど、その日記の内容が……ねぇ。

 愛し子の父親の手記なんて、誰得?
 愛し子も愛し子よ。お父さんの日記の続きに、自分の日記を続けるってあり?

 ないわよね。普通。

 じゃあ読まないのかって? 読むわよ。滅びた国も気になったけど、愛し子のことも気になると言えば気になるもの。

 聖女も見つけられなかったって言うけど、

 あのお伽噺では、【愛し子は人、動物、植物だけでなく、精霊も世界をも愛し、穢れに満ちた世界を憂い、互いを傷つけあう人を悲しむ】ような存在で、
 森の精霊王の情報では、【愛し子はいつも誰かが苦しんでいるのを見ると、彼らを助けて欲しいと言う】ような心優しい人物な筈なのに。

 そんな愛し子が、滅びそうな国をほっといて、一体どこに隠れていたのか。
 滅んだ国を見て、どんな気持ちだったのか。
 凄く、気になるのよね。
 だから、とりあえずお父さんの手記よ。

 愛し子の父親は森の精霊、母親は風の精霊の隣人で、二人は幼馴染。
 どちらの両親や兄妹も普通の人で、精霊の隣人に対する偏見あって、子供のころから感じていた疎外感が二人を結びつけた……って事が、延々書かれてた。

 まぁ、あの病んでる日誌を見れば、あの国の人たちの愛し子とか精霊に対する態度がどんなものか分かるけど、これだけで一冊本が書けそうな濃厚さよ。

 きっとご苦労されたんでしょう。

 二人は結婚と同時に、家族を捨て、精霊の隣人ばかりが住む山のふもとの集落に移り住んで、娘が生まれた。
 その誕生時は、それはまぁ大変な祝福の嵐だったみたい。
 山だもの、きっと森の精霊王あたりがまたおかしなことをしたのね。
 明らかに普通じゃないから、本当は洗礼なんて受けさせるつもりなかったのに、たまたま来ていた行商人が神殿にちくったせいで、神殿から集落の子供にも洗礼をってお手紙が来たんですって。
 仕方なく娘を連れて町へ行ったら、なんと愛し子だと言われ、神殿に閉じ込められて、ようやく解放されたと思ったら、国王から婚約の話を持ちかけられた。
 国はずいぶん横暴だったみたいね。

 こっちも結構な罵詈雑言が並んでた。

 それでもまぁ、かなりの頻度で王子が集落に通ったことで、愛し子と王子様の仲も、父親の印象も大分良くなったようよ。
 ……父親がどうやって聞いていたのか分からないけど、そのころの二人の会話が結構詳しく書かれていて、ずいぶん仲が良かったことが分かるわ。
 読んでるこっちが恥ずかしいくらいの内容よ。
 思わず空目しちゃったわ。

 そんな二人も聖女が現れて、王子が勇者に選ばれてからは、酷いものね。
 王子が集落に来なくなって、代わりに、愛し子が一人町に呼ばれて、暫くして、愛し子が見つかったという話が聞こえてきた。
 父親はそれが娘の事だと思ってたのに、集落に戻って来た娘は満身創痍で、精霊の加護さえ拒絶してた。
 このままでは死んでしまうって所まで弱ったところで、愛し子は姿を消した。

 残念な事に、父親の日記はここで終わっている。
 この後、新しい聖女が現れるまで日記は止まってて、ある日突然始まる。

 愛し子の、ポエムが……。


 愛し子の魂が一つなら、これを書いたのは前世の私ってことよね。

 ……ポ・エ・ム。
 ……黒・歴・史。

 ごめんなさい。内容は、もう少し精査させてちょうだい。
 日記もだけど、そろそろ我慢の限界なの。

 私も、目の前のアレも。

 日誌をめくる度、視界のぎりぎりを右に左に揺れながら、だからと言って声をかけるわけでもなく、存在をアピールする、アレ。
 ひらひらする衣の裾が超うざったい、火の精霊王よ。

 本当は話したくないけれど、生き証人なのよねぇ。

 愛し子のこのポエム。
 解説が必要だから、聞きたいけど……うーん。どうしたらいいかしらねぇ。




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