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63.愛し子の日記 3
しおりを挟む「十七代目って、どんな方でしたの?」
「十七代目?」
「愛し子の部屋を貰った方ですわ」
「あぁ……そうだな。マチルダに似ていたな」
どんなところが、とは聞きませんわよ。
きっと良い言葉が聞けるとは思いませんから。
「……ではその前の愛し子たちは?」
「前?」
「十四代目……町に火をつけた方から部屋をもらった方の間の愛し子ですわ」
「あまり覚えていない。光に近付くな、加護も駄目だと言われたからな」
不本意そうに言うけれど、頼まれたからって町に火をつけちゃったらそう言われるでしょうねぇ。
「それに、どれもおとなしくて面白味もなくて、あまり興味もなかったからな」
……火をつけちゃうような人とくらべたら、そりゃあみんなおとなしくて面白味はないでしょうね。
呆れて半眼になっちゃったわ。
火の精霊王はまだ何か言っていたけど、私は日記に視線を戻す。
十七代目の大活躍で、それ以降の愛し子は孤児とは別に育てられるようになった。
家族といつでも会えるようになり、専任の世話役も付けられた。
早くから愛し子であることとその役割を教えられ、以前は聖女に加護を与えてからしか任命されなかった上位神官の地位が最初から与えられた。
そのせいで、幼いころから大人と同じ職務義務を課せられ、子供らしい生活を奪われた。
孤児と一緒に育った愛し子たちは、一緒に暮らしている子が親と共に孤児院を出ていくのを見た日の日記にこう書いていた。
【お母さん、迎えに来てくれるかなぁ?】 と、ためらうような小さな文字で。
その言葉には寂しさもあるけど、同じ境遇の者が一緒にいるからこその希望も見えた。
年をとるにつれ少なくなるものの、それは愛し子だと告げられるまで続いていて、自分が捨てられたんじゃないって知って喜んでいた。
親がもう迎えに来ないことを知っても。
でも、別に育てられた愛し子たちは、ただただ寂しそうだ。
いつでも親に会えることも、同じ敷地内にいる子供たちとの違いも、それに拍車をかけていた。
神殿に捕獲され、毎日会いに来ていた親が、慣れてくると数日おきになり、一週間におきなり、一月になる。
その内、愛し子自身が忙しくなり、親も、神殿も、儀式で大人と同じようにふるまう愛し子に慣れて、とうとう一年も会わなくなる。
そんな時、諦めるわけではないのだろうけど、先に変化するのは親の方だ。
しばらく会えなかった親が、知らない子を連れて愛し子の前に現れる。
子は皆、生まれた町の神殿で洗礼を受けるのだ。隠しようがない。
親は、姉となる愛し子に、その子を紹介する。
弟だよ。
妹だよ、と
仲良く手を繋いで、楽しそうに歩く親子の姿に衝撃を受けたと、日記にはかなり詳しく書かれている。
そして、どうして自分は家族と一緒にいられないのかと。
何故自分は愛し子なのかと嘆くのだ。
理解出来ないのは当たり前で、暴れてもいいはずなのに、結局どの愛し子も最後には役目を果たす方を選ぶ。
我慢しているのが分かりすぎるくらいの文章は、やがて感情がなくなって、本当に面白味のない文になる。
「十四代目みたいに燃やしちゃったらよかったのに」
思わずつぶやけば、火の精霊王は笑いながら頷いた。
「私もそう思うよ。愛し子は我慢しすぎだ」
「そう思うなら、愛し子を助けようとは思わなかったのですか?」
「願えばどんなことだって叶えてやったさ。でも何故だか、そういったことは決して願わない。願わなければ我々は何もできない」
「それは、ルール……決まりなんですの?」
「そうだな。女神との取り決めだ」
火の精霊王は面白くなさそうに、顔を歪めた。
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