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首筋に、生温かい感触と鼻息(?)で、自分か今何をされているのか分かった。
フランクが私の首筋に唇を押しつけているのだ。
―――何をしているんだ? この男。
悲鳴でもいい、膝蹴りでもいい、なんとかしてこの状況を打破したいと思ったけれど、体は全く言うことを聞かない。
フランク・ジャニアスのことを思い出そうとしても、彼がフォルナトル王国・宰相の三男であること、学生時代は王子の側近と言う立場だが、卒業してからの立場が決まらず悩んでいるところをリーナに救われ、兄二人を補助する立場に着くことを決意するとか、意味のないことばかりが頭に浮かぶ。
何か、今自分がされていることにつながる、ジャニアス家特有の魔法があったような気がするけれど、重要と思われることはちっとも思い出さない。
首筋を狙うなんて、まるで吸血鬼のようだ。
でも、彼に牙はない筈だ。
なんて思っていると、部屋の電気をつけた時と同じように、唇があるあたりからスッと何かが抜けて行く感じがした。
―――えっ、これって、本気でやばいんじゃない?
ぞわぞわと全身を恐怖が駆け巡り、お腹に力を入れて体を動かそうとするが、それすらも上手く出来ているのか分からない。
自由のきく視線で自分の首筋に吸いついている男を見ようと頑張るが、見えるのはつやのある白銀の髪だけ。
それは長い時間のようで、一瞬のようで、心は焦っているのに、何の手だてもなくされるがままの自分に絶望すら覚えたころ。
「くっ」
っと、フランクが一瞬うめいた。
何が起こったのか、緩やかだった魔力の流れが、急にタガが外れたように凄い勢いで力が吸い取られ始める。
貧血の時みたいに、頭がフワフワしてきて、意識が持って行かれそうになる。
このままじゃ本当にまずいと感じていても、どうしたらいいかも分からない。
目を強くつぶり、出てきたのは、ピーちゃんの姿だった。
―――――――ピーちゃん! 助けてっ!
後がない、そう思って心で叫ぶと同時に、どこかで何かが割れる音がした。
バサバサと羽音がして、フランクの手から力が抜けた。
浮いていた足が床について、背中が本棚にぶつかった。後ろ手にすがるように本棚へと倒れこみ、顔を上げると、青い顔のフランクが口を押さえながら後退っていた。
そのフランクの前では、ピーちゃんが8の字を空中に描きながら彼を威嚇している。
「キーラ嬢!」
「フランク!」
大きな音がして扉があき、誰かがそう駆け込んできた。
一人はデリック、もう一人は金髪の男。殿下だろうか。
ようやく自分の思うように動くようになった体を、必死で立て直そうとするがやはり力が入らない。
「キーラ嬢、大丈夫か?」
倒れる寸前で、デリックが私を支えた。
立っているのが辛くてデリックにもたれかかると、デリックは私を抱えるようにして床に座り込んだ。
意識が遠のく中、金髪の男がフランクに向かっているのが見える。
「フランク。お前何をしたか分かっているな?」
「殿下、私は」
「すぐ家に戻り、謹慎していろ、逃げようなどと思うな。影をつける」
「殿下!」
「言い訳は聞かない」
強いカークの言葉に、フランクはその場に崩れ落ちた。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
あらすじと内容が少し変わってきたので、
あらすじを変更しました。
攻略対象者後一人。。。。なかなか出番が来ない。
(ちょっとだけの教師含む)
いつ出てくるんだろう?
次回もよろしくお願いします。
フランクが私の首筋に唇を押しつけているのだ。
―――何をしているんだ? この男。
悲鳴でもいい、膝蹴りでもいい、なんとかしてこの状況を打破したいと思ったけれど、体は全く言うことを聞かない。
フランク・ジャニアスのことを思い出そうとしても、彼がフォルナトル王国・宰相の三男であること、学生時代は王子の側近と言う立場だが、卒業してからの立場が決まらず悩んでいるところをリーナに救われ、兄二人を補助する立場に着くことを決意するとか、意味のないことばかりが頭に浮かぶ。
何か、今自分がされていることにつながる、ジャニアス家特有の魔法があったような気がするけれど、重要と思われることはちっとも思い出さない。
首筋を狙うなんて、まるで吸血鬼のようだ。
でも、彼に牙はない筈だ。
なんて思っていると、部屋の電気をつけた時と同じように、唇があるあたりからスッと何かが抜けて行く感じがした。
―――えっ、これって、本気でやばいんじゃない?
ぞわぞわと全身を恐怖が駆け巡り、お腹に力を入れて体を動かそうとするが、それすらも上手く出来ているのか分からない。
自由のきく視線で自分の首筋に吸いついている男を見ようと頑張るが、見えるのはつやのある白銀の髪だけ。
それは長い時間のようで、一瞬のようで、心は焦っているのに、何の手だてもなくされるがままの自分に絶望すら覚えたころ。
「くっ」
っと、フランクが一瞬うめいた。
何が起こったのか、緩やかだった魔力の流れが、急にタガが外れたように凄い勢いで力が吸い取られ始める。
貧血の時みたいに、頭がフワフワしてきて、意識が持って行かれそうになる。
このままじゃ本当にまずいと感じていても、どうしたらいいかも分からない。
目を強くつぶり、出てきたのは、ピーちゃんの姿だった。
―――――――ピーちゃん! 助けてっ!
後がない、そう思って心で叫ぶと同時に、どこかで何かが割れる音がした。
バサバサと羽音がして、フランクの手から力が抜けた。
浮いていた足が床について、背中が本棚にぶつかった。後ろ手にすがるように本棚へと倒れこみ、顔を上げると、青い顔のフランクが口を押さえながら後退っていた。
そのフランクの前では、ピーちゃんが8の字を空中に描きながら彼を威嚇している。
「キーラ嬢!」
「フランク!」
大きな音がして扉があき、誰かがそう駆け込んできた。
一人はデリック、もう一人は金髪の男。殿下だろうか。
ようやく自分の思うように動くようになった体を、必死で立て直そうとするがやはり力が入らない。
「キーラ嬢、大丈夫か?」
倒れる寸前で、デリックが私を支えた。
立っているのが辛くてデリックにもたれかかると、デリックは私を抱えるようにして床に座り込んだ。
意識が遠のく中、金髪の男がフランクに向かっているのが見える。
「フランク。お前何をしたか分かっているな?」
「殿下、私は」
「すぐ家に戻り、謹慎していろ、逃げようなどと思うな。影をつける」
「殿下!」
「言い訳は聞かない」
強いカークの言葉に、フランクはその場に崩れ落ちた。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
あらすじと内容が少し変わってきたので、
あらすじを変更しました。
攻略対象者後一人。。。。なかなか出番が来ない。
(ちょっとだけの教師含む)
いつ出てくるんだろう?
次回もよろしくお願いします。
応援ありがとうございます!
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