ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
179 / 317
第八章 ヘタレパパ

第六十一話 魔導砲

しおりを挟む

 ワイバーンを撃ち落として帰宅し、さくっと晩飯を作る。
 今日は買い物に行く時間が無かったので、マジックボックスの中にある豚バラ肉を生姜焼きにして、あとは具だくさんシチューと常備菜で済ませる。


「じゃからなんで魔導砲が駄目なんじゃ!」


 食後にそのまま家に泊ることになったアイリーンと爺さんと俺との三人で、今日の魔導駆動車の無駄な機能を検討していると、爺さんが大きな声を上げる。


「危険すぎるわ! しかもメギドアローとか何考えてんだ!」

「いや流石に量産型はファイアランスとかアイスジャベリン程度じゃぞ。第一メギドアローを刻める魔石なんぞ滅多にないわ」

「そういう問題じゃねー。そもそも武装の必要が無いって言ってるんだよ」

「武装が無いほうが危険じゃろ、どうやって身を守るんじゃ」

「馬車に武器なんか積まないだろがよ」

「だから護衛を付けたりするんじゃが」


 そういやここ異世界なんだよな。日本の交通事情で考えてたわ。
 むむむと考えていると、メモを清書していたアイリーンが「閣下よろしいでしょうか」と声をかけてくる。


「アイリーンは武装するのに賛成なのか?」

「いえ、領内で使用する魔導駆動車に関しては必要ないと思います」

「そうだな、今考えてるのは多人数が乗れるバスタイプの魔導駆動車を領内で運行させることだからな」

「まだ走行距離が短いので今後の改良次第ではありますが、宿場町までの送迎や王都や周辺の村落までの長距離を移動するような場合ですと、どうしても護衛か武装の必要が出てきますが」

「そうじゃそうじゃ」

「でも速度が出れば振り切って逃げられないか? ダッシュエミューは足が速いけどあれは襲ってこない魔物だし、ブラックバッファローや地竜クラスでも馬以上の速度を出せば安全なわけだろ?」

「発見が早ければ可能かと思いますが、発見が遅れた場合ですと難しいと思います。それに空を飛ぶ魔物からは流石に馬の速度では厳しいでしょうし」

「じゃからあれには三百六十度回転する砲座に載った高射砲も積んでおるぞい。正面の魔導砲だと射角を取るのが難しいでの」


 爺さんが恐ろしいことを言い出した。
 そういやルーフが少し膨らんでたけど、あそこに危険なものが収まってたのか。


「なんて恐ろしいもん積んでるんだ」

「回転砲座なんかを仕込む都合上、魔導砲より基部をコンパクトにせざるを得なくなったから威力はせいぜい中級魔法程度じゃ。砲身自体は長く出来たから射程は出るがの」

「アイリーン、これも量産型では削る無駄装備な」

「はっ」

「何故じゃ!」

「うるせー。ベース車両に無駄なもの載せるな」

「とはいえ閣下。領内ならともかくやはり預かっている寮生などを送迎するバスには高射砲の装備は必要かと。数人なら護衛の騎士に分乗させて馬の脚で逃げることも可能ですが、多人数だと難しいですし」

「ガキんちょを出されると弱いな。たしかに魔物対策は必要だったわ」

「じゃろ?」

「爺さんはちょっと黙ってて」

「はい」


 大人しくお茶をすすりだす爺さん。
 爺さんが入ってくると魔導駆動車が重武装にされてしまうからな。少し黙らせておかないと。


「アイリーン、やはり基本ベースは可能な限りオプションを抑えて生産性を上げて量産可能なように、同時に価格を下げるべきだと思う。と言っても今の走行可能距離じゃ売れないとは思うが。値段もまだ未定だしな」

「かしこまりました。まずは量産前提の魔導駆動バスを試作しますね」

「領内を巡行させる前提での必要最低限の装備だな。バスタイプなら客席を削れば輸送車両にも転用できるし」

「はっ。それとバギータイプの試作も行わせようと思うのですが」

「それは俺も乗ってみたいから問題ないどころか、むしろ金額次第じゃ俺が金出しても良いくらいだけど」

「いえ、これは軍部の方から予算が出てますので」

「……軍部? 」

「まず軽快に走れて、速度の出る軽量な魔導駆動車を試作いたします」

「偵察車両でも作るのか?」

「はい、それもありますが、魔導砲搭載車両で部隊編成をしたいと」

「お前らなんでそんなに好戦的なの?」

「魔法適性持ちの兵はごくわずかです。魔法の扱えない一般兵でも魔導士と同等の戦闘力を持たせることができれば、彼我の戦力差は一変します」


 彼我って……。一地方領主が一国相手の戦力差を覆すようなことしたら駄目だろ。


「王国や亜人国家連合を仮想敵国にするのはやめろっての。今は全く問題無く友好な関係を築いてるんだから」

「ですが我ら為政者としてはあらゆる事態を想定しておくのが当然ですし」

「毎回それ言うけどさ、過剰な軍備拡張は却って火種になるだろ」

「高速機動魔導駆動車砲(仮称)はその存在を秘匿しますから」

「もう名称もつけてるじゃねーか」

「仮称です」

「そういう問題じゃねー」

「二人乗りバギーにすることで、運転手と射手に役割分担します。どちらも魔法の使えない一般兵でも問題ありませんが、片方を防御結界を使える術者にすることで防御力も得ることになりますので、最前線での活躍も期待できます」

「もう戦術に組み込んでるのかよ」

「戦術単位で有機的に運用できる百台で一部隊を編成したいと思います」

「そういう話じゃないんだが。まあいいよ。どちらにしても武装無しの軽量バギータイプは賛成する。偵察には便利だろうし」

「そうですね、高速機動魔導駆動偵察車両(仮称)にも火砲か小型の魔導砲を搭載する予定ですし」

「威力偵察かよ、普通に偵察しろよ。っていうか仮称が長すぎだろ」

「仮称ですしね」

「まあ搭載砲なんかの研究開発は反対しないけど、まずは武装の無いシンプルな奴にしろ。必要なものはオプションで対応できるように」

「かしこまりました。お任せください」


 にやり、と口角を上げて返事をするアイリーン。
 なんでこんなに危険な思考するやつらだらけなんだ……。

 まあまずは量産型の基本となるベース車両を作ってからだな。高すぎたら売れないし。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...