スローライフに憧れる伝説の王子

220話

第二百二十話：「焼き芋、それは封じられし欲望の解放儀式」

セイオス王都・裏庭。
ノブ・フォン・エルストレム殿下、政務を華麗に回避し、本日も地面を掘っていた。

「今日はただの芋……バターも塩も禁止。素材で勝負。
火と落ち葉、それだけでじんわり甘くなる。それが……“真実のスローライフ”ってやつだろ」

掘っては埋め、火をつけては灰をならす。
己と芋の、静かな対話。だがその香りは――

王宮全域に轟いた。

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◆ 第1波：嗅覚敏感組、即時行動

• 🌾リカ・ファルケン：「あれっ！芋っ！焼いてる！！落ち葉の香ばしさと皮の炭化反応がっ！！」
• 🏔️エレン・ハウゼン：「……ノブ様、また……焼いてる……っ。行かなきゃ……っ」
• 💰カミラ・グランシュタイン：「価格の暴力。王子が焼く芋とか、感情価値が跳ね上がるに決まってるわ」
• 🔮セシリア・オルフェウス：「……糖度、収穫年差、焼成温度。すべて測る価値がある」


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◆ 第2波：戦略的出遅れ組、意地の接近

• 🎭エジンバラ・モンロー：「“会議にも政にも呼ばれない午後”ほど、情報価値が高いの。これは侵入すべき案件ですわ」
• 🗡️エルザ・ヴァルドルフ：「戦で言えば——すでにこちらは包囲されているが……構うものか、突撃する」
• 👑アリシア・ルーシェ：「あの香り、罪深すぎます。わたくし、芋に弱いんですの……」
• 👑フィオナ・エルヴィス：「……戦術ミスですね。午前のうちに“芋行動”の予兆を察知すべきでしたわ」


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◆ 最終波：王族中枢陣、ついに動く

• 💼アデル・フォン・エルストレム（王妃）：
「ノブが芋？ 芋焼いて政逃げてる？ ……ふふ、最高じゃない。食べるために政務止めたっていいくらい」
• 🧩ソフィア・フォン・エルストレム（腹黒妹）：
「情報網が遅れをとるとは……反省点。
でも兄上、わたしまだ間に合います。芋は、妹が最優先取得すべき栄誉物ですから」


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◆ 芋完成 → 突然の“全員揃った”圧

ノブ（埋めた芋を掘り返しながら）：

「よし。ちょうど火もまわった。これはうまいぞ。……って、は？」

振り返れば、10人。

全員、それぞれ木皿・布巾・記録用道具・トング・小型茶器などを持参。
列を乱さず整列気味に、**「その芋、いまです」**という目でノブを凝視していた。

ノブ：「……芋一つに……なぜ王国会議並の人数が……！」

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◆ 芋、配分戦へ

• アデル：「まず母に先に回すのが王国流儀。異論ある方？」
• ソフィア：「兄上、記憶に残ってますよね？私、幼い頃“芋焦がすの専門”だったの。だから今日こそ“完焼き”の味を……！」
• カミラ：「議会経済で最初に芋を調達した者が、初切断権を持つのが通例よ」
• リカ：「お、おすそ分けでいいんです！でもできれば端っこの蜜のとこ……！」
• エレン（無言でフォークを出す）：（目が本気）
• セシリア：「分子構造を比較するため、最低2種の焼き加減が必要です。どなたか控えていただけます？」
• エジンバラ：「……では、わたくしが“残り物を美しく食べる役”を引き受けます」
• エルザ：「構わん。私は皮だけでも食える」
• フィオナ：「“焦げぎわと中心の軟度比”が知りたいですわね……検証目的で、中央ください」
• アリシア：「……あら、残った端切れを紅茶に添えても良い香りになるのですよ？」


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ノブ（本当にただ焼いただけの人）：「……今日ってそんなに重大イベントだったか……？」

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芋は、火と落ち葉で焼くだけじゃない。
心を焦がし、想いを炙り、王国中枢の胃袋まで動かす魔力があった。

そしてこの瞬間、セイオス王国“秋の最重要天然資源”が、
間違いなくさつまいもに認定された――。

（次話へ続く）