2 / 39
2.魔王、異世界に召喚される
しおりを挟む
魑魅魍魎うずまく魔族の長として君臨した、魔王アリギュラ。絶対的美貌と、冷酷無慈悲な采配は見る者を圧倒し、アーク・ゴルドの人間共を恐怖と混乱の渦に巻き込んだ。
その覇王アリギュラが困惑していた。それはもう、大大大パニックに陥っていた。
「聖女様ー!」
「聖女様、どちらにいらっしゃるのですかー!」
「お隠れになってないで出てきてくださーい!」
(誰が出ていくか、たわけ!!!!)
柱の影にべたりと張り付き、アリギュラは追っ手をやり過ごす。そして、必死にいまの状況を整理しようとした。
(待て待て待て。まずここはどこじゃ!? 右も左も、人間共の気配しかせぬが!?)
勇者カイバーンに敗れ、奴らの城に囚われた可能性も考えた。だが、それはありえない。アリギュラを生かし、捕らえるメリットが連中にはない。加えて記憶の最後にある、勇者の必殺技。あれを食らって、無事で済んだとはとても思えない。
(それに連中が口にする、『聖女』とやら……。なぜその名で、わらわを呼ぶ!?)
聖女と呼ばれる人間が勇者陣営にいることは、アリギュラも知識として知っている。だが、その名でアリギュラが呼ばれるいわれはない。全くもって身に覚えがない。
そして、何より。
(なぜわらわ、人間の小娘になっておるのじゃ~~~~!?!?)
アリギュラは窓に映る自身の姿に、再度頭を抱えてのたうちまわった。
艶々でまっすぐな黒髪に赤い瞳と元の要素は残っているものの、受ける印象は全然違う。ぱっちりとした目に、ふっくらした小さな唇。華奢で小さな体に、すらりとした手足。
あんなにたわわだった胸が小さくなりもしたが、これはこれで違う色気を醸し出す、圧倒的美少女。これがどうして、魔王アリギュラの姿だと信じられようか。
「いたいた、子猫ちゃんっ」
「ひっ!?」
身悶えしていたアリギュラは、背後から響いた声にびくりと飛び上がった。恐る恐る振り向けば、3人のイケメンがこちらの逃げ場を塞ぐように立っていた。
「突然逃げちゃうからびっくりしたよ。さっ! こっちにおいで」
騎士っぽい格好の、見るからに遊んでそうなイケメンその一が、微笑んで手を差し出した。
「ほんとにこの子で大丈夫なのー? まあ、可愛いのは認めるけど」
女の子と見紛うような、ふわふわの髪にくりりとした瞳のイケメンそのニがふんと鼻を鳴らした。
「こらこら、二人とも。そんな風に詰め寄ったら、また彼女を怖がらせてしまうよ」
二人を嗜めて、イケメンその三がすっと前に出る。
陽光を受けて輝く金髪に、青い瞳が印象的な甘く優しげな面差し。金糸の刺繍の入った白い服が、これまた憎らしいほどに似合う。
アリギュラをドン引きさせるほどのキラキラオーラ全開に、彼は胸に手を当てて微笑んだ。
「私はこの国の王子、ジーク・ローエンベルンです。こっちは護衛のアラン・メリアークで、こっちは侍従のルリアン・キッドソンです」
(聞いとらんわ!!)
あわや口から飛び出しかかった全力のツッコミを、アリギュラは精一杯飲み込む。ジークと名乗った三人目のイケメンが、さらりとアリギュラの手を取ったからだ。
自ら王子と名乗ったくせに、ジークは何故かその場に跪く。唖然とするアリギュラ、ジークは潤んだ瞳で見上げた。
「貴女が、私達が長年焦がれてやまなかった救いの姫君……! 聖女様、お会いできて嬉しゅうございます」
「ひっ!?」
今度こそアリギュラは飛び上がった。ちゅっと音を立てて、ジークがアリギュラの手に口付けたからだ。
仰天したアリギュラは、無理矢理ジークから手を奪い返した。
「な、にゃ、んな!! なにをするか、人間の小童がー!! に、ににににんげん如きが、わらわにく、くくく口付けをするなどと!?」
「かーわいっ。子猫ちゃんってば、悪魔みたいなこと言ってるっ」
(まさしく悪魔だが!?!?)
くすりと笑った一人目のイケメン、アランに、アリギュラは内心全力で突っ込む。やはり、この者たちの目にも、アリギュラの姿は人間の小娘として映っているらしい。
「ちょっと。いつまでここにいるつもり? 僕疲れちゃったんだけど」
むすりと唇を尖らせたイケメンそのニ、ルリアンに、ジークとアランもそうだそうだと頷き合った。
「ルリアンの言う通りだ。レディをこんなに長く立たせたままだなんて、私はジェントル失格だね」
「ごめんね、子猫ちゃん。よかったら俺が、君を部屋まで運ぼうか?」
「ほんっとアランってば、女の子と見ればすぐ口説く。まあ、けど、手を繋ぐくらいなら正解かも。また逃げられても困るし」
「さあ」
「さあ」
「さあ!!」
(ひ、ひぃぃ……!?)
イケメン三人に詰め寄られ、アリギュラは心の中で悲鳴を上げた。
視界がキラッキラしている。キラッキラしすぎてもはや眩しい。アリギュラはこれまでも人間に囲まれたことがあるが、すべて戦場でのこと。殺意マックスに剣をぶん回す相手と対峙するのと、謎のイケメン三銃士ににっこにこ笑顔で迫られるのとでは勝手が違いすぎる。
なんだ、ヤるか。ヤればいいのか。ジリジリとにじり寄ってくるイケメンたちに、混乱するアリギュラの思考は物騒な方向に傾く。
「わ、わらわに寄るな、触るなー!! それ以上近づくなら、貴様らに『覇王の鉄槌』を……!」
「こちらにおられましたか!」
その時、イケメン三銃士とは別の、第三者の声が響いた。イケメンたちが振り返るのと同時に、アリギュラも彼らの合間から新しいその人物を覗いた。
その覇王アリギュラが困惑していた。それはもう、大大大パニックに陥っていた。
「聖女様ー!」
「聖女様、どちらにいらっしゃるのですかー!」
「お隠れになってないで出てきてくださーい!」
(誰が出ていくか、たわけ!!!!)
柱の影にべたりと張り付き、アリギュラは追っ手をやり過ごす。そして、必死にいまの状況を整理しようとした。
(待て待て待て。まずここはどこじゃ!? 右も左も、人間共の気配しかせぬが!?)
勇者カイバーンに敗れ、奴らの城に囚われた可能性も考えた。だが、それはありえない。アリギュラを生かし、捕らえるメリットが連中にはない。加えて記憶の最後にある、勇者の必殺技。あれを食らって、無事で済んだとはとても思えない。
(それに連中が口にする、『聖女』とやら……。なぜその名で、わらわを呼ぶ!?)
聖女と呼ばれる人間が勇者陣営にいることは、アリギュラも知識として知っている。だが、その名でアリギュラが呼ばれるいわれはない。全くもって身に覚えがない。
そして、何より。
(なぜわらわ、人間の小娘になっておるのじゃ~~~~!?!?)
アリギュラは窓に映る自身の姿に、再度頭を抱えてのたうちまわった。
艶々でまっすぐな黒髪に赤い瞳と元の要素は残っているものの、受ける印象は全然違う。ぱっちりとした目に、ふっくらした小さな唇。華奢で小さな体に、すらりとした手足。
あんなにたわわだった胸が小さくなりもしたが、これはこれで違う色気を醸し出す、圧倒的美少女。これがどうして、魔王アリギュラの姿だと信じられようか。
「いたいた、子猫ちゃんっ」
「ひっ!?」
身悶えしていたアリギュラは、背後から響いた声にびくりと飛び上がった。恐る恐る振り向けば、3人のイケメンがこちらの逃げ場を塞ぐように立っていた。
「突然逃げちゃうからびっくりしたよ。さっ! こっちにおいで」
騎士っぽい格好の、見るからに遊んでそうなイケメンその一が、微笑んで手を差し出した。
「ほんとにこの子で大丈夫なのー? まあ、可愛いのは認めるけど」
女の子と見紛うような、ふわふわの髪にくりりとした瞳のイケメンそのニがふんと鼻を鳴らした。
「こらこら、二人とも。そんな風に詰め寄ったら、また彼女を怖がらせてしまうよ」
二人を嗜めて、イケメンその三がすっと前に出る。
陽光を受けて輝く金髪に、青い瞳が印象的な甘く優しげな面差し。金糸の刺繍の入った白い服が、これまた憎らしいほどに似合う。
アリギュラをドン引きさせるほどのキラキラオーラ全開に、彼は胸に手を当てて微笑んだ。
「私はこの国の王子、ジーク・ローエンベルンです。こっちは護衛のアラン・メリアークで、こっちは侍従のルリアン・キッドソンです」
(聞いとらんわ!!)
あわや口から飛び出しかかった全力のツッコミを、アリギュラは精一杯飲み込む。ジークと名乗った三人目のイケメンが、さらりとアリギュラの手を取ったからだ。
自ら王子と名乗ったくせに、ジークは何故かその場に跪く。唖然とするアリギュラ、ジークは潤んだ瞳で見上げた。
「貴女が、私達が長年焦がれてやまなかった救いの姫君……! 聖女様、お会いできて嬉しゅうございます」
「ひっ!?」
今度こそアリギュラは飛び上がった。ちゅっと音を立てて、ジークがアリギュラの手に口付けたからだ。
仰天したアリギュラは、無理矢理ジークから手を奪い返した。
「な、にゃ、んな!! なにをするか、人間の小童がー!! に、ににににんげん如きが、わらわにく、くくく口付けをするなどと!?」
「かーわいっ。子猫ちゃんってば、悪魔みたいなこと言ってるっ」
(まさしく悪魔だが!?!?)
くすりと笑った一人目のイケメン、アランに、アリギュラは内心全力で突っ込む。やはり、この者たちの目にも、アリギュラの姿は人間の小娘として映っているらしい。
「ちょっと。いつまでここにいるつもり? 僕疲れちゃったんだけど」
むすりと唇を尖らせたイケメンそのニ、ルリアンに、ジークとアランもそうだそうだと頷き合った。
「ルリアンの言う通りだ。レディをこんなに長く立たせたままだなんて、私はジェントル失格だね」
「ごめんね、子猫ちゃん。よかったら俺が、君を部屋まで運ぼうか?」
「ほんっとアランってば、女の子と見ればすぐ口説く。まあ、けど、手を繋ぐくらいなら正解かも。また逃げられても困るし」
「さあ」
「さあ」
「さあ!!」
(ひ、ひぃぃ……!?)
イケメン三人に詰め寄られ、アリギュラは心の中で悲鳴を上げた。
視界がキラッキラしている。キラッキラしすぎてもはや眩しい。アリギュラはこれまでも人間に囲まれたことがあるが、すべて戦場でのこと。殺意マックスに剣をぶん回す相手と対峙するのと、謎のイケメン三銃士ににっこにこ笑顔で迫られるのとでは勝手が違いすぎる。
なんだ、ヤるか。ヤればいいのか。ジリジリとにじり寄ってくるイケメンたちに、混乱するアリギュラの思考は物騒な方向に傾く。
「わ、わらわに寄るな、触るなー!! それ以上近づくなら、貴様らに『覇王の鉄槌』を……!」
「こちらにおられましたか!」
その時、イケメン三銃士とは別の、第三者の声が響いた。イケメンたちが振り返るのと同時に、アリギュラも彼らの合間から新しいその人物を覗いた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる