魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです

枢 呂紅

文字の大きさ
18 / 39

17.魔王、お手並みを拝見する

しおりを挟む


 王太子ジークの婚約者、キャロラインの出身であるダーシー家により、急遽催された『聖女召喚、祝賀パーティ』。その裏には、魔獣襲撃により疲弊したエルノア王国の現実がある。

 数百年前に封印された魔王サタン。それが復活をしたのは、3年前のことだ。

 以来、魔王は魔獣たちを従え、領土を拡大せんと人間の国を襲い続けている。その波が、ここエルノア国にも押し寄せているのだ。

 日増しに増える、魔王軍に集う魔獣たち。急襲に次ぐ、急襲。先の見えない戦い。故郷を焼かれて逃げてくる人々もいる。そんな惨状において、食物も金も国庫からどんどん消えていく。

 そんな惨状の中、王国に多大な援助を行っているのが、キャロラインの生家ダーシーだ。

「王都が安泰でいられるのは、ダーシー家の支援のおかげだな」

「麦も、羊も、じゃがいもも。すべてダーシー家が調達してくれたそうじゃないか」

「今日の料理も、ほら。トマトをふんだんに使った、ダーシー家のある南部の味付けよ」

「お嬢様も、王太子様の婚約者としてご公務に励まれているし……。まったく、ダーシー家さまさまですな!」

(そうですわ!! もっと皆さま、言ってくださいな!)

 ふふんと笑みを漏らし、まほキスの悪役令嬢キャロライン・ダーシーは、婚約者であるジーク王子とともにホールの最奥に向かう。これから、会のはじめとして王子とともに出席者に向けた挨拶を行うのだ。

 ちなみに今日のキャロラインのスタイルは、王子の瞳の色に合わせた、ロイヤルブルーのドレス。きゅっと締まった腰に、ふわりと広がる裾。もちろん、髪型は気合の入った縦ロール。どこから見ても完璧な、ザ・戦闘モードなスタイルである。

 そんなキャロラインには、今宵、大きな目標がある。

(いいですわね、キャロライン。私の今日の目的は、打倒☆聖女、打倒☆アリギュラ様! 今宵、未来の王太子妃としてふさわしい姿をジーク様にお見せすることで、ジーク様の頭からアリギュラ様のお姿を追い払って差し上げるのですわ!!)

 ふんすと両手を握りしめ、キャロラインは決意を新たにする。

 そのために、父にお願いをして今夜のパーティに投資をしてもらったのだ。ジークの婚約者としてキャロラインがパーティの主を立派に勤め上げたなら。きっとジークも、キャロラインこそが自分にふさわしい相手だと目を覚ましてくれるだろう。あわよくば、恋仲というよりは戦友に近いような、今の関係も少しは変えることができるやも……?

(ダメですわ、キャロライン。焦ってはダメ。まずは、己の使命を果たすのが先。果たしたうえで、圧倒的に超えてみせるのですわ)

 ぎゅん、と。音がしそうなほど鋭く、キャロラインは背後に視線を飛ばす。――そこには、聖教会の神官に付き添われて、ぷらぷらと後をついてきている聖女アリギュラがいる。

 キャロラインと目があうと、アリギュラはにやりと笑って手を振ってきた。

 余裕を滲ませたその姿が、かえってキャロラインの闘志に火を灯した。

(絶対に、絶対に! アリギュラ様より私のほうがジークさまのお相手にふさわしいと、皆様の前で証明してみせるのですわ~~っ!)

 そういうわけで。悪役令嬢と、異世界の魔王。

 組み合わせとしては斜め上すぎるのゴングが、今ここに鳴り響いた。






「紳士淑女の皆様。今宵は、お集まりいただきまして誠にありがとうございます」

 ホールの最奥に到着したキャロラインは、王子と共に壇上に上がり、パーティの参加者に向けて首を垂れる。

 声を張り、堂々と皆に語り掛けるキャロラインに、談笑していた参加者たちも口を閉ざし、にこやかにそちらを見やる。十分自分に注目が集まったのを認識してから、キャロラインは顔を上げて微笑んだ。

「まずは今宵、皆さま共に喜び合えることに感謝いたしますわ。3年前のあの日、魔王復活の報せが届いてからというものの、私たちの頭上には常に灰色の雲が立ち込めていました。ですがようやく、私たちに一筋の光が差したのですもの」

 そうだ、いいぞ!と。何名かの若者が、答えて拳を振る。にこやかに手を振ってから、キャロラインはひらりと優雅に、アリギュラに手を差し出した。

「私たちのほまれにして希望。光の聖女、アリギュラ様ですわ!」

 キャロラインの一言が合図になっていたのだろう。高らかにラッパが響き渡り、祝福の音色を奏でた。同時に、籠を手に何名かの給仕が走り出てきて、中に入っている色とりどりの花々を空に舞わした。

 わっと歓声が上がり、会場は瞬時に祝賀ムードに包まれる。人々の喜びようを肌で感じながら、キャロラインは胸中でぐっと両手を握りしめた。

(や、やりましたわ! 我ながら、なんて完璧な前振りなのでしょう! これぞ、宴のホストとしての貫禄っ! これならジーク様も満足をして、私こそがジーク様のお隣に立つにふさわしいと認めてくださるはず……!)

 ちらりとジークを見れば、青い瞳と目があった。ジーク王子は優しく目を細めると、こちらをねぎらうように頷いた。それだけで、キャロラインは天にも昇る心地がした。

(~~~っ! 大☆成☆功、ですわ!! これで、第一フェーズは完了ですの。あとは、第二フェーズも成功させて、それからその後は……)

 達成感を胸に、この後の計画へと関心が移るキャロライン。

 ――だが。

 カツーン!と。空気を切り裂くように、高い音がホール中に響き渡った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...