某勇者パーティに最も大事にするべき仲間について語ってみた件

ふくまめ

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世界が変わった日

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ここはケンツキ王国。この国は10年前から「魔獣」と呼ばれる化け物の脅威に晒されていた。
かつて伝説の勇者が封印したという魔王が、復活したためだった。

最初に犠牲になったのは狩人だった。
ある日狩りに出かけた狩人は、丸々と太ったウサギを見かけたのだそうだ。
ウサギは動きこそ素早いが、危険の少ない獲物の一つだ。
これは良いと狙いを定めた狩人は、息を殺してゆっくりと近づいていく。
もう少し、もう少しと確実に仕留められる距離まで詰めていく。
そろそろ仕掛けようかという時、うっかり物音を立ててしまった。
人間にしてみれば小さな物音だろうと、自然に生きる者たちにとっては不自然な雑音だ。
狩人は狩りの失敗を確信した。ウサギを逃がしてしまうだろうと。
しかし、狩人の存在に気づいたウサギは、果敢にも狩人の腕に噛みついてきたのだ。
驚いた狩人がウサギを振り払うと、意外にもあっさりとウサギは狩人から離れた。

狩人の腕に鋭い歯をごっそりと残して。

異常事態に思考が停止しかける狩人の前で、ウサギはグチグチと気味の悪い鳴き声を上げている。
いや鳴き声ではない。狩人はウサギの口の中で新たな歯が歯茎を突き破りつつあるのを見た。
それを視認した瞬間狩人は走り出した。狩人は本能で死を察知したのだった。
自分より小さいこのウサギは、確実に自分より強者であることを感じ取ったのだ。

夥しい血を垂れ流しながらも、這う這うの体で近くの村までたどり着いた狩人は、気づいた村人によって小さな診療所に担ぎ込まれた。
だがそのまま出血を止めることができず、狩人は死んでしまった。
この診療所の医師は、患者を救うことができずに悲しんだが、彼らの真の功績は別にある。
この時採取した検体を、大きな研究機関に依頼して調べてもらったことだ。
ここで研究機関が出した結果が、世界に衝撃の事実を突きつけた。

「現存する生物形態から著しく逸脱した生物の可能性あり」
「歯に付着していた毒物は神経毒の一種と思われるが、詳細は不明である」

未知の生物が、未知の武器を手に人間の生活圏に迫りつつある。
そのことを噂話ではなく、真実であることを飲み込めるようになるには時間がかかった。
国が重い腰を上げ、調査部隊を派遣し、隊員の人数が半数になりつつある頃、国王が魔王の復活を認めたのだ。
国内は魔獣による被害でてんやわんやで、様々な不満が噴出。
国は各地の対応に奔走することになり、国王の魔王復活の宣言から数年は荒れに荒れていた。
その数年が過ぎたころには国民のほとんどが疲弊し、不満を吐き出す元気もなくなっていた。

「――それで我々のような武器や防具を扱う商売人が増えたわけだな。
 さらに言うなら、国王は続いて魔獣討伐の御触れも出して冒険者が増えて、お客はさらに増えた!
 しかし、これからの目論見で言えば――」
「はいはい、分かった!
 魔獣はいつか誰かが討伐するだろうから、いずれは私たちの商売も必要とされなくなっていくだろう、でしょ?
 もう何回も聞かされて耳にタコができちゃった。」
「そうかそうか、しっかり理解してくれて嬉しいぞ我が娘よ!
 だからこそ、今の生活に胡坐をかくことなく、もしもの時を考えておかなければならないぞ!」
「分かったってば!まったく…。チラシ張り出してきまーす。」
「気を付けていくんだぞ、我が娘よ!」
「いってらっしゃーい、遅くならないようにねー。」

10年前にこの国を襲った厄災。私が7歳の頃の話だ。
小さいながらも、大人たちが慌ただしく話し合いを繰り返していた光景をかすかな恐怖とともに憶えている。
あの日から繰り返し聞かされてきたこの話。この国に生まれたもので知らない人間などいないだろう。
残念なことにまだ魔王討伐の吉報はない。それによって私たちは仕事を続けられているという現状。
仕事がなくなるのは嫌だが、正直武器屋なんてものが流行らない世の中が平和ということなのだろう。
それがお父さんの言う「もしもの時」ということ。
ガハハと豪快に笑うお父さんも、ウフフとのんびり笑うお母さんも、世の中の動きに目を光らせている。
昔話とともにお金の勉強について口酸っぱく言われてきた。

勉強の成果を試す時が、こんなに早く来るとはこの時想像もしていなかった。
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