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愛してる⑥
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「はーい、みんなー。もうこっちを見てもだいじょう…大丈夫だよー。」
「…え…?」
「もう…大丈夫なの…?」
場違いなほど明るいロランさんの声に、私たちはやっと動きだした。
恐る恐る辺りを確認すると、ロランさんとギルさんの剣はすでに鞘に納まり、何かの上には私たちが泊まるはずの宿の入口に垂らされていたぼろきれがかけられている。
ニコたちもその部分に何かを察しているのか、強張った表情で凝視している。
「…ん?あぁ、あれは気にしなくていいから。後でギル君が片づけておいてくれるってさ!」
「…俺がか。」
「俺様、肉体労働は専門外なの。この麗しい姿を見れば、わかるだろ?」
「ったく…。」
ロランさんは私たちの視線に気がつくと、気にしなくていいと視界を遮るように間に立つ。
そう言われても…。ジワリと赤が滲む布と地面を気にするなというのは、いくら何でも難しすぎる。あそこに転がっている何かが何であったかを想像してしまうのは、やむを得ないという物だろう。
「…あのっ、お兄さんたち、僕たちを…!」
「んん?…そーいやそうだったなぁ、どうすっかねぇ…。」
「お、お願いします!どうかあたしだけで…!」
「エリザ…!」
「いや俺様そんな趣味は…エリザ?」
「ニコ…あなたエリザっていうの?偽名?」
「あ、いえその…。」
何やら事情がありそうだ。…いやここまでも事情が重なりすぎて何が何だか、といった状況ではあるが…。
「…とにかく、ここでは何ですし、宿の中で詳しく聞きませんか。治療でもしながら。」
ニコ同様、治療とも言えないような巻き方をしている包帯が気になって仕方がない。もしかしたら熱もあるのかもしれない。簡単な手当てしかできないが、このままでいるよりは何倍もマシにできるだろう。
それを察してか、ロランさんは双子を確認して随分と風通しがよくなってしまった宿へと促すのだった。
「…つまり、二人はあの男に拾われたってこと?」
「はい…。」
「あの時は、三人だったんですけど…。」
「三人?あなたたち双子だけじゃなかったの?」
「僕たち、お父さんと一緒に戦争が激しくならないうちに安全な場所に逃げようとしていた途中だったんだ…。」
「お父さん、旅なんてしたことなかったから…。このあたりに来た時に病気になっちゃって…。」
「その時、あのおじさんが…。『父親を助けたかったら、お前たちが薬代を稼ぐんだぞ』って…。」
「ここでの生活について教えてくれたし、お父さんにも薬を準備してくれたし…。あたしたち、お礼の気持ちも込めていろいろ手伝ってたんです。…でも。」
「お父さん…死んじゃった。」
「…。」
「おじさんは、僕たちの稼ぎが悪いから助けられなかったって言ってた。…確かに、子供相手にお金をしっかり払ってくれるところなんて、ほとんどなかったし、薬代には足りなかったのかも…。」
ひどい話だ。…いや、こんな身の上の戦争孤児なんて、この世の中にはありふれているのかもしれないが。
「…そうだったとしても、あの男のところで過ごし続ける必要はなかったんじゃないの?こう言ったら、あれだと思うけど、お父さんが亡くなったのなら…。」
「僕たちだって、そう思ったこともあったけど…。」
「子供だけでここから出て、やっていけるわけがないって、おじさんが…。それに、お父さんが死んじゃう前にあたしたちのことをおじさんに頼んでたんだって。だから、おじさんもお父さんの分もあたしたちのことを愛してくれるって…。」
「愛してって…。」
あの扱いが、愛だというのだろうか。
「こんな世の中じゃ、必要とされない人間は生きていくこともできないんだから、僕たちを必要としてくれてるおじさんは、愛を持って置いてくれてるんだって、いつも聞かされてた。…僕たち、愛されてたのかな…。」
「…俺様には、あの野郎の言う愛とやらは理解できねぇが、お前ら二人の間には確かに絆があるだろうよ。これから生きていくのに、それじゃ足りないのか?」
「え…?」
「絆?」
「ここでやっていくにも、辛いことも多かっただろ。それでも踏ん張れたのは、お互いがいたからじゃねぇのか?俺様、それで十分だと思うけどなぁ?」
「…ロランさん。」
「…。」
穏やかに二人に言って聞かせているロランさん。普段の行動が行動なだけに、感動すら覚えた。ギルさんもとても驚いているのか、信じられない物を見るように目を見開いている。
「お兄さん…!」
「そう、そうだね!僕たち二人いれば、何だって頑張れるよ。」
「うん!」
「そうかいそうかい、いやーよかった!んじゃま、この後のことを話していこうかなー?」
「「…え?」」
「忘れたのか?あの野郎から、俺様はお前たち引き取ってんの。」
「え、でも…。」
「まぁ?あいつには十分すぎるくらい支払ったからなぁ、どーしてくれようかなー。」
「「…。」」
ニヤニヤと笑っているロランさんに双子は引いていた。感動して損した。ギルさんはほっとしたように息を吐きながら剣に手をかけている。
いや『いつものあいつだ、これなら安心して仕留められる』じゃないんですよ。
…気持ちはわかりますがね。
「…え…?」
「もう…大丈夫なの…?」
場違いなほど明るいロランさんの声に、私たちはやっと動きだした。
恐る恐る辺りを確認すると、ロランさんとギルさんの剣はすでに鞘に納まり、何かの上には私たちが泊まるはずの宿の入口に垂らされていたぼろきれがかけられている。
ニコたちもその部分に何かを察しているのか、強張った表情で凝視している。
「…ん?あぁ、あれは気にしなくていいから。後でギル君が片づけておいてくれるってさ!」
「…俺がか。」
「俺様、肉体労働は専門外なの。この麗しい姿を見れば、わかるだろ?」
「ったく…。」
ロランさんは私たちの視線に気がつくと、気にしなくていいと視界を遮るように間に立つ。
そう言われても…。ジワリと赤が滲む布と地面を気にするなというのは、いくら何でも難しすぎる。あそこに転がっている何かが何であったかを想像してしまうのは、やむを得ないという物だろう。
「…あのっ、お兄さんたち、僕たちを…!」
「んん?…そーいやそうだったなぁ、どうすっかねぇ…。」
「お、お願いします!どうかあたしだけで…!」
「エリザ…!」
「いや俺様そんな趣味は…エリザ?」
「ニコ…あなたエリザっていうの?偽名?」
「あ、いえその…。」
何やら事情がありそうだ。…いやここまでも事情が重なりすぎて何が何だか、といった状況ではあるが…。
「…とにかく、ここでは何ですし、宿の中で詳しく聞きませんか。治療でもしながら。」
ニコ同様、治療とも言えないような巻き方をしている包帯が気になって仕方がない。もしかしたら熱もあるのかもしれない。簡単な手当てしかできないが、このままでいるよりは何倍もマシにできるだろう。
それを察してか、ロランさんは双子を確認して随分と風通しがよくなってしまった宿へと促すのだった。
「…つまり、二人はあの男に拾われたってこと?」
「はい…。」
「あの時は、三人だったんですけど…。」
「三人?あなたたち双子だけじゃなかったの?」
「僕たち、お父さんと一緒に戦争が激しくならないうちに安全な場所に逃げようとしていた途中だったんだ…。」
「お父さん、旅なんてしたことなかったから…。このあたりに来た時に病気になっちゃって…。」
「その時、あのおじさんが…。『父親を助けたかったら、お前たちが薬代を稼ぐんだぞ』って…。」
「ここでの生活について教えてくれたし、お父さんにも薬を準備してくれたし…。あたしたち、お礼の気持ちも込めていろいろ手伝ってたんです。…でも。」
「お父さん…死んじゃった。」
「…。」
「おじさんは、僕たちの稼ぎが悪いから助けられなかったって言ってた。…確かに、子供相手にお金をしっかり払ってくれるところなんて、ほとんどなかったし、薬代には足りなかったのかも…。」
ひどい話だ。…いや、こんな身の上の戦争孤児なんて、この世の中にはありふれているのかもしれないが。
「…そうだったとしても、あの男のところで過ごし続ける必要はなかったんじゃないの?こう言ったら、あれだと思うけど、お父さんが亡くなったのなら…。」
「僕たちだって、そう思ったこともあったけど…。」
「子供だけでここから出て、やっていけるわけがないって、おじさんが…。それに、お父さんが死んじゃう前にあたしたちのことをおじさんに頼んでたんだって。だから、おじさんもお父さんの分もあたしたちのことを愛してくれるって…。」
「愛してって…。」
あの扱いが、愛だというのだろうか。
「こんな世の中じゃ、必要とされない人間は生きていくこともできないんだから、僕たちを必要としてくれてるおじさんは、愛を持って置いてくれてるんだって、いつも聞かされてた。…僕たち、愛されてたのかな…。」
「…俺様には、あの野郎の言う愛とやらは理解できねぇが、お前ら二人の間には確かに絆があるだろうよ。これから生きていくのに、それじゃ足りないのか?」
「え…?」
「絆?」
「ここでやっていくにも、辛いことも多かっただろ。それでも踏ん張れたのは、お互いがいたからじゃねぇのか?俺様、それで十分だと思うけどなぁ?」
「…ロランさん。」
「…。」
穏やかに二人に言って聞かせているロランさん。普段の行動が行動なだけに、感動すら覚えた。ギルさんもとても驚いているのか、信じられない物を見るように目を見開いている。
「お兄さん…!」
「そう、そうだね!僕たち二人いれば、何だって頑張れるよ。」
「うん!」
「そうかいそうかい、いやーよかった!んじゃま、この後のことを話していこうかなー?」
「「…え?」」
「忘れたのか?あの野郎から、俺様はお前たち引き取ってんの。」
「え、でも…。」
「まぁ?あいつには十分すぎるくらい支払ったからなぁ、どーしてくれようかなー。」
「「…。」」
ニヤニヤと笑っているロランさんに双子は引いていた。感動して損した。ギルさんはほっとしたように息を吐きながら剣に手をかけている。
いや『いつものあいつだ、これなら安心して仕留められる』じゃないんですよ。
…気持ちはわかりますがね。
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