某勇 ~一方その頃、編~

ふくまめ

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ある悪ガキの話~キョウダイ④~

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何の変哲もない日々を送り、オレたちも14歳だしもうそろそろ無邪気に遊ぶこともできなくなるかもな、何て言っていたある日。
幼馴染の一人が、唐突に、天涯孤独の身となった。
悲しい出来事だったが、不慮の事故などではなかった。あれが所謂、人災と呼ぶべき出来事だったのだろうと、その時初めて知った。正しく手助けを受けることができていたら、彼の両親は今も故郷の村で農作物を育て、オレたちがこの街へ来ることもなかっただろう。いったい何があったのかって?そこはほら、個人の事情があるからってことで。

「…ウィル、大丈夫かな。ほ、本当に、独りで暮らしていくつもり、なのかな…?」
「親父も相当説得してたけど…。あいつの頑固さは、オレたちの方がよく知ってるだろ。絶対にあの家から離れないだろうぜ。…目的のためにもな。」
「…そうだね。」

オレたち3人は、一番一緒にいたという自負がある。周りの大人達からしてみれば、この3人の内一番の問題児はオレだって思っているだろうが、最も厄介で頑固なのは、たった今話題となっている奴の方だ。一緒にいるのっぽが一番まともだっていうのは、この村全員が思っているところではあるが。

「あいつは止められない。…だからせめて、オレたちが一緒に行くんだ。」
「うん。今までだって、一緒だったもんね。…でも…。」
「何だよ。」
「…レイ、いいの?その、家の事…。」
「…。」

家の事。こいつはオレが村長を継ぐことになるはずだってことを言っているんだろう。こいつの家も、事情は違えど子供が家業を継ぐという点で言えば似ている部分がある。ただ、継ぐのはこいつではなく兄貴の方だが。そういった環境で育ってくると、何かと察するところがあるのだろう。

「…いいんだよ。オレには向いてないって、親父とも揉めたばっかなんだ。何よりオレがやりたくないんだ!やりたくないことを無理矢理やらされるなんて、ごめんだぜ。
 …それに、ルゥがいるさ。」
「…そこが一番心配なんだ…。」
「…かもな。」

ウィルはいずれこの村を出ていくつもりだ。そしてそれを理解したオレたちも、それについて行く。それが実行された時、オレの代わりとなるのは双子の片割れであるルゥであることは間違いない。ただ、オレの代わりに村長となるには、あいつは何も勉強させてもらっていないに等しい。そして何より、幼少の頃からの言動を見てきた人間にしてみれば、非常に不安を感じざるを得ないことではある。
ウィルがこの村を出るとき、オレたちも一緒にこの村を出る。その決意が揺らぐことはない。だが、唯一気がかりがあるとすれば、やはり自分の片割れについてであることも確かだった。

「…ま、なるようになるしかねぇよ。親父だって、すぐに村長辞めるつもりはないだろうしな。オレがいなくなってから、みっちりとルゥの奴をしごいてくれるだろうさ。」
「…うーん…。」
「いくらルゥだって、オレがいなけりゃ本気で勉強するしかないって。…多分な。」
「不安だなぁ…。」
「…。」

この村の将来が不安になってしまったが、オレにとっての優先順位が変わることはない。代わりのいない幼馴染がたった一人で旅立とうとするのを見ているだけなんていられない。ただその日が来るまで、準備を万端にしておこうと強く心に誓ったことだけは言っておこう。
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